*両親と暗躍

 これは悠と由季の二人がイチャついている真っ只中のこと。


 二人のいる神社から離れた位置にある式場にて、裕人、透、舞香、由佳の四人が集まっていた。



「あの二人なら箱根神社にいるのよね? どうせなら、そこで神前式……でもと思ったけれど無理ね」


「だって、あの由季ちゃんよ。あんな人の多いところで注目を浴びたらトラウマになるわ」


「「けれど……」」



 と言ったところで長椅子に深く座り込んで寛いでいる裕人に視線を向ける。



「確かに結婚は男性が18、女性が16から可能と法律で定められている。だが、それは一般的に行われる結婚・・についての年齢制限に過ぎない」



 言っていることが分からなかったのか疑問を浮かべる表情をする二人。そこで呆れた表情をした透が代わりに答える。



「例えば、ボールを『打った』や、頭を『打った』。物を『売った』等の『うった』には色んな意味が含まれている。だったら、『結婚』という言葉も別のことを指しても問題はないということだね」


「そうだ。結婚・・はできないが、結婚・・はできる」


「「バカなの?」」


「……」



 女性陣二人からバカ扱いされた裕人はあからさまに気を落とす。もう良いと言わんばかりに説明する気が失せてしまった。


 代わりに先程、例え話をした透が補足を入れる。



「さっきの例え話もそうだけど、この『うった』にはどうしてそんなに意味があると思う?」


「昔の人が言葉を作ったからじゃないの?」


「そう。昔の人が作ってそれが各地に広がったから『うった』という意味が誰にでも分かる言葉になっている。だったら、今の人が言葉を作ってもいいんじゃないかな。結婚・・という言葉を」



 その補足でようやく得心が行ったようで相槌を打った。



「それに当て嵌めると、悠君がタキシードを着て、由季ちゃんがウエディングドレスを着て、誓いのキスをしても一般的に行われている結婚じゃないと、私たちが認識しているから結婚できると……」


「簡単に言えば限り無く本物に近い結婚ごっこじゃない」


「……その通りだ」


「相変わらず説明が下手くそね」


「……」



 再度、罵倒された裕人はもうこの場では喋らないと決めた。実は裕人と由佳の二人は幼馴染であった為、結構傷付いていたりする。因みに透と舞香の二人も幼馴染の関係だったりする。



「肝心の服だけど、悠ちゃんのタキシードは私が買ってあるけど、由季ちゃんのは?」


「由季ちゃんのウエディングドレスは直し中よ……。まさか、あんなにも成長しているとは思いもしなかったわ」



 それもその筈で由季は愛しの人に毎日のように胸を揉まれ、それを心地良いと思っているのだから。お陰で女性ホルモンが大量に分泌され、限界を知らないとばかりに現在進行形で急成長を遂げている。



「見ない間にざっと2カップ位は上がってた……」


「羨ましいわ……」



 女性陣二人の視線が男性陣二人を射抜く。だが、男性陣もどうしてこちらに矛が向くのか不思議でならないと思っているが、口に出して言えば確実に反感を買うので何も言えずにいる。


 結論としては女性陣二人のプライドが妙に高いのが一つの理由として挙げられるのだが、気付いていない。もし、女性陣二人が由季のようにずっと素直でいられていたら、未来は変わっていたのかもしれない。



「あ、あとは……神社にいる二人をどうやってこちらに誘導するかだね」



 じっと見られていることに耐えられなかった透が話を変える。



「そうね……あの二人のことだからイチャつきながら神社周りして、ホテルに帰ったら本格的にイチャつくと思うわ」


「チャンスは神社周り中のみ。そして、どう誘き出すか……」



 その方法を知っていそうな人物──裕人に三人は視線を飛ばす。



「……」



 だが、今さっきこの場では喋らないと決めた裕人は喋らない。何か言ったらまた罵倒されるから。この場にいる中で一番立場が低いことは分かっているのだ。だったら、下手な真似はしない。


 ……舞香がいなければ。



「言いなさい」


「……」


「今日はもっと頑張って・・・・もらうわよ」


「分かった……」



 今日も勝てなかったと裕人は思うが、相手はあの舞香だと思ってしまえば確実に勝てないと心と体が納得した。

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