幼い頃から幼馴染に構いまくった結果 〜デレデレになった幼馴染をこれでもかと甘やかします〜
スラ星
可愛い幼馴染編
第1話 可愛い幼馴染と出会い
「ふむ」
「すんすん……」
「う〜ん」
「すりすり……」
「いや、この問題はこの方式じゃないか……」
「なでなで……」
「……由季さんやい」
「ん〜?」
「そろそろ左手を返してほしいな?」
「やっ」
どうしたものかと考えるのは俺こと
幼少の頃から付き合いがあり、今に至るわけだがこの由季さん、初めてあった時はそれはもう無表情な女の子だった。何をするにしてもぼーっとしてるような女の子な訳で、周りにいる子たちは由季さんに近寄り辛そうにしていた。
かく言う俺は不思議な事には興味津々な子であった為、無表情の由季さんをターゲットに決定した。
曰く、彼女の無表情以外の表情を見たい。
その一心で俺は由季さんに構いまくった。それはもうしつこいを通り越してうざいと思うほどに。
歳を重ねていく毎に由季さんは可愛らしくも美しくもなっていき、かく言う俺も構う行為は愛でるに変化していった。
その甲斐もあって変化が見られるようになったのは高校生になる前の春休み。無表情だった由季さんは俺だけに対してはあらゆる表情を見せてくれるようになっていた。
その時間は正に至福だった。
由季さんが笑ってくれている。その可愛らしい笑顔に釣られて俺も笑顔になった。
だけど、それは高校入学後の数日間の生活で淡くも崩れ去った。
小学、中学の9年間、奇跡的に同じクラスを続けていた俺と由季さんだが、高校生になると別クラスになった。それがまずい状況を作った。
由季さんを知らない生徒達はその美貌が手伝い、男子生徒からはたくさんのアプローチに欲望が込められた視線、女子生徒からは男子生徒の人気を総取りしていることへの嫉妬や陰口、悪質なイタズラが行われることになった。
その結果、たくさんの負の感情を短い期間で浴びせられた由季さんはストレスを溜め込み、精神を壊して不登校になった。
当時の俺はそれはもう怒った。ブチ切れだ。当然である。長年の成果が壊されたのだから。放課後には一緒にいることができたのに気付けなかった自分に腹が立ったが、その原因を作り上げた生徒ら全員にむかついて仕方がなかった。
なので、関わった男子生徒一人ずつぶん殴っていき、女子生徒には『誰が誰を好き』的なノートを作っているイジメの中心的な人物がいたのでそれを拝借して印刷した後、学年を問わずに校舎中にばら撒いた。
絶賛、ばら撒き中のところに教師が「止めろ!」と注意してくるがこんな程度で怒りが収まる俺ではない。
だから叫んでやった。
『なんで教師のテメェらがイジメに気付いてやらねぇんだよ! 辞めちまえ、給料泥棒!』
と高らかに。その後は数人の教師が俺を抑え込み事態は収まった。
結果として俺は高校に入学してから一ヶ月も経たない内に自主退学勧告を設けられた。まぁ、あんなに暴れたから仕方がないとも言える。だけど、惜しかった。由季さんは頭が良いからすいすい合格したが、俺はかなり勉強したからだ。
でも、由季さんがいない学校生活は無意味に等しかったので別に良かった。伊達に中学の時、『夫婦コンビ』と言われていない。しかし、両親には悪い事をした。怒られるんじゃないかと思ったが逆に褒められた。
だが、『やり方がいけないね。僕ならまず、如何に自分の立場が傷付かないように重点を置いて立ち回るね。例えば──』と父親が裏から暗躍してジメジメと相手取っていく話を長く語り、『流石よ、やっぱり困ったら物理が一番。それが手っ取り早いものね』と清々しい表情をした母さん。
その後は両親の恒例の言い合い。
『物理でなんとかするしか方法が浮かばないのかい?』
『あら? ちびちびちびちびと相手を痛め付けて何が楽しいのかしら?』
その後は二人で何処かに出掛ける。帰ってくる頃には普通に仲良くなっている。もう何ループしたかも分からない。
まぁ、そんなこんなもあって自由にできる時間を得た俺は、由季さんが住む家に通うことができた。
最初の頃はそれはもう酷かった。精神崩壊していることもあり、部屋に引き篭もって何もかも信じられないといった精神状態だった。
暴言もたくさん飛んできた。それでも俺は挫けなかった。由季さんの無表情以外の表情を見てしまったからだ。あの短くても幸せな時期と比べたら今の辛い時間なんてどうとでもない。
もう一度、由季さんの表情を見たい。無表情でもいいから由季さんの表情が見たかった。
そして変化が訪れたのは通い始めて丁度、100日目のことだ。その頃は由季さんに面白くもない話を数分間話してから帰る。
その行動が日常化していた。別に辛くはなかった。由季さんの痛みに比べればただの擦り傷だったから。
だけど、この日は違った。
帰ろうとした時に開かずの扉が開いて、由季さんが駆け寄って来ると俺に抱き付いてきたのだ。
『ゆうくん、ゆうくん……うわぁぁぁぁぁん……。酷いことたくさん言ってごめんなさい……。見捨てないでくれてありがとう……。ゆうくん……ゆうくん』
その言葉に俺は自然と涙が込み上げてくる。俺も由季さんを抱き返した。もう放してあげないと言わんばかりの強さと愛情をもって。
『由季さん……。ごめん、ごめんな……。気付いてやれなくてごめんな……。痛かっただろ……苦しかっただろ……。もうこんな目に合わせないからな』
『うん……うん! ゆうくんなら信じられる……ありがとう』
その光景を隠れながら見ていた由季さんの両親はそれが嬉しかったのか静かに涙していた。
それから数日を要して、なんとか由季さんは家の中だけは自由に移動できるようになった。
しかし、何だか様子が変である。幼稚園の頃から始まり、小学、中学と俺が一方的だったのに対して今は──由季さんの方からベッタリと引っ付いてくるいわゆるデレデレになっていた。
「どうしたら返してくれる?」
「ん〜 ぎゅーってしてくれたら考えてあげる」
「考えるだけですか」
「そうです。考えるだけです」
可愛い。
それならば、俺の選択肢など一つだ。
「ほら、おいで」
俺が両腕を広げて由季さんを招く。
由季さんを盛大に愛でると決めているのだから。
そして、
「ぎゅ〜」
嬉しそうにこちらに体を預けて腕の中に収まった。
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