第3話 可愛い幼馴染とお風呂

 今日は生憎の雨だった。それも土砂降りだ。そんな中でも俺はいつものように由季さんのお宅に訪れていた。


 しかし、この土砂降りでは傘を差していてもほぼ意味がなかった。真横からの強風に煽られ、傘はろくに機能せず、雨に殴りつけられながらも何とか到着した。


 一戸建ての家のインターホンを押す。すると、しばらくして由季さんの母、由佳ゆかさんが玄関から顔を出した。だが、俺の濡れた姿を見ると慌てた様子になる。



「悠君⁉︎ 来てくれたのは嬉しいけれど、態々びしょ濡れになってまで……。シャワー貸してあげるから入っちゃいなさい」


「お言葉に甘えさせて頂きます……」



 流石にここで遠慮する余裕もなかったので、俺は洗面所に向かう。雨を吸った服を脱いで急いで浴室に入った。


 普段の俺なら何故、浴室に電気が付いているのか確認していた。だが、今の俺はとにかく温まりたいという強い意志があった為、その確認を怠った。


 その結果が──



「ふんふふ〜ん、ふ……」


「あ……」



 浴槽で心地良く鼻歌を歌っていた由季さんと丁度、浴室に入った俺の視線が合わさった。そして、思春期真っ盛りである年頃の為、どうしても視線は動いてしまう。


 年相応以上に膨らんだ由季さんの胸部に。

 対して、徐々に膨らんでいく俺の局部に。


 柔らかそうな肌白の肌にこれまた柔らかそうな大きな膨らみとそこに実った美味しそうなピンク色をしたさくらんぼが目に焼き付く。対して由季さんは俺の下半身、さくらんぼを目にした影響で立派に反り立っていくぞうさんに視線を向けてしまい硬直した。


 それから数年という長い時間を数秒で体感してようやく体が動き出した。



「あ、あの、ゆ、ゆ、ゆうくん⁉︎ ど、どうしてここにゆうくんが⁉︎」



 咄嗟に反転した由季さんが辿々しくも聞いてくる。ここで出て行けと言われないのは相応の好感度を有しているからだろう。



「あ、いや、えっと、雨で濡れちゃって由佳さんに入れって……」


「そ、それは大変⁉︎ 私後ろ向いてるから入って来て。だ、大丈夫。ゆ、ゆうくんならいいから。い、いや、ゆ、ゆうくんしか絶対ダメだから!」


「あ、ありがとう……」


「ど、どういたしまして……」



 本当はシャワーだけで済ませようとしたが、そんな小さな事はもう頭にはない。とにかく、何とかしなきゃの一心で動いていた。浴槽に足を入れ、静かに腰を下ろすと由季さんと背中合わせになって座る。



「あ、背中も柔らかい……」


「ゆ、ゆうくん⁉︎」


「あ、いや、今のは……」


「でも、そ、そうだね。ゆうくんの背中は頼もしいって感じがする」



 由季さんの背中は俺のと比べてとても小さく、強く押してしまったら倒れてしまうんじゃないかと思うほど弱々しく感じてしまう。とても庇護欲を掻き立てられる。



「ありがとね、ゆうくん」


「え?」


「幼い頃から何かとゆうくんのお世話になってたし、最近だって……」



 その最近とはおそらく高校の件だろう。



「それは気にしなくていいって何回も言ったろ? それに──約束したからな」



 それは遠い昔の約束事。まだ年端もいかない年少の時の事。



『──おれがゆきをまもる。だから、ゆきはおれのサポートをしてくれ』



 それは幼い頃、誰もが憧れるファンタジー世界の住人が言うようなセリフ。または、物語の主人公がヒロインに向けて言うセリフ。


 と言っても、一方的に俺が由季さんに言っただけなんだが。



「そうだったね……」


「あぁ……」



 それからしばらくの間、沈黙が場を埋める。その間は静かだが、とてもリラックスできる時間だ。近くに由季さんがいるからかもしれないが。すると、由季さんは遠慮せずにぐったりと背中を預けてきた。


 ──信頼されている


 そのことが何よりも嬉しかった。


 だが、それは唐突な由季さんの一言で崩れ去ることになる。



「ゆうくん、今回は余計なサポートしちゃってごめんね……」


「っ⁉︎」



 俺は先程の記憶を思い出してしまった。俺がさくらんぼを目に焼き付けた時に、由季さんは成長するぞうさんを目に焼き付けた事を。


 ──やばい、逆上せる……。


 まさか、由季さんがその部分に突っ込んでくるとは思いもしなかった。おかげでこちらは嫌な汗が止まらない。



「お、俺、もう上がるから!」


「あ、う、うん」



 **** ****



 悠が忙しなく洗面所を出て行くのに合わせて由季は呟いた。



「ゆうくんの背中大きかったな……」



 前は由季の方が背は大きかったが、いつの間にか抜かされて逞しくなっていた。



「それに……」



 思い出すのは顔から火が出そうな光景。目に焼き付いて離れない想い人ゆうくんの大きくなっていくぞうさん。



「そっか……。私でそんなに──」



 その後の言葉は恥ずかしさからか又は浴槽に沈んでいった事なのかどちらかは定かではない。


 ただ、由季が逆上せた事は確かだった。

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