EX2 可愛い妻と2000日後

 ある日の公園でのこと。



「ほら、こっちだぞ〜」


「そっちじゃないよ〜 こっちこっち〜」


「パパ〜」


「よしよし、良い子だ」


「えへへ、ちゅ〜」


「こら、ダメだろ? ちゅ〜は将来、好きな子に残しておくものだぞ?」


「じゃあ、ゆうき。パパとけっこん〜」


「うぅぅ〜〜〜〜」



 俺は妻である由季と娘である悠季ゆうきの三人で家から近場にある公園に遊びに来ていた。


 そこで悠季を中心に俺と由季は一定の距離を離れて、悠季がどちらの下に駆け寄って来るかで勝負していた。


 だが、結果は何回やっても由季の負け。由季の完敗である。


 そして、追い討ちを掛けるように由季は娘に最愛の夫の唇を奪われるという屈辱を味わっていた。



「ゆうきちゃん〜 パパを返して〜」


「やっ」


「ゆうきちゃんはママのこと嫌いなんだ……」


「ママ、めんどくさ〜い」


「うぇぇぇぇん。ゆうきちゃんがイジメてくる〜」


「ゆうき、ママをイジメちゃダメだろ?」


「ママ、ごめんなさい」


「どうしてパパの言うことだけ聞くの〜」



 そうして、泣き付いてくる由季を撫でてやると、一瞬でケロっとした顔になる。嘘泣きも様になってきた。



「パパ、ゆうきもなでて」


「良いぞ」


「パパ、私ももっとして」


「……」


「ゆう……」


「はいはい……」



 母親としての由季には容赦は無いが、恋人としての由季には俺も甘くなってしまう。何だかんだ言っても悠季には悪いが、一番は由季が好きだ。


 俺が一通り二人を撫でると、悠季は由季の足元に縋り付く。由季も悠季の視線に合わせてしゃがみ込んだ。



「どうしたの?」


「ママ、お腹空いた」


「ゆうきちゃん? 何かねだる時にしか私のところ来ないよね?」


「そんなことない。ママだいすき」


「私もゆうきちゃんのこと大好き〜」


「うぐぅ……くるしい……ガクッ」


「ゆ、ゆうきちゃん? し、死なないで〜」



 今の由季は小さい子に対しては抱き締めるだけで首を締めるのと同義だ。


 まぁ、そうなったのも俺が原因だ。


 由季と致してる時、どうしても揺れる二つの爆弾が気になって、たくさんお触りしてしまうのだ。


 そのことが原因? で由季の爆弾はすくすく成長。もう時期に爆発するのでは? と怖くなることもあるが、実際にはそんなことはなく、今では夜限定の必殺技も……というのは置いておこう。



「そろそろ帰るか。お腹空いたし」


「パパにさんせい〜 ママのりょうりだいすき〜」


「ママのことは?」


「めんどくさ〜い」


「ゆうきちゃん酷い!」



 そんなほのぼのとした会話を聞きながら、俺は悠季の手を掴む。由季も同じように悠季の手を掴んだ。


 いつかはエコバッグを介して俺と由季は繋がっていた。


 だが、今では自分たちの子供がその役を担っている。



「約束叶ったな……」


「そうだね……ありがと、ゆう……。今までもこれからも、愛してます……」


「俺も愛してるよ……」



 そして、俺と由季は惹かれるように顔を近づけて……悠季に阻害された。



「ママにゆうきのパパ、わたさないもん!」



 その悠季の言葉に俺と由季は顔を見合わせると──



「「ぷふっ……」」



 二人して笑った。



 **** ****



 三人で家に帰ってくると早速、由季はお昼ご飯の準備に取り掛かった。


 俺と悠季はと言えば、羊毛のカーペットの上で寝っ転がっていた。悠季は俺のお腹の上で今さっき、夢の世界へと旅立った。



「本当、由季に似てるよな……」



 俺は悠季の頬に人差し指で軽く触れる。しっとりもしているし、ふっくらもしていて色々と楽しめる感触だ。



「パパ……」



 しかし、悠季が生まれる前に由季が言っていた『お父さんが大好き』は当たっていた。凄い鈍感な人でも分かるほどの愛情表現を悠季はしてくるからだ。



「けっこんしようね……」


「凄い結婚したがるな……」



 若干、好意が強過ぎる感じもするが、時間が経っていくうちに距離感が変わってしまうだろう。


 思春期になれば『お父さん、臭いんだけど』とか言われるに決まっている。


 だから、今のうちに娘の好意を溜め込んで、思春期を乗り越えなければ!



「俺を捨てないでくれよ? 悠季?」


「随分と先のこと考えてるね……。それとお昼出来たよ」


「楽しみだ。それと由季は……まぁ、頑張れ」


「なんか見捨てられた⁉︎」



 **** ****



 その後、寝惚けながら起きた悠季も合わせて三人で昼飯を食べた後、再びお昼寝した。でも、今度は由季も入れて三人だ。


 俺と由季がイチャつこうとすると、その間に寝転がっている悠季に阻害されるという繰り返し。良いストッパーかもしれない。


 何せ、悠季がいなかった頃は朝方からイチャつき始めると、いつの間にか日が沈んでいることもあったからだ。


 そんなこんなもあり、夜になると軽い夕飯を食べてから、三人でお風呂に入った。その際、俺はある部分がピークに達した。


 そのことを気取られないように楽しい夜の一時を三人で過ごす。


 そして、悠季が俺と由季の間で寝静まる頃──俺と由季は動き出した。


 悠季を起こさないように俺と由季はベッドから抜け出して、昼寝をしていたリビングにあるカーペットへ。


 そこで我慢の限界だと言うように俺と由季は抱き合いながら倒れ込み、舌を絡ませる濃厚なキスを交わす。



「あなた……」


「由季……」



 良いムードになると由季は俺を『あなた』呼びへと昇華して淫らになる。そして、俺をその気にさせようと由季の手は俺の大事な部分に触れて摩ってくる。



「あなた……悠季と一緒にいるのも楽しいけど、やっぱりあなたと二人の方が楽しい……」


「俺も同じだ……。ずっとくっ付いていたいって思う時がある。それと、風呂の時からその……」


「分かってる……。それにもうこんなに大きい……。ねぇ、少しでも悠季の注意を引くためにさ……?」


「なんだ?」


「悠季の弟か妹……作ろ?」


「っ⁉︎」



 由季からのお誘いを断ることなんて出来ず、俺は欲求のままに由季に食らいつく。



「由季!」


「ぁん……」



 結果、俺と由季の行為は朝方まで続いた。勿論、悠季にバレないように後片付けも二人で仲良く行った。


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