Scene10 -6-
セガロイドの出現から三週間。一番損傷の大きかったレオンがメディカルプールでの修復が完了した。
そのあいだ、小型の機械虫は現れるもののE級(大型バス程度)以上はぱったりと現れなくなった。
その理由をガーディアンズの首脳陣は、ピラミッドがあった場所を別の空間に繋ぐにあたり、大量の機械虫を犠牲にした反動であろうと推測した。
もうひとつ考えられるのは敵性機械巨人セガロイドの解放という目的の達成だ。
とするなら、次の目的は何か? 警戒すべきはセガロイド自身による人類に対する直接攻撃だ。
博士の口から遠い昔にセガロイドとガイファルドが戦っていたことが語られた。
その話から、セガロイドがガイファルドを運用する人間に敵意を持っていたのだろうと容易に想像がつく。
であるならば、一万年前の続きで人間を攻撃してきてもおかしくはない。
これまでは明確に人間を標的とした攻撃をしてこなかった機械虫だったが、もしも、今後人類の殲滅が優先事項となった場合、完璧に防衛するのは不可能だろう。
各国は防衛力を高めて自国の戦力をメインに、近隣の同盟国と協力して防衛していくことが最良となるのだが……。
「だが、現在の人類の戦力ではそれは難しい。GOT並みの戦力がなければ自国だけで機械虫に太刀打はできないだろう。けど、その技術を独占していうのは我々だ」
柳生博士は司令室でアーロンと今後のプランを話し合っていた。
機械虫を圧倒できるガイファルドという戦力があるからこそ、GOTと共に世界各国に現れる機械虫の駆除ができたのだ。
機械獣とセガロイドというガイファルドと同等の敵が出現したとなっては、世界の防衛に戦力を割くことが難しくなる可能性が高い。
「ライゼインを失ったことも大きい。あのスピリットリアクターを搭載することができたなら、あんなことにはならなかったはずだ」
あんなこととはもちろんライゼインの敗北である。
ライゼインに搭載していたスピリットリアクターは博士による劣化コピー品であった。
機動重機のメイン動力炉はパラジウムリアクターである。
強大な電力を発生するとはいえ巨大な機動重機で戦闘をするにはやはり出力不足。
戦闘用として足りない電力を補助するのがスピリットリアクターで、操縦者やAIの発する精神波受けて戦闘用に足るエネルギーを生み出すのだが、搭載したAIの性格や精神状態によって稼働効率が変動する不安定な物でもある。
付け加えればコピー品ではその性能をほとんど発揮できずにいた。
ソールリアクターには出力もコストパフォーマンスも遠く及ばないのだが、本来のスピリットリアクターであれば今のガイファルドに近い高出力を出せるはずなのだ。
「リアクターの調整が間に合いさえすれば」
「博士はよくやってくれた。コピーとは言えあのリアクターがあったからこそGOTの重機部隊を製造することができた。その結果、多くの人を助けることができたのは間違いない」
スピリットリアクターは現代科学でギリギリ製造可能なレベルの超高度文明の動力炉。
製造可能とはいっても何十個作ったうちのひとつかふたつ稼働品があり、その稼働品の中でも精度は違う。
未知の素材は代用。精密過ぎる作りをそのままコピーできず、しかたなくバイパス接続することなどで起こる構造の複雑化、非効率な制御システムのなどによってオリジナルよりも無駄が多く出力が低い。だが、少しずつではあるがコピー品も精度が上がってきている。
「オリジナルスピリットリアクターの調整完了までもう一息だけど、それを扱える人と機体がない。ライト君の弟はまだ未熟だし、外部の人間を引き入れるのは情報統制の問題で可能な限り控えたい。それに既存の機動重機ではリアクターの生み出す出力を受け止めきれないだろう」
「機動重機も第二世代にバージョンアップする必要がある。そのための新合金の開発を急がなくてはなるまい。それと調整したリアクターのテストだ」
「それについてはガイファルドと合わせておもしろいプランがあるんだ」
博士のいたずらな笑みを見てアーロンは察した。
「アクトと何か企んでいるんだったな」
「彼のアイディアは子どもっぽくて面白い。無茶なアイディアをどうやって再現しようかと試行錯誤するのも楽しいよ」
「その無茶のしわ寄せがアクト自身に返えるのじゃないか?」
アーロンはそこまで察しており、今後のアクトを案じて苦笑いする。
「そこは彼の問題だからね。僕は造るまでが仕事だ」
セイバーの加入によって二体のガイファルドがスクランブルに備えていても、残った一体で実験をすることができる。
これによってガイファルド側を直接調整しなければ使えない兵装の開発速度が大幅にアップした。
現在はフレームや装甲の新合金の開発に力を注いでいる。
それさえ完成すれば、ガーディアンズおよびGOTの戦力は大幅に増強されるが、セガロイドを倒せるかどうかはまた別の話だ。
現場では剛田を中心にガイファルドを使って試作機のテストが実施され、実戦レベルへの昇華を目指し徹夜業務となっていた。
アクトと言えば現時点では合身による実験の必要はないので、自分の訓練とセイバーのバージョンアップの構想、それと機動重機の開発業務に勤しんでいる。
その合間を使ってこの春からリンが正式採用された対機械虫防衛機動重機 技術開発関連総合部門(通称・重機技総)へと赴
おもむ
いていた。
ちなみにリンはアクトと同じエレクトロニクス部門だった。
しかし、思いのほか有能であったことで彼女は正式採用と合わせて総合部門に異動が言い渡された。その方がアクトが現場に顔を出す際に顔を合わせる機会も増えるだろうという博士の裏工作が働いていたことは否定できない。
もちろん重機技総でも活躍できるという期待も込めての辞令だった。
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