第15話 可愛い彼女とお泊まり会⑥
逃げ出してしまった由季を見送った後、俺はソファーに横たわる。
「言ってしまった……」
キスをした後の気恥ずかしさ、大好きな人と恋人になった高揚感。その全てに背中を押されるような形で『お嫁さんになって』宣言をしてしまった。
だがそれも由季は受け入れてくれて、『子供をぽんぽん産む』という面白くて嬉しい言葉を返してくれた。
つまり、由季は俺とそう言った仲になるのを拒んでいないということになる。
「ダメだ、にやける……。ぽんぽんって表現、あれ反則だろ。なんで俺の幼馴染はこんなにも可愛いんだよ……。って、もう彼女だったな……」
頭を撫でた時に見せる幸せそうな表情
頬っぺたを弄った時に見せるむすっとした表情
他にも甘えたモードや勝手に自爆していくところ。嬉しそうに仮想の尻尾を揺らして話し掛けてくるところ。
まだまだ由季の好きな部分はいっぱいある。だが今ではそれも由季の彼氏となった俺のものだ。
「あぁ……幸せだなぁ」
心の中ではお互いに好き合っているのは分かってはいたけど、直接言葉にして関係が変わると、感じ方がこんなにも違ってくるのは不思議だ。
なんていうか、薄っすらとしている繋がりが太くなって、より盤石になった感じだ。
でも、こうしてうかうかもしていられない。早く立派になって由季を迎えにいかないといけない。そう思えば頑張ろうと思う気持ちが俄然と溢れてくる。
だけど、今日は由季と恋人になった余韻を噛み締めたい気分だった。
**** ****
一時間後
体の火照りが治まったところで由季が丁度、リビングに戻ってきた。その手にはもふもふのピンク色のパジャマを持っており、これから浴室に向かうのだと伺える。
「ゆう、今度は間違えて入るんじゃなくて、ちゃんと一緒にお風呂入らない……?」
「あぁ、わかっ……ぶふっ! 」
あまりの自然さに同意しようとしたが、直前で気が付き、器官にブラックコーヒーが詰まってしまった。
「けほっけほっ……」
「ゆ、ゆう! 大丈夫?」
慌てて背中をぽんぽんと叩いてくれる。その際にパジャマを持つ手から黒色の下着が見え隠れするのを見てしまった。
なんて大胆な下着をしてるんだと思わずツッコミそうになった。
「それでどうなの……? 私と入るのは嫌……?」
父さん。俺はあなたの言いたかったことを理解しました。『既成事実は勘弁してくれ』とはこういうことだったんですね。
おそらく父さんは耐えられなかったんだ……。だから、俺に忠告してくれて……。
しかし、実際のところは悠の母である
それも初めての体験で、案外乗り気になってしまった為に何とも言えなくなってしまった裕人なのだが、それも悠は知らない。
父さん。俺は耐えて見せるからな……!
断ったら、由季の機嫌を損ねてしまう。だったら、勇気を出そうじゃないか。今こそ我慢強さを見せるべきだ。伊達に約10年耐え切っていない。
「そうだな、夫婦水入らずって言うしな。入ろうか」
「えへへ、ありがとう。でもね、ゆう? 私たちはまだ恋人だからね。将来、夫婦になるって言っても、あんまりがっついちゃダメだよ?」
あぁ、失敗したかもしれないな……。
然りげ無く、夫婦になることを確約している言葉を聞いてしまい、俺の決意が鈍りそうになった。
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