Scene11 -8-

 GOTの司令官である神王寺翔子は、ガンバトラーがエリア132の領内に侵入した時点で、何度も撤退の命令が出ていた。しかしガンバトラーは頑なにそれを拒否し、A国軍の支援のためにウォリアーへの攻撃を続けていたのだった。


 デッドウェイトとなった火器武装をパージして機動性と運動性を向上させたガンバトラーだが、元々中遠距離射撃型の機動重機である彼の格闘能力は、それに特化したゼインに及ぶものではない。


 そもそもガイファルド三体の同時攻撃をいなすほどの強さであるウォリアーに機動重機が格闘戦で渡り合えるはずもないのだ。


 それでも都度オーバーロードを使用することで戦闘を長引かせることには成功していた。


『時間を稼ぎさえすればA国軍の大部隊がやってくる。そして、彼らも……』


 何度目かのダウンを喫したガンバトラーはすでに戦える状態ではなかった。スピリットリアクターも限界に達し、通常出力もとうとう30パーセントを下回る。


「(貴様はよくやった。言葉を交わすことができないことが悔やまれるな。さぁ、これで終わりにしてやろう)」


 グラグラと揺れながら立っているガンバトラーは欠片も抵抗する力はなかった。その彼に対して赤熱させた拳を振りかぶった。


「(さらばだ、この時代の勇敢で無謀な機械戦士)」


 そのとき、「待ちやがれ!」と、上空から飛来する者が叫んだ。


 ウォリアーは拳を下ろし身を引くと、その場所を青い巨人が高速で通過する。地面をえぐりながらブレーキを掛け振り向いたのはガイファルドのレオンだ。


 続けてイカロスの後部格納庫から狙撃するノエル。ウォリアーが弾丸をひらりとかわしてレオンからも距離を取ったところでノエルも降下してレオンから少し離れた位置に並んで着地した。


 四方から機械虫と戦う爆発音など喧騒が聞こえてくる中で、この場だけは静かな威圧がぶつかり合う。


「(現れたな、バドル。オルガマーダどもの裏切りの象徴)」


 背中に背負う分割した槍を連結して構える。


「何言ってるかわからねぇが、お前が虫どもの親玉か? ピラミッドでの借りのついでにガンバトラーの仇も討たせてもらうぜ」


 前置きはそこそこにレオンは腰を落として構え、ノエルは前置き無しで右腕部のガトリングガンのトリガーを引いた。


 乱射される弾丸をウォリアーが避けた先で待ち受けるレオンが、まさに渾身と言える正拳突きで迎え撃つ。ウォリアーはその攻撃を左腕でガードしつつ反動を利用して後ろへ飛び下がった。


 その着地点に容赦ない弾丸の雨が降り注ぎ、ウォリアーを捉えたが、火花のような青白い光を放って弾丸は弾かれてしまう。


「あの光」


 フォースによって強化された弾丸ではあったが、セガロイドの持つフォースと似た特性の防御フィールドがそれを相殺しているのだった。


 だが牽制の役目は果たしており、レオンが格闘戦を仕掛ける。レオンが距離を取ると追撃するウォリアーに再び銃撃を浴びせた。


 これが作戦の第一段階だった。


 明らかに牽制する程度の攻撃を繰り返すガイファルドたちに苛立ちと違和感を感じたウォリアーは、動き回りながらもあるタイミングを計っていた。


 レオンの蹴りを腕で受け飛ばされたウォリアーはそのまま反転してノエルへと向かっていった。


 ノエルの射撃する同線にレオンが居るため一瞬の躊躇があることを利用したウォリアーの作戦だ。


 確かにノエルのガトリングは火を噴かなかったのだが、すでに発射されていたミサイルが直上から襲い爆炎を上げる。


「これは目くらまし」


 小声でつぶやくノエルは、ミサイル発射と同時にガトリングガンから持ち替えていたバスターライフルのトリガーを引くと、その砲塔からはバリアブルガンを連結させたフルバーストほどのエネルギーがウォリアーに向かって撃ち出された。


 それは燃え上がる爆炎へと飛び込んで吹き散らすのだが、そこにはウォリアーはすでに居ない。高エネルギー砲は遥か地平へと飛んでいってしまう。


 ミサイルに怯むことなく逆に目くらましとしてを利用してノエルの砲撃を回避していたウォリアー。だが回避する先にレオンが迫っていた。


 右腕にフォースを集めた高強度の爪を体の陰に隠し、無音の気勢を発しながら背後から振り下ろす。だがその爪は、捻った体の脇腹をかすめて大地を削りとるにとどまった。


 無理な態勢ながらレオンから距離を置いたウォリアーを膨大なエネルギーの本流が飲み込んだ。


「さっきのは七割」


 バスターライフルの最大出力によるフォースバーストがウォーリーアの力場を削っていく。寸前にレオンの攻撃によって削られた脇腹の守りは薄くなっており、砲撃のエネルギーが追い打ちをかけた。


 その箇所は幸運にもガンバトラーのハンマーナックルが強撃した場所でもあった。

 フォースバーストの高エネルギーにバスターライフル自体が耐えられず、三秒足らずで砲身の根元が爆発を起こした。そのタイミングでウォリアーは一瞬の間も置かずにノエルへ向かっていく。


 セガロイドの中でも特に接近戦を主軸としているウォリアー。迎撃が間に合わないノエルは振り下ろされた槍をヘビーアームズ・スタイルを切り離すことでギリギリ回避した。


 寸断されて崩れる兵装をもう一度振るった槍で蹴散らし、伏せるノエルへ狙いを定める。


「これも想定内」


 その両手にはすでにダガーが握られている。


「フォーリーフ・クローバー」


 突き出される槍よりも先にクロスさせたダガーの斬撃が傷ついた脇腹に炸裂。グリーンのフォースの閃光と衝撃が広がり、脇腹の鎧を模した装甲が大きく砕ける。


「(おのれ!)」


 その後ろからレオンが再びフォースの爪を構えると、振り向きざまに突きのばした槍が振り降ろされる前のレオンの右肩を貫く。


「ぐぅっ」


 緑の体液が飛び散り右手の光が消失したとき、今度は左手の爪が下から振り上げられて、ウォリアーの傷ついた脇腹を引き裂いた。


「(ぐぅおぉぉぉぉ)」


 脇腹から胸部にかけて削り取られたウォーリーアはそれとわかる苦しみの声を上げて仰向けに倒れた。


 ***********************************

 続きが気になる方、面白かったと思った方、フォロー・応援・感想など、どうぞよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る