第48話 可愛い仮妻と混浴②
視線を合わせることは出来なくとも、触れ合いたいと思ってしまうので、俺と由季は背中合わせになりベッドの上に座っていた。
「ゆっきーさん決まりましたかい?」
「う〜ん……あるにはあるんだけど高そう……」
「そんなの気にしなくて良いのに」
「気にしないとダメです。家計を支えるのは妻の役目だよ」
「それを言うなら妻を労うのは夫の役目だよ」
「むぅ……そこまで言うならお言葉に甘える」
「そうしてくれ」
「じゃあ、私ここに行きたい」
ページを開いたまま、後ろにいる俺にパンフレット渡す。それを受け取った俺はそのページに目を通すと、このホテルに併設されているレストランの詳細が載っていた。見たところドレスコードは特に制限されていないので、今の格好でも大丈夫だろう。
それに、ここなら由季に何か食べさせて、俺は何か飲み物を頼んで寛ぐことができる。二人きりの旅行じゃないとは言え、折角の由季との旅行だから、遠慮せずに寛いで欲しい。
「じゃあ、行くか」
「そ、そうだね……」
「どうした?」
「ゆうは、その、私と旅行するの楽しい?」
「由季と一緒ならなんだって楽しいよ」
「そ、そっか。じゃあ、いっぱい思い出作らなきゃね。あ、あなた……」
「かはっ!」
唐突のあなた呼びに、由季にとって俺は特別な存在であると主張してきている気がして、理性に傷が付いた。もし、由季があなた呼びを先程していたら耐えられずに今頃は……。
止めておこう。過ぎた話である。
それに、遅かれ早かれ由季とは結ばれるのだ。今考えても仕方がない。
そうして意を決した俺は立ち上がって体を反転させる。それと同じように由季も動いた。
俺と由季は視線を合わせるが気まずくなって視線を逸らす。だが、勇気を出して俺の腕を掴んで引っ付いてくる由季の姿があった。
「あなた、レストランに行くんでしょ。行こ?」
「そ、そうだな」
由季が行動したのだから、彼氏である俺も動かなければならない。俺は由季と恋人繋ぎをするべく、由季の指に自身の指を絡ませる。すると、ぎゅっと力を入れて俺の指に絡ませる。
「じゃあ、行こうか」
「はい、あなた」
由季の頑張りもあって、再び身と心を繋ぎ合わせた俺と由季は客室から廊下へと出た。
**** ****
廊下に出た後、エレベーターに乗りレストランがある二階へと降りる。降りた先にある案内板を頼りにレストランへと向かう。
レストランに着いてみれば、そこからは大人な雰囲気の高級感を感じさせるものがあった。ほんのりと薄暗くて、どこか遠くの異国の地に来たような感じにさせてくれる。
「あなた、やっぱり高そうだよ?」
「ふふっ、そうだな」
「どうして笑うの?」
「いや、あなたって言う割には口調が子供っぽいからさ」
「も、もう……ゆうのバカ……」
優しく叩いてくる由季を愛おしく思いながらも俺は言った。
「いつも通りで良いよ。自然体で接してくれる由季の方が好きだよ」
「わ、私は愛してるもん……ゆうの全部を愛してもん……」
「ありがと」
「お礼を言われても何も出ないからね」
「由季の可愛い反応が出てくる」
「うぅ……」
何も上手い返しが出て来なかったようで由季は俺の肩に頭を押し付けて顔を隠した。そんな由季の頭を撫でながら、俺と由季はレストランへと入った。
**** ****
レストランの中に入ってみれば、家族連れの人たちよりもカップルの人たちの方が多く入っていた。と言っても、流石にファミリーレストランといった類の店ではないので、満員で待つということはなかった。
席にはウェイトレスが案内してくれると、メニュー表を机に置いて去って行く。
軽くメニューを見てみれば四桁円の料理の方が多い。三桁円は数えられるぐらいしかない。
「こういうところって料理の絵がないよね。名前が長ったらしいのはよく分からないし」
「俺は由季の料理の方が好きだな」
「そんな事は聞いてないよ」
「どんなに高くても由季の愛情が入ってないと勝てないよ」
俺がそう口にすると由季の顔が瞬時に迫ってきて、舌を触れ合わせる短めのディープキスを交わした。
「……少し黙ってて」
「わ、分かった……」
由季からディープキスをしてくることはあまりなかったので、俺は半端放心状態になり、由季の唇の感触を無意識に味わった。
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