第2話 可愛い幼馴染とハグ
由季さんの抱き心地は柔らかくて、湯たんぽみたいに温かい。
甘い香りがぷんぷんと、綺麗な首筋から強く漂ってくる。
きめ細やかな髪先が鼻先を撫でる。
そこに追い打ちを掛けるかのように、極上の柔らかさを持つ二つの膨らみが理性に追い討ちをかけて行く。
慣れることの出来ないこの刺激の強い情報が体の隅々まで浸透していく。
まるで、この部屋内だけは外界と切り離されて天国にいるんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。
この由季さんとのハグは俺の心身を癒すのに十分過ぎる働きをしてくれる。
言葉にできない心地良さが、じんわりと全身を満たしていく。
ずっと、由季さんのぬくもりを感じていたい、心の底からそう思えるほどに。
しかし、心臓はドキドキと破裂するんじゃないかってくらい高鳴っている。
それに気付いた由季さんは
「ドクンドクンってゆうくんの鼓動うるさい……」
俺の唯一の気がかりを口にしてきた。
俺はそれを隠す為により一層、由季さんを強く抱いて首筋に顔を埋めた。
甘い香りがより強くなる。愛しさもより強くなる。
「ゆうくん……」
甘い甘過ぎる呼び方。
いつしか、俺の表情は由季さんの見えないところでだらしなく緩みきっていた。
********
その幸福の時間はこれ以上は不味いとギリギリの理性で察した俺が瞬時に離れたことで幕を下ろした。
「……もういいの?」
名残惜しそうな由季さんの表情に思わずどきりとする。もっと由季さんの温もりを感じていたいと思ってしまうが、これ以上はダメだ。これ以上は愛でる行為から反してしまう。それは
とりあえずは目的である左手を解放してもらったので良しとする。俺は再び、シャーペンを持ち参考書に目を向ける。
だが、最初の問題で躓いてしまった。
仕方なく頭の良い由季さんに質問する事にした。
「由季さん、この問題なんだけど」
「──ハグ」
「……ハグ?」
「一問一ハグ」
「……」
一問一答みたいな事を言われて思わず俺は黙り込む。しかし、このハグに応えなければ質問の一つも出来やしない。その為、俺が取った行動は一つだ。
「……どうぞ」
徐に両腕を広げて由季さんを招いた。
「よろしい」
それには笑顔になった由季さんが再び、俺の腕の中に収まった。
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