*格好良い幼馴……彼氏と誓い
ゆうくん……じゃなくて、ゆうとちゅーしている間、私は昔の出来事を走馬灯のように思い出していた。
初めてゆうと出会ったのは通っていた幼稚園のちゅーりっぷ組の教室だ。
その日の私は積み木を横一列に並べていく、教室の幅を考慮しない遊びをしていた。これと言った理由は特に無いが、無理に作るとすれば、この積み木を横一列に並べ続けたらどこまで伸びるのだろう? と思った疑問からだ。
いそいそと積み木を横に並べていけば、当然起きる問題がある。
教室にある積み木がなくなった。
もうこれ以上、横には並べられない。
そう思った時に積み木から興味がなくなり、他の人の遊びを邪魔しないように教室の隅に移動する。普段の日常だったなら。
だが、その日は違った。一人の男の子が私の並べた積み木を見渡すと、廊下に出て駆け出した。
数十秒後には、他の組から積み木を持ってきたようで、私の並べた積み木の途中から横に並べ始めた。そのことに私は少なからず興味を持った。
『なにしてるの?』
『見てても分からない? 続きを並べてるんだ』
『なんのために?』
『そんなものはない。ただ、やりたくなったからやっただけ。これじゃダメか?』
『良いんじゃないかな』
その出来事を切っ掛けに私とゆうは関わりを持ち始めた。
自分で言うのもあれだが、私はつまらない人だった。何をするにしても楽しいと思ったものはなく、表情も変わらない人だ。なのに、ゆうが向けてくる視線はいつもキラキラとしていた。
そんなある日、ゆうが私に指をビシッと向けて告げてきた。
『おれがゆきをまもる。だから、ゆきはおれのサポートをしてくれ』
『どうして?』
『な、なんとなくだ。恥ずかしいから言わせるな!』
この時の私は本当に意味が分からなかった。でも、今の私は知っている。当時、放映していたヒーロー物のアニメのセリフを少し変えただけのセリフだと。
その子供の頃の約束をゆうは未だに守ってくれている。
小中もそれは同様だった。
私の隣にいつもいてくれたおかげで『夫婦コンビ』と言われても、『あぁ、そうだ!』と肯定して私に他の男の子を寄せ付けなくさせていた。
けれど、二人きりになると律儀に謝りの言葉を掛けてくる。
『ごめん、由季さん。また嘘付いちゃって』
『う、うん』
その度に私はモヤモヤとした感情を抱いていた。ゆうと付き合えた今なら分かる。私はこの頃から、ゆうに好意を持ち始めていたんだと。
そして、その好意が決定的になったのが高校での出来事。
あまり詳しいことは思い出したくはないが、私が人間不振に陥っていた時だ。
あの時の私を思い出すと、張り倒したくなってくる。
私の大好きな人に暴言を吐くなと。
だけど、その暴言を受けながらも、ゆうは遂には折れることはなかった。
**** ****
そうして、私はゆうとの長いちゅーを終える。お互いに顔を真っ赤にしながらも見つめ合って笑い合うと、二人仲良くソファーに座り直す。
「ゆう?」
「なんだ?」
「初めて会った時は積み木で遊んだね」
「そういうこともしてたな」
「私、こう思うんだ。あの積み木は私とゆうが出逢うレールになってくれたんじゃないかって。なんかそう思うとロマンチックじゃない?」
「そうだな……」
「ゆう?」
「ゆ、由季、伝えたいことがある」
「は、はい」
謎の威圧感に圧され、私はたじろぐ。
「絶対に迎えに行く。立派になって周囲から頼られるような人になる。だから、その時になったら、俺のお嫁さんになってくれますか?」
「あ、あぅ……」
完全に不意打ちされた。そんなこと言われたら……。
「由季?」
「うぅぅぅぅぅ〜〜〜〜」
「ちょっと痛い。叩かないで」
「……絶対なる。ゆうのお嫁さんになるからね! 子供もぽんぽん産むから!」
「ど、どういう意味だ。ちょっ由季、俺に分かるように説明して欲しいな⁉︎ 由季? 由季さ〜〜ん!」
後ろ手にゆうが呼びかけてくるが、私は嬉し過ぎて顔がにやけてふにゃけてしまっているので、私はリビングを出て自室に逃走した。
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