幼い頃から幼馴染に構いまくった結果 〜デレデレになった幼馴染をこれでもかと甘やかします〜

スラ星

〜特別話〜

EX1 可愛い妻と1000日後

前置き


EXは未来での話となります。

初めての方は第1話からお読み頂くことを推奨致します。




**** ****




ある日の早朝


 俺は妻である由季とテーブルに乗っている一枚の紙切れを見つめていた。



「『株主入場ご招待券』……」


「テーマパークの株買ってたから届いたみたいだ。今日は特に予定はないから行くか?」


「行こ!」



 由季は身を乗り出して嬉しそうに言った。二年ちょっと前は家の中しか歩き回れなかったのに凄い進歩だ。でも少しだけ荒療治だったと思うから今でも反省している。



「さて、何着て行こうかな〜」



 由季は楽しそうにしながら、リビングを出て自室へと向かっていった。その間に俺は手軽な朝食を作る。と言っても、トーストを焼くのと由季が作ってくれた味噌汁をよそうだけなのだが……。


 丁度、俺がテーブルに二人分の焼けたトーストと味噌汁を置いたのと同時に軽めのお洒落をした由季がリビングに戻ってきた。



「どう?」



 由季の服装はキャメルカラーのニットワンピースでゆったりとした印象、すらりとした足は黒のレギンスが包んでいた。


 これは紛れもなく──



「可愛いよ」


「えへへ。あ、動いた!」



 由季は膨らんでいる・・・・・・自分のお腹を大事な物を扱うように優しく撫でる。


 実はこの由季さん、妊娠五ヶ月目に突入して安定期に入っている。


 経済的にも自力で生きていく分には困らない額は稼いだので、俺は由季にプロポーズしていた。


 結果その日の夜、狼になった男……ではなく、狼になった女に貪られた。それはもうしっぽりぬっぽりと。あの妖艶な表情での乱れようは忘れそうにない。


 俺と由季はまだ19歳だが、由季が出産を迎えるまでにはお互いに20歳になる。俺と由季の両親は『早く初孫を見せろ』と楽しみにしている。



「ゆ……あなた、撫でる?」


「……まだ演技っぽいから、ゆうでいいよ。でも、そうだな。触らせて貰っても良いか?」


「どうぞ」



俺は由季の膨れたお腹に手を当てる。その俺の手の上から由季の手が覆い被さる。



「俺たちの子がいるんだな……」


「そうだよ。私とゆうの大切な子供……」


「愛してるよ……由季」



 俺と由季の左手の薬指に嵌められた指輪がカーテンの隙間から入ってくる太陽光を反射する。



「あなた……」


「あ、今の良い。その感覚忘れないでね」


「え、どの感覚? どうやって言ったんだろ⁉︎」


「ふふっ」



 あたふたする由季を微笑ましく見つめながら、俺は愛情のこもった朝食を食べ始めた。




 **** ****




「着いた!」


「着いたな」



 意外と近場な遊園地だった為、車を運転して訪れていた。道中は由季にコーヒーを飲むのにも『あ〜ん』をされ、ストローを吸う羽目になった。どんなことにもお世話をしたがる由季である。



「じゃあ散歩しよ〜」


「そうだな」



 快適な温度と天気が心地良い。

 家族連れの客も所々、見受けられる。今日は平日の為、比較的空いているのだ。土日や祝日だったら、まず行かなかっただろう。


 いくら、由季が外に出られるようになったと言っても、人に囲まれるほどの人数は嫌う。大勢に囲まれて痛い目を見たのだから当然だろう。



「ふふふふ〜」



 そんな由季はご満悦で俺の腕を抱き寄せて肩に頭を置く。ここが由季の定めたポジション、略して定ポジだ。


 俺は抱き寄せられた腕が由季のお腹に触れているので優しく撫でる。



「ほら、お父さんですよ〜 悠季ゆうき〜」



 もう既に名前が付いており、男女どちらでも対応出来ている名前だ。俺と由季の名前を一つずつ取っただけだが。


 一応、由来はある。


 『悠と由季、二人を繋ぐ架け橋となれ』的な感じだ。



「あ、お父さん大好きって言ってる」


「凄い飛躍的な解釈」


「やっぱり、私の血を引いてるからゆうに惚れちゃうんだね」


「凄い特殊な血液だ」


「でもダメ。ゆうは私だけの男」



 じゅるりと舌舐めずりを一つ。



「……」



 今晩、絞られちゃうのかな……。おかげで性欲が溜まる・・・ということはないです……。




 **** ****




 俺と由季は遊園地デートを楽しんだ。ジェットコースターは流石に無理だけど食べ歩きをしたり、メリーゴーランドや乗り物に乗ってレーザー銃を撃ったりと。


 由季が盛り上がるものだから、つい本気を出して歴代一位を抜かしたハイスコアを叩き出したり。


 とにかく楽しかった。


 そして今現在は、観覧車に乗っていた。


 夕暮れを背景にして俺と由季は寄り添い合う。お互いの手は絡み合い、由季のお腹の上に置かれている。謎のゆったりできるBGMが疲れを癒してくれる。



「いっぱい遊んだな」


「うん。写真もいっぱい撮れた」



 そして、俺と由季は見つめ合う。



「ゆうくん」


「なんだ? 由季さん」


「思えばこの呼び方から始まったね。ゆうくん、ゆう、あなた。進化してるんだね。それに比べてゆうくんは一回しか進化してない」


「仕方ないだろ。そういうものなんだから」


「そうでもないよ? ダーリン」


「そうだったな、ハニー」


「でも、私ももう一回進化しちゃったから、私には一生勝てないね」


「降参です……」


「じゃあ、罰ゲーム!」


「え、嘘だろ。そんな約束一言も……」



 だが、由季は待たずに俺の耳元に口を近付けて告げた。



「……一生幸せにしてね。あなた」



 あぁ、もう調子が狂うな……。



「お安い御用です。俺だけのお姫様……」


「はい、期待しています。私だけの王子様……」



 そうして一生の愛を誓った俺と由季はBGMを搔き消すように濃厚で長いキスを交わした。

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