Scene9 -5-
ピラミッドに到達したセイバーとノエルたちはピラミッドを覆う力場の異様さを実感する。凄まじく重い。昼間の空がどこか薄暗く感じるほどに。空気が液体化したかのように。
「何をしようとしているかはわからないけど、ともかくこいつらをぶっ壊していくしかない」
セイバー連結して地面から伸び上がる機械虫にガトリングガンで攻撃したが、共鳴作用によって増幅されたDゾーンと名付けられた力場によってその威力は減衰または弾丸の軌道は逸れてしまってほとんど効果がなかった。
「だめ、オプション・スタイルの火力では連結した虫のDゾーンには力不足」
ガイファルドたちの戦闘能力は機械虫に比べれば非常に高い。だが、エマの言う通りオプション・スタイルの性能は現代化学兵器よりは優れてはいても、機動重機たちが使う武装とそれほど大きくは変わらない。Dゾーンを展開する機械虫には有効ではないのだ。
「ならば一本ずつぶち折ってやるまでだ!」
「それならセイバーは右手から、私は左に。レオンは到着したらピラミッドに向かって手当たり次第に虫の柱を破壊」
セイバーはオプション・スタイルをパージして右手方向に跳び出した。
ガイファルドたちはその攻撃能力が一番発揮される肉弾戦による闘法で柱となった機械虫の破壊を開始する。ノエルはフォースによって強化した弾丸を全て撃ち尽くすとセイバー同様にオプション・アームズを捨てて腰のフォルダーからダガーを抜き放った。
ソールリアクターによって生み出されたフォースによってDゾーンに抵抗しながら柱を破壊していく。小型機械虫からなるその柱が相手だけあった秒速で蹴散らしていくのだが、破壊する数よりも集結し連結していく機械虫の数の方が圧倒的に多く、ピラミッドを覆うDゾーンは強まる一方だった。
追いついたレオンも指示に従いピラミッドに向かってその柱をへし折っていく。
「こりゃぁフォースを纏ってなかったらとてもこの場に居られないな」
ピラミッド周辺の柱の破壊をしていくセイバーとノエルにはわからなかったが、ピラミッドに向かって突き進むレオンは、近づくほどに濃密になるそのDゾーンによる変化を感じ取っていた。そして、ある地点に達したときその違和感の元を実感する。
『何かある』
その場所を境にレオンは押し戻されるように進めなくなった。そして、目の前に見えていたピラミッドが消え、その目には別の場所が映っていた。
「なんだ?!」
思わず叫んだレオンが見た物は薄暗い部屋の中で数本の柱に囲われる黒っぽい物体だった。レオンがそれを見たとき、イカロスでこの状況分析をおこなっていた博士も、その変化に気が付いていた。
「空間の歪み。機械虫たちが発するDゾーンがピラミッドの周りの空間に干渉して歪みを起こしている」
その歪みの境にいるレオンは、その空間の境を相手に全力で相撲を取っていた。
「うおおおおおおおお!」
フォースフィールドを纏って力ずくでその空間へと突入していくレオン。徐々に沈み込む体はついにその境を貫いた。
「レオンの反応がロストしました!」
「なに?!」
博士や剛田をはじめ、ブリッジに居る全ての者が硬直する。反応のロストは当然ガイファルドの死の意味も含まれるからだ。戦慄の事態にスクリーンに目を向けた一同の目の前で、信じられない現象が起こっていた。
「ピラミッドが……」
レオンと同じように、上空からピラミッドを観察していたイカロスからはピラミッドのあった場所が薄暗く歪んだで見えた。
「どうやら空間がピラミッドと違う場所とリンクしているようだ」
「レオン健在です! 断続的ですがレオンの反応があります」
不安定な空間の先にレオン居ることを確認した一同は胸を撫でおろす。
「こりゃいったどうなってやがる。機械虫どもの仕業ってことか?! 博士」
剛田が博士の顔を覗き込むと、何かを理解したようにハッと表情が変わる。
「おそらく……、機械虫の連結は戦闘用ではなくこのための機構だったのだろう。世界中に現れていた小型の機械虫たちは、この場所を探し出すために活動していたのかもしれん」
「ここにはいったい何があるってんだ?」
「空間の歪みのによる影響で内部の状況はまったくわかりません」
剛田の問いにオペレーターが不安気に答えると、ノエルからの状況の確認を求める通信があった。わかる範囲での説明をおこなうと、ノエルはレオンの救出に行くと進言する。
「レオンと共に君までいなくなってしまっては困る。セイバーだけを残して行くわけにはいかないだろ?」
そう言われてわずかに先走った思考を戻してレオンの自力帰還を願うノエル。その頃セイバーは状況の変化に気が付かないほど集中して柱を破壊し続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます