第20話 可愛い彼女とご挨拶②

 追加で二人分の朝食を用意した由季は──物凄い不機嫌モードになっていた。


 二人の時間を邪魔されたと『グルルル』と唸ったぐらいだ。そんな由季を愛でて何とか抑えて貰った。



「もう、由季ちゃん機嫌直して」


「ちゃん付けしないで。お母さんはね、私を直接弄る時はちゃん付けで呼ぶの知ってるんだから」


「あら、バレちゃった。じゃあ真剣な話するわね? 悠君とはどこまでヤッたの?」


「なっ……」



 当人がいるのに答え難い質問を叩きつける由佳。



「両想いの男女が二人。もう行くところまで行っちゃってもおかしくないわ」


「お母さんたちと一緒にしないで! お父さんみたいにゆうはがっつかないんだから!」


「グハッ!」



 実の娘に見事な流れ弾を貰ってしまった由季の父、とおる。由季の母、由佳ゆかはそんな透の頭を撫でる。



「大丈夫よ、あなた。それで悠君? どこまで関係は進んだのかしら?」


「ちょっとお母さん……」


「幼馴染から恋人になりました」



 由季との関係を言ってしまった俺を由季はジト目で見てくる。そんな由季の頬をむんずと掴む。



「へ〜 あの慎重の化身の子供だから中途半端な関係は好ましくなさそうだと思ったのに」


「確かに関係は中途半端かもしれません。ですが、由季の悲しむ姿は見たくありませんでしたから。それに、絶対に結婚して幸せにします」



 これは今の俺の確定事項だ。恋人になってファーストキスも貰ったのだから、責任は勿論取る。



「ゆ、ゆう……」


「良い答えね。由季、絶対に逃しちゃダメよ」


「大丈夫です。俺が逃しませんから」


「うぅぅぅぅ〜〜〜〜」


「ま、舞香の子供でもあったわね……納得したわ。因みに由季のどこに惚れたの?」



 由佳さんの言葉に俺は考える。

 その俺の姿を由季が見つめてくる。その瞳は信じていると物語っていて、本当信頼されていて嬉しく思う。だから、その期待に応えたいと思うし、凄く幸せにしたいとも思う。


 俺は由季の頭を撫でた後に由佳さんの質問に答える。



「一緒にいて心地が良いところです。本当に俺のことが好きだって伝わってきますし、素直で可愛らしいところもポイントが高いです。この人なら自分の人生を捧げても良い、その信頼に応えたい、そう思いました」


「もう、恥ずかしいよ……」


「そう……良かったわね、由季。私の娘だから男運も良いのかしら? まぁ、それはさておき、朝食を食べましょうか。……っと、因みに聞くけど、あなた? 由季と悠君のお付き合いは認めるわよね?」



 急に話を振られた透さんは頭を掻く。



「認めてるよ。悠君は私たちに出来なかったことを成し遂げた。二度と見れないと思っていた娘の可愛らしい姿を見れて私は満足しているよ」



 その発言に由季は恥ずかしそうにするが、透さんは構わずに続ける。



「だから、悠君に言うとすれば……娘を由季を幸せにしてやって欲しい。それと、いざとなったら頼って欲しい。私と由佳は色々と二人で抱え込み過ぎた。だから、由季と悠君の二人には私たちと同じ過ちは犯して欲しくはない」



 透さんの表情から幾つかの辛い体験をして来たのだと推測出来る。でも、今でも透さんの隣に由佳さんがいるのは二人が心から信頼し合っているから出来ている関係だ。


 その二人の関係に俺は尊敬の気持ちを持つ。



「分かりました。ありがとうございます。いざとなったら頼らせて頂きます」


「ちょ、ちょっと、私の意見は?」


「あら? 聞くまでもないと思うけど?」


「なんか悔しいなぁ……」



 反論できない由季が可愛そうに見えたので俺は精一杯、由季の頭を愛でた。

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