第12話 可愛い幼馴染とお泊まり会④
現在、俺は緊急事態に直面していた。由季さんと楽しく雑談していたのに、あろうことかこのテレビ、いや、ドラマがカップル成立の瞬間を放映したのだ。
簡単に言えば実にシンプル。
告白が成功して男女は恋人同士になり、接吻した。
子供っぽく言えば付き合って、ちゅーした。
別に一人でこのドラマを見ていたのなら、良いシーンだと思っていたのだろうが、こうして意中の相手とそのシーンを見るというのは生殺しにも等しい。
カップル同士が見ていたのなら、『俺たちも……』、『私たちも……』とドラマをそっちのけにしてイチャついているのだろう。
だが、俺と由季さんの関係性はそういうことをしない
それに先程、夢で由季さんとキスし損ねたことも響いてきた……。
……そうだよ。俺は夢でもいいからキスしたかったんだよ! 微塵も思ってないとか嘘に決まってる。大好きな人との接吻チャンスを見逃したんだから……。グスッ……。
**** ****
由季は悠と食後の楽しい雑談タイムを満喫していると、悠がテレビに釘付けになっているのに気が付いた。
確かゆうくんは何かのドラマを付けていたはず……。
何気無く、視線を悠からテレビの方に向けると、それは起きていた。
ドラマの中のシーンは正に佳境で、男性が女性に対して告白すると、それを涙目になって了承した女性が感極まって男性の唇を強引に奪っていたのだ。
ほへ〜〜〜〜 ちゅーしちゃってるよ。
由季は開いた口が塞がらなかった。ドラマとは言え、二人は幸せそうだ。そんなにキスはいいものなのだろうか?
悠とのハグは幸せな感情が溢れて心地良いものだと認識している。
しかし、生まれてこの方、由季はキスをしたことがなかった。
幼い頃なら、両親の頬っぺたにキスをしたことがあるという人もいるかもしれないが、由季は元々、ぼーっとしているような子であった為、そんな行動力は皆無であった。
ゆうくんはどうなんだろう……?
由季はテレビから悠に視線を戻したのだが……。
ゆうくん泣いてる……。そんなに良い話だったのかな?
だけど、由季はドラマに見入っている悠が気に食わなかった。自分を放っておいて、一人感動している悠が。なので、由季はイタズラを企てることにした。
どんなイタズラにしようかな〜 あ、そうだ。ゆうくんの頬っぺたにちゅーしてみようかな。どんなものか気になるし。
そうと決まれば、正面を向いてドラマを見ている悠に由季は迫る。悠との距離が近付いていく毎に由季は悠とハグをしている時と同様にドキドキと鼓動が脈を打ち始めていた。
キスって緊張するんだ……。
そうして由季はラストスパートを掛けるように一気に距離を近づけた──その時。
「あの、由季さんんっ⁉︎」
「んっ⁉︎」
悠が由季の方に顔を向けてしまったが為に、悠が待ち望んでいた唇同士でのキスになってしまった。
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