第35話 可愛い仮妻と膨らむ爆弾
料理を極める道を諦めた一週間後、俺と由季は二人での生活にも慣れて、順風満帆な日々を送っていた。
好きな人と四六時中、一緒にいるというのはとても素晴らしいことだ。デメリットがあるとすれば、この生活から抜け出せなくなるという依存性だ。
だが、世の中のカップルはずっと一緒にいると、ストレスが溜まるとネットで見たことがある。
本来、恋人は癒しであると思っている俺から言わせてみれば、そんなストレスが溜まるのなら別れた方が良い。付き合わなければ良いと声を大にして言いたい。
そう思う俺は全くの真逆だ。
物足りなかった。
24時間じゃ物足りないのだ。ずっと由季を求めてしまうのだ。寝る時だってダブルベッドにも関わらず、シングル分しか使っていない。
以前の生活に戻ったら、由季といない時間が寂しくて寝込んでしまうだろう。
そんな俺が現在、何をしているのかと言うと──
「由季……」
「最近はゆうの方から来るね……。ハグ好きになっちゃった?」
「ハグも好きになったけど、由季への想いが止まらない……」
「そ、それは仕方ないね。いっぱい堪能して……?」
「うん……」
会話の通り、俺は由季とハグしていた。
普段は勉強で分からない部分を教えて貰う為に、ハグしてあげていた方だが、今ではすっかり俺も虜になっていた。
その要因となったのは由季との交際も親公認となり、抑えていた気持ちが無くなったこと。それに、絶対に幸せにするという誓いがあるのも大きい。
だけど、これが一番だ。
「由季って見る度に可愛くなってるけど、何かしてるの?」
「何もしてないよ? 強いて言えば私にメロメロになっちゃってるから、その効果かな」
「それは嬉しい効果だな……」
「これは浮気の心配はいらないかな……」
「してるよ?」
「え……?」
「新しい由季の一面が見えるとその部分に浮気しちゃう。ずっと違う由季に浮気してる」
「そ、そうでしゅか……」
「それに由季以上に良い女性なんていない。由季は誰にも渡さない。全部、俺のだからな」
「ひゃい……」
由季はいつにも増して強引な悠にキュンキュンしっぱなしだ。そして、悠一筋である為に強引で束縛してくる悠も悪くないと思ってしまう。
一緒に生活していれば見えていなかった一面を知ることができ、その部分を愛しく感じ、想いが強くなる。
益々、二人はお互いを求めてしまうし、離れられなくなってしまった。
そんな中、由季は不安そうな声色で喋り始めた。
「ねぇ、ゆう……?」
「なんだ?」
「また大きくなっちゃった……。今のじゃきついの。ゆうがいっぱい触るからだよ?」
「……」
確かに、ハグしている今なら分かる。最近、ハグした由季より今の由季の方が爆弾が威力を増していることに。
「な、何カップなんだ……」
「……から……になったの……」
「そんなにか……!」
「そんなにだよ……。でもね、それだけじゃないの。ゆうと生活するようになって、蓄えきれなくなった愛情もここに集まって来てるような気がするの……」
「そ、そうか……。でも、どうしてそのことを俺に?」
「大きくなり過ぎても嫌いにならないで……」
なんて贅沢なお願いなんだ……。
そんなの良いに決まっている。俺への愛の深さがそのまま由季の爆弾に比例してるのなら、どんどん成長させて欲しい。
「嫌いになんてならないよ。なんなら、もっと大きくしてくれても大丈夫だからな? どんなに大きくなっても俺が全部、受け止めて上げるからさ」
「ゆう……! 大好き……!」
「俺も由季が大好きだ……」
「あ……大きくなったかも……」
「本当か……」
俺は再び、由季の爆弾に意識を集中した。
すると、僅かにだが膨らみが増してるような感じがした。
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