Scene9 -6-
「おい、博士聞こえるか? ノエル、セイバー」
後先を考えず突入した場所は外の喧騒が嘘のように静かな場所だった。とりあえず外と連絡を取ろうと通信を試みるが一向に返答はない。
「どうなってる、ピラミッドはどこだ?」
空間の歪みの中へ飛び込んだレオンは外から見たように薄暗い部屋の中に居た。振り向くとゆらゆらと外の様子が薄っすらと壁に映っている。
「ピラミッドの中ってわけではないんだろうな」
そう呟いて部屋の中心部と思われる場所に見える物体に向かって進んでいく。歩きながら上を見ればやはり薄っすらとだがゆらめく空間の先にイカロスらしき飛行物体が飛んでいるのが見て取れた。この部屋はかなりの広さでピラミッドと同じくらいあるようだ。
暗がりに見えていた柱が八本あると確認できたとき、その中心にある黒っぽい物体がうずくまる人のようであると視認し、更に近づきその柱まで来る頃、その人と思しき者がレオンと同じほどの巨人だと認識する。
「巨人、ガイファルドなのか?」
うずくまった姿勢のその巨人は、石造とか銅像のようにこの状態で造形され、レオンたちのように動ける物には見えない。
柱の隙間を通ろうとした手がバシンと火花のように光を弾けさせ、驚いたレオンは後ろにたたらを踏んだ。
「何かに守られている。となると機械虫たちの目的はこいつか。過去の仇敵であるこのガイファルドを倒すためにここに向かっているなんてことだったりするのかも」
ルークがそんな想像をしたとき、部屋の四方と天井が柱と同じように閃光をともなって弾けた。周囲を見回すとその光は幾度も音を立てて繰り返し、空間の境がこちらに迫ってきているように見えた。その現象は床にも現れ、ついには柱にも伝わりはじめる。
明らかに芳しくない状況だと判断したレオンは素早くその場から距離を置いた。
さっきまでの静けさが嘘のように多数の落雷を思わせる轟きと閃光が薄暗い空間で激しく起こり、レオンはその状況におののいて、背後で柱が崩れたことに気が付かなかった。
「こりゃ脱出した方が良さそうだ」
突入してきたときと同じように全力でフォースフィールドを展開すると、背後で何かが動いたことに気が付いて視線を移す。
「う、動くのか……?」
石か金属のオブジェとさえ思えた巨人はガキガキと音を立てながら立ち上がり始める。薄皮が剥離するように粉々になりながら体表から剥がれ落ち、さっきまでのひと塊りのオブジェではなく、一体の巨人であるとわかる、ある意味で生きた物質といったものを感じさせた。
レオンたちよりも少しだけガタイがよく、デコボコの少ないシンプルな鎧を着込んだような巨人の出で立ちは歴戦の者だと思わせる雰囲気を放っていた。
立ち上がった巨人は静かに顔を上げると目の前に立つレオンと目を合わせる。
「よ、よう」
なんとなくそう挨拶をしたレオンはひと際大きな怒涛の轟音でこの空間の今の状況を思い出し、目が覚めたばかりの巨人に脱出を促した。
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