第27話 可愛い仮妻と料理②
「負けた……」
「勝った!」
勝負はあっという間に終わり、俺の勝ちで終わった。
バラ肉は赤みが薄くピンク色をしている物が良い。それと脂身は新鮮な白色で黄ばみが少ない方が良い。
「た、偶には私が膝枕する側に回って上げても良いかな……」
「楽しみにしてるよ」
「む〜 なんか悔しい。膝枕はしてあげるけど、追加で三回勝負しよう。その三回で全て私が勝って、勝ち越すから」
「そんなんで良いの? もし、また由季が三回負けたらどうするの?」
「お、オプション付けてあげる」
「オプション⁉︎」
ま、まさか、その二つの大きな膨らみで……。
「い、言っておくけど、えっちなゆうが考えてるようなことじゃないからね」
「な、なぜ、そのことを……」
「私、視線には敏感なんだよ……?」
「あ、悪い……嫌、だったよな」
沢山の視線と暴言を浴びて、一度はダメになってしまった由季だ。嫌なことを思い出させてしまった。いくら、恋人同士になったからといっても、そこは配慮するべきだった。
しかし、その俺の考えは間違っていた。
「……嫌じゃないよ?」
「え……?」
「知らない人の視線は冷たいんだけど、ゆうの視線は暖かいの……。暖かくて安心出来て、いつも私を勇気付けてくれるの……」
「そ、そうか……」
「うん……か、会計しよっか」
「そ、そうだな、そうしよう」
しおらしい由季の姿に何だか居た堪れない気持ちになり、デザートや飲み物、明日の朝に食べるパン等を適当に籠に入れると会計を済ませてスーパーを出た。
そして、自然と由季は俺の持っていたエコバッグの持ち手の片方を持ってくれる。エコバッグは由佳さんが使うだろうからと由季に渡していた物だ。
そのエコバッグを介して俺と由季は繋がっている。普段は抱き付いたりと直接の方が多かったので、何かを介して繋がるのは滅多にない経験だった。それが何だかむず痒くて恥ずかしく感じてしまう。
でも、嫌な気分じゃなかった。
「ねぇ、ゆう……?」
「な、なんだ?」
「いつかはこのエコバッグが私たちの子供になったらいいね……」
「……」
あまりの言葉の破壊力に俺は言葉を失った。
……その子供を得るまでにはいくつかのイベントがある。
由季と籍を入れること。
由季と結婚式を挙げること。
そして、由季との新婚初夜……。
そのイベントのことを思うとドキドキしてくるが、絶対に成功させたい。特に三つ目は子供が出来るか重要なイベント。
だが、俺はまだ心の準備が出来ていないので、男の甲斐性として何とかしておきたい。
だからこそ俺は言った。
「……絶対に叶えような」
「う、うん。そ、その時になるまでにはえっちなゆうも受け入れるから安心してね……」
「あ、あぁ……」
そして、沈黙。
お互いの歩いている音が聞こえるだけだ。だけど、隣に愛しの人がいるというのは実感できる。それだけでも、確かに幸せを感じた。
「……約束しよっか」
「……嘘付いたら針千本飲ーます、指切った!」
「あぁぁぁ! ゆうに勝手に切られた!」
「……約束なんか無くてもさ、ずっと一緒だろ?」
「そうだね……。そう言ってくれるゆうが好きだよ……」
「俺も……」
『好きだよ』と言いかけたところ、俺は思い出した。由季に『好き』だと言っちゃいけないということに。
「どうしたの? ゆう〜?」
言っちゃいけないと言ってきた張本人がわざとらしく俺をおちょくってくる。俺はその顔を見て真っ赤に染めて上げたくなった。
だからこそ、言ってあげることにした。
愛しの彼女に捧げる、相応しい愛の言葉を。
「『愛してるよ』、由季……」
「あ、あぅぁぅぅ〜〜〜」
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