第59話 可愛い仮妻と結◯式⑦
「綺麗だね」
「そうだな」
先程まで由季をお姫様抱っこして神社周辺を彷徨っていた。こういう神社とか遊園地とかのマップは見ない派なので後悔する確率が高い。でも、おかげで今目の前にある美しい光景を見ることができているのでプラマイゼロだ。
「この場所って何て言うの?」
「確か『平和の鳥居』って名前だった気がする」
箱根で湖に浮かぶ鳥居と言えばこの名前しか出てこない。
こう言う場所は混んでると思ったが、今は人っ子一人いない。タイミングが良かったのかもしれない。俺は由季を降ろして、その鳥居に近付いて行く。
階段があったので降りていけば、視界一面が湖で覆われた。この立っている場所は大人三人がギリギリ並んで歩ける幅の道しかなかった。
「とりあえず歩ける場所まで行ってみるか」
「そうだね」
自然に俺と由季は恋人繋ぎで手を握り合い、進んでいく。先端の方まで歩いて行き、鳥居の下までやってきた。
「ちょっと怖いね」
「でも良い景色だな。湖の上に立ってるみたい」
しかし、なんだか物足りないな。思い出の一つでも欲しいところだが……。
そう思っている間に由季はスマホで景色を撮り始めた。俺はそのスマホで撮っている由季をほぼ反射の勢いで景色と合わせてスマホで撮る。
これぞ『愛しの彼女と湖の上』、良い作品名だ。
「今撮ったでしょ」
「気のせいだ」
因みにお気に入りの写真は俺の腕に引っ付いて寝ている由季の寝顔だ。同棲してからは毎日のようにくっ付いて寝るので、何枚か所有している。勿論、バックアップも済んでいる。
「……まぁ、いいか。じゃあ、お礼に一緒に撮ってよ」
「ご褒美の間違いじゃ?」
「私のご褒美でもあるんだから良いでしょ?」
「良いよ」
一緒に撮ると決まったので恋人繋ぎしていた手を離して、俺は由季の腰に手を回して引き寄せる。
当たっている由季の柔らかい爆弾の感触に顔が綻びそうになるが何とか耐えた。
「じゃあ、撮るぞ」
「うん。いつでも良いよ」
「はいチー……」
「んっ……」
シャッター音が鳴るのと同時に由季が俺の頬にキスしてきた。そのことに呆然となる俺に由季はしたり顔を浮かべる。そして今度は舌を出して挑発してきた。
「……もう一回、撮るからな」
「今度こそちゃんと撮るから安心して」
「じゃあ、いくよ。はいちー……」
「「んっ……」」
二回目のシャッター音が鳴ると、息ぴったりに俺と由季はキスを始める。こんな綺麗な場所だからこそ、愛する人とキスしたくなったのだ。一回目から由季がキスしてきたのはそれが理由だろう。
「んっ……ゆう……」
考えていたら本格的にキスにのめり込んだ由季がディープキスを望んで俺の名前を呼ぶ。
「良いよ……んっ……」
望むところだったので俺は由季の舌を迎え入れて自身の舌を絡ませる。お互いの唾液を交換し合い、ディープキスを堪能する。
10秒、20秒、遂には1分を超えても俺と由季は離れない。いや、正確には離れられない。もし、ここで離れてしまったら次にキスする機会が当分先になってしまうかもしれないから。
「ゆう……もっとぉ……」
そんな中、由季が更に俺を求めてくる。
俺はそのことに嬉しく思うと共に由季を力強く抱いて、幸せなキスに二人一緒に酔いしれていった。
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