第23話 可愛い彼女とご挨拶⑤
逃げるように部屋を出た由季は再度、舞香に悠との交際を認めてもらう為、一階に向かった。リビングに続くドアを開くと、それは聞こえてきた。
「──俺、海外に引っ越しすることになったんだ……。だから、俺は由季と会うことは極端に少なくなる……。ごめん、ごめんな……」
ゆう……私はもう大丈夫だよ。今まで迷惑掛けてごめんね。私はゆうだけを見ていればよかった。周りの目は気にしなくてよかった。ゆうが私を見てくれるならそれだけで私は……。
「ゆう……なら、私もゆうと一緒に海外に行く」
「え……?」
「あら?」
由季の登場に悠と舞香はそれぞれ別の様相を呈していた。
悠はもし本当に海外に引っ越したとしても、由季が一緒について来てくれる嬉しさから。
そして、舞香は由季の雰囲気が以前と比べて明らかに変わっていることに対する驚きから声を上げた。
「お義母さん。私とゆうの交際を認めて下さい」
「……私が拒否した理由は分かっているのかしら?」
「はい。もう、ゆうに背負って貰うんじゃなくて、私もゆうを背負える人間になります。それと、ゆうに捨てられないように頑張ります」
「なるほど、あなたが捨てるべき立場じゃないということは理解したのね」
「え? 俺は由季を……」
「悠ちゃんは黙ってて」
「はい……」
舞香の真面目モードに為す術もなく、悠は発言権を失った。
「酷いこと言うけれど、私は由季ちゃんに何も魅力を感じないわ。一人で生きていくことも出来なければ、いつまで経っても過去を引き摺っている。悠ちゃんが物好きでなければ、あなたはとっくの昔に捨てられていたわよ?」
「仰る通りです……」
「大体……」
「ははははは、お前がそれを言うのか」
「「「え……?」」」
三人が声のする方を向けば、裕人が面白い物を見た表情をしている。その隣では透が苦笑いをしていた。
「あなた……それはどういうことかしら?」
「おかしいな。僕の場合は選択権等、無かったのだがな? 気が付いたら裸にされ、気が付いたら僕の上に跨り腰を振る。そして、気が付いたら子を妊娠させている。これに関して、お前は何を思う?」
裕人の言葉に舞香は調子に乗り過ぎたと反省して、由季に向き直る。
「ごめんなさい、由季ちゃん。私は羨ましかったの。想い人に想われている由季ちゃんが」
「お義母さん……?」
「魅力を感じないと言ったのは嘘よ。素直に甘えられる、心の底から信頼している、そんな幸せそうな由季ちゃんを見て、私は嫉妬したのよ。酷いこと言ってごめんなさい」
「いえ、言われたことは事実ですから……」
「……言われたことを事実として受け入れる……。なんて良い子なの! 悠ちゃん! 由季ちゃん以外の子と結婚なんて許さないわよ!」
「……」
突然の手のひら返し。
それに悠は呆然とすることしか出来なかった。
「それにな、お前は干渉が過ぎる。例え、裏切られたとしてもそれは今後の人生で役に立つ。だが、悠は僕の子でもある。その悠の目が節穴だとお前は思うのか?」
「思いません……」
「それに悠は僕が持っていないものを持っている。それが何か分かるか?」
「分かりません……」
「……女運だ。お互いの意思を尊重し合う。嫌なことは相手に強要しない。立派な女運ではないか」
悠はそれが正常だと思ったが、舞香に毒された影響でそのような価値観になってしまった裕人に同情した。
「僕は歓迎しよう。だから、僕と悠の期待を裏切ってくれるなよ?」
「ありがとうございます……お義父さん」
「良い響きだな……」
「何か?」
「いや、何でもない……」
こうして、悠と由季の交際は裕人の介入によって、無事に認められた。
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