第13話 可愛い幼馴染とお泊まり会⑤
な、なんなの、これ……?
悠が突然、由季の方に顔を向けてしまったが為に、由季は悠の唇にキスしてしまった。イタズラで頬っぺたにキスしようとしたのだが……。
瞬間、由季はドクンと一際大きな脈を打つ。
由季は胸に手を添えて、その何かを鎮めようとするが──
収まらない。
キスを通じて悠への想いが溢れてくる。約10年という長い時間を積み重ね、心の奥底に溜まり続けた想いが今──決壊した。
ゆうくん……ちゅーってとっても良いものなんだね……。
由季は一度、悠から唇を離すと、勢い良く悠を抱きしめてソファーに押し倒す。その際に近くにあった悠の額にちょこんとキスを落とす。
すると、胸の内がポカポカと暖かくなり、悠への想いが更に大きくなる。
「ゆうくん……大好きぃ……」
「ッ⁉︎」
由季の顔全体が真っ赤に染まり、瞳がとろんとする。今までに感じたことのない胸の高鳴りを由季は
**** ****
俺は今何をしているのだろうか?
なぜ、俺は由季さんに組み伏せられているのだろうか?
思考が纏まらない内に、俺の脳裏に夢の出来事が思い出されていく。
由季さんに額をキスされる。
由季さんに大好きと言われる。
由季さんからスキンシップを受ける。
そして──由季さんに謝りの言葉を口にされる。
「ごめんね……ゆうくん。もう我慢、出来ない……」
由季さんの真っ赤に染まった顔が迫ってくる。この後、俺は夢が覚めて起きる。そうだ、これは夢だ。おそらく、由季さんの美味しい夕食を食べてそのまま眠ってしまったんだ。
だから、これは──
「「んっ……」」
夢じゃなかった。
柔らかな感触が唇に生じていた。甘い香りが全身を満たしていく。体に電流が流れるような衝撃だ。そうしてゆっくりと唇を離す由季さんと見つめ合う。
「由季さん……俺でいいのか?」
「ゆうくんが良いの……。私の大好きなゆうくんが……」
「そうか……」
ここで止めさせれば、由季さんは自分のしたことを後悔するだろう。唯の幼馴染同士がキスをする筈がないからだ。
だが、それを認めてしまえば自身で定めたルールに反してしまう。
そう考えている内にも由季さんはソファーから立ち上がった。
「ごめんね……ゆうくん……」
目尻に涙を浮かべて、トボトボと由季さんが部屋を出て行こうとする。俺はそれを黙って……。
違うだろ! 何をやっているんだ俺は! あの日、誓った筈だろ。もう二度とあんな思いはさせないって!
何が絶対じゃないだ。絶対、幸せにすれば良いだけの話だろ!
……恐れるな、九重 悠!
母さんが言ったじゃないか。
『物理で解決できないものはない』と。
父さんも言ってたじゃないか。
『自分の名誉を傷付てでも救いたい人がいるのなら、
だったら、今がその時だろ!
勇気を出せ!
俺は決意を旨にすると息を吸い込み叫ぶように言い放った。
「由季ぃぃぃ! 俺は由季が好きだ! 俺と付き合ってくれ!」
「ゆうくん……私も好き……! ゆうが大好き!」
俺はソファーから飛び上がると、一足で由季に近付き抱きしめる。そして、顔を真っ直ぐに見つめる。
「天海 由季さん。俺をあなたの彼氏にしてくれますか?」
「はい……。私をあなたの彼女にして下さい……」
とびっきりの笑顔と共に返事を貰った俺は由季の頭を優しく撫でる。そして、お互いに顔を近づけてそっと唇を触れ合わせた。
そのキスの味は涙のせいか塩っぱかった。
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