第38話 可愛い仮妻とランジェリー通販③

「じゃあ、開けるね?」


「あぁ……」



 あのブラジャー選びから二日後、注文した由季のブラジャーが届いた。


 まさか、ブラジャーが一つ一万ほどするとは思いもしなかった。大きい胸は出費も大きいとは……。


 でもその分、堪能させて貰ったと思えば安い買い物だ。好きな女の子の胸をお触りして、舐めるなんて一万では絶対に出来ないことだ。


 本当、俺のことを好きになって、彼女にもなってくれて嬉しい限りだ。一生分の運勢を使っても足りないレベルである。


 だから、これからは自分の力で由季を妻にしないとな……。



「ん? どうしたの?」



 俺の視線に気付いたのかブラジャーが入っている箱の開封を止めて、不思議そうな顔を向けてくる。



「由季が俺の妻になったら幸せなんだろうなって思ってただけ」


「そ、そっか。でも、今の生活は実質、私はゆうの妻だよ……? 一緒のベッドで抱き合いながら寝て、一緒にご飯食べさせ合いっこもして、お風呂は……恥ずかしくなっちゃって一緒に入ってないけど……」


「そ、そうだよな。今の由季は俺の妻みたいなものだよな……。幸せだな……」


「もう、私は思わないようにしてたのに……。幸せでニヤけちゃうよ……」



 由季はふにゃりと崩れそうな表情を手で抑え込んでいる。とっても愛らしい姿だ。


 その姿を見ていると、言ってあげたい言葉が自然と脳裏に過ぎる。


 俺は由季の目を真っ直ぐ見つめて言った。



「絶対に綺麗なウエディングドレス、着せてやるからな」


「きょ、今日はなんなの? 積極的だよ……。でも、積極的なゆうは格好良くて好き……」


「いつもの俺は?」


「えっち」


「普段の評価低いな……」


「だけど──」



 その時、俺の中の時が止まった。



「私を一筋で好きだって伝わって来るから、嬉しいよ……。だから、私も言いたくなっちゃう」



 そして、由季は俺の頬を両手で挟み、額をくっ付け──



「私もあなたを愛しています。私を世界一幸せな花嫁にしてね」


「うぁっ……」



 その言葉を受けて俺はなにも反撃できなかった。俺から言うことはあっても、由季からは初めて捧げられた愛の言葉。


 こんなの凄く嬉しいに決まってるじゃないか……。



「えへへ、お返し成功。この前、不意打ちされちゃったからね」


「由季……」


「ゆう? んんっ……ちゅっ……」



 俺は由季への膨らむ想いに耐えられず、目の前に迫っていた由季の唇を奪っていた。舌をねじ込み由季が作り出した唾液を飲み干す。



「ゆう……激しっ……」


「俺も愛してる。由季を愛してる……」


「ゆう……」



 俺の求めに由季は応じると、次第に由季の瞳は潤み、由季からも求めてくるようになった。



「好き……んっ、大好きっ……」


「んっ……由季……俺も好きだ……」



 そうして、俺と由季は収まりのつかない気持ちをキスという行為でぶつけ合う。唇を離すと、ある言葉が二人の間で交わされる。



「「もう一回……」」



 それは何度も繰り返され……正気に戻った時には日が沈んでいた。



 **** ****



「ふふ、いっぱいちゅーしちゃったね……」


「最高だった……」


「うん……私もゆうとちゅーできて幸せだったよ……」



 そして、引き寄せられるようにハグをすると俺と由季は倒れ込む。


 しかし、倒れ込んだ先には由季のブラジャーが入った未開封の箱があった。



「「……」」


「ゆう?」


「なんだ?」


「もう夜だから開けるのは明日にしよっか」


「そうだな」


「じゃあ、晩ご飯は軽めのにして、お風呂も入り終わったらベッドで続きしよ……?」


「……俺にえっちって言う割には由季もえっちな発言してるぞ」


「そうだね……ところで知ってた?」


「なんだ?」



 由季は俺の右腕を自身の谷間に挟みしがみ付くと、妻の役で見せた時以上の妖艶な雰囲気を醸し出して告げるのだ。



「夫婦はだんだん似てくるんだよ?」


「つまり、俺が由季をえっちにさせたと……?」


「ふふっ……」



 その質問には答えず、見せびらかすように舌舐めずりをした由季は俺を捕食する目で見つめるのだった。





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