第53話 可愛い仮妻と◯◯◯①

 前置き


 今回の話の題名は伏せておきます。

 話しが進む度に文字が入れられていくかも⁉︎



 **** ****



 朝の騒動? が終わり、イチャイチャしながら軽く身嗜みを整えると客室を出て二階へと向かった。


 今度はレストランに行くのではなく、その隣に並ぶように存在する朝食スペースだ。バイキング形式で所々から美味しそうな香りが漂ってくる。


 流石に昨日の昼にたくさん食べたからと言ってもお腹が減った。早く食べたいと俺のお腹が言ってきそうだ。


 それにしても家族連れやカップルが多い。折角の旅行だからと早めにホテルから出て観光を楽しむのだろうか。



「出直すか?」


「……」



 隣には俺の腕にしがみつき、ぷるぷると震えている由季がいた。確かに周囲にいる人は多い。だけど、昨日とは違い取り乱す心配はなかった。


 そんな由季の頭を優しく撫でてやると、震えも徐々に収まっていく。


 そして、空いている席がないか周囲に視線を配れば、凄くキラキラした目でこちらを見てくる人が目に入った。他に座る場所も少ないのでそちらに向かう。由季もその人物に気付いて輝くような笑みを見せたが、すぐに何かを思い出してぷいっとそっぽを向いてしまう。



「ゆーきーちゃーん。まーだ、いじけてるの?」


「ふん」


「そろそろ機嫌直さない? お母さんと仲直りのハグしよっか」


「しない」


「助けて、悠君」


「助けません」


「もぅ……あなた、どうにかして」



 そこで由佳さんは隣に座っている透さんに問題を押し付ける。



「悪いのはこちら側だからね……」


「透君……」


「あぁ……その、由季?」



 圧倒的な手の平返し。


 俺が由季を可愛く思うように、透さんも由佳さんを可愛く思っているからこその現象だ。つまり、惚れた者には敵わない。



「……ふんだ。デレデレしちゃって」


「「ぐはっ……」」



 直接、娘から辛辣な攻撃を受けた透さんと、覚えがありすぎる俺がダメージを負った。日々、由季の可愛さにデレデレしている俺にとっては弱点を突かれた気分だ。


 それに気付いた由季が俺の背中を撫でる。



「ゆうは違うから。ほら、好きな人をデレデレした目で見るのは普通だって」


「それは透さんにも言える……」


「あ、あとは、つ、妻を可愛く思うのは普通……」


「それも言えちゃう……」


「うぅぅ〜〜〜」



 何も訂正できなかった由季は俺の胸元にぽすっと収まる。


 そんな由季の様子をマジマジと見つめていた由佳さんはぽろっと言葉を溢す。



「悠君と付き合い始めてからポンコツになったわ……」


「い、今なんて言ったの!」



 聞き捨てならないと由季が俺の胸元から離れると由佳さんに抗議する。



「だって、小さい頃は一人でいることが多くて、何だか大人びてたし……。周りにいる子よりも知性に溢れてた子だと思ってたから……」


「い、今は……?」



 覚えがあるようで由季が続きを促す。



「……逆の成長を遂げて知性が抜け落ちてるわ……」


「っ⁉︎ ゆう! 私の知性返して!」


「「ぶふっ……」」



 全て悠のせいだと言わんばかりにぐらぐらと由季は俺を揺する。そうすれば奪われた知性も落ちてくるかもしれないと。だが、由季に知性など与えたら言葉巧みに俺を翻弄するかもしれない。


 そう考えれば今の現状が俺にとっては好都合である。


 だから、俺が取るべき行動は……。



「知性よりも愛情をあげるよ……」


「愛情……」



 ぎゅっとハグしてあげれば、由季もそれにならってハグしてくる。



「こうやって、くっ付いてる方が幸せだよ」


「うん……」


「好きだよ……由季……」


「私も大好き……」



 潤んだ目を見つめていれば、僅かに微笑んだ由季が瞼を閉じて唇を突き出してくる。


 それに応えるように俺は由季の唇に自身の唇を触れ合わせた。


 そのいつものキスの攻防を呆れた表情をして見ていた由佳さんがぽつりと溢した。



「悠君って策士だわ……」

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