Scene9 -3-
多数のミサイル群が広範囲に渡って着弾して機械虫を吹き飛ばし爆炎を上げて燃え上がった。大量の砂が空に舞い上がり、それに混ざって砕ける金属片が陽光に反射して再び乾いた砂へ降り戻る。数秒後にはその金属と砂の雨を抜けて、ミサイルの生み出した高熱や衝撃を逃れた、もしくは耐えた者たちが飛び出してくる。
セイバーは小型機械虫に対してガトリングガンを流し撃ちし、次々に撃ち砕いていった。
「おらぁぁぁぁ!」
最初の一斉掃射によってスイッチの入ったセイバーは背面にマウントされ両手に装備したガトリングアームを振り回すように広範囲に撃ちまくった。
「無駄撃ちに気を付けて」
この状況の中でも冷静にセイバーをたしなめるノエルは、バリアブルガンのサブマシンガンモードを同じように撃っているが、その命中精度はセイバーよりも遥かに高い。おまけにフォースコーティング弾のため、機械虫の装甲をズタズタに削って破壊していく。
「それとレオンに当てないように」
ミサイルが着弾した付近ではレオンが抜け出してきたB級らしき大型機械虫と戦っていた。
「B級なら一体を一分以内。次が現れたら一分の足止めしてそれをレオンが倒す」
荒れ狂う弾丸や爆音の中でノエルが無謀なことを言っている声がセイバーに届いた。
『無茶苦茶言うなぁ』
レオンの周りにいる小型機械虫を撃退しながら頭の中で言い返したところでレオンが一体を破壊した。
「おっしゃ、次!」
腕を振り身をひるがえして虫の軍勢に向き直る。
まだ空中に砂が舞い上がっている中からA級と思われる機械虫がレオンに向かって来た。
「手っ取り早くて助かるぜ」
砂地に足をめり込ませながら突進を受け止め、体を捻って横に投げ飛ばす。そのままマウントを取って一方的に殴りつける。
そのレオンに対してさらにもう一体が詰め寄って来た。
レオンの頭の上を極太のエネルギー流が通過して迫る機械虫の上半身の大半を吹き飛ばす。
「Thank you!」
仲間の援護を信頼しつつそんまま攻撃を続けて機能停止に追い込んだ。
「ガイファルドへ。ノエルの11時方向から三体の上級コア反応が来ます」
イカロスの美紀から第二派となる機械虫群の情報が伝えられ、それぞれが攻撃に備える。
砂を巻き上げるて迫る大群の向こうでは世界軍事同盟軍の攻撃であろう音や爆発が見える。その攻撃を抜けた軍勢は第一波の数倍の規模だった。
心と体を身構えた三人。
「一体だって行かせない」
セイバーはガトリングアームを持ち上げ、その砲身がゆっくりと回転し始める。
数百発の弾丸を乱射した砲身はまだ薄っすらと高温によって赤熱している。
ドッキングさせていたバリアブルガンのジョイントを外して二丁に構えなおしたノエルが体を屈めた。
オレンジ色の光が通り過ぎるとセイバーの横で大量の砂が爆発し、超重量のヘビーアームズを装着したセイバーの体をグラつかせた。
小型機械虫の群れから上級機械虫がエネルギー光弾を吐き出したのだった。
「レオンお願い」
「I got this」
砂地の上を駆け出したレオンは群れの中に飛び込んでいった。小型機械虫をかき分けるようにA級機械虫に突っ込んでいく。
「止まりやがれ!」
ショルダーチャージで進行を止め、大型機械虫をもボコ殴った打撃で押し返していく。一撃ごとに残骸が飛び散ってその姿がどんどん変わっていった。
「レオン、後ろから機械虫が接近しています」
上空から索敵しているイカロスの指示を受け、振り向きざまの後ろ横蹴りで迎え撃つ。
機械虫の巨体が少し浮き上げてその突進を止めた。だが、機械虫の動きが少しおかしいことに美紀とノエルが気がつき、ノエルはサブマシンガンモードから再びライフルモードへと変更する。
「レオンっ、三時方向から二体接近しています」
「あぁ?!」
蹴り終ったレオンはすぐに右手に視線を移すと、今までの銀色の装甲色より少し黒っぽいアリ型二体がレオンを標的に向かってくるのが見えた。
レオン横を抜けていく機械虫の群れの中にも上級が数体混じっており、その個体はセイバーとノエルを標的としていた。
「セイバー。正面から来る」
防衛ラインを抜けて行こうとする小型機械虫を打ち壊しているセイバーに注意を促したノエルは、ライフルモードのセーフティーを一段解除してクォーターショットへ変更。連射力を落として弾丸の威力を上げる。
向かってくる機械虫を目視したセイバーも対象に向かってガトリングアームの照準を付けた。
ふたりが同時に放った攻撃は命中するのだが、その向こうからも続けてB級以上の個体が現れる。
「博士これはっ!?」
1キロメートル以内の近距離しか探知できない機械虫のコア探知レーダーには13体がガイファルドに向かってきていることが確認され、その事態を彼らに告げる。
「おい、どうなってやがる」
四体を相手に立ち回っているレオンがその現状報告に対してイカロスに問い質た。
セイバーもホバー走行しながら三体の機械虫と撃ち合っていた。
「こいつら俺たちを狙って攻撃してくるぞ」
そうこうしているあいだにも小型の機械虫は軍行していく。
「見誤っていたのか。小型機械虫が上級たちを護衛していたのではなくてその反対。そのA級たちが小型の群れを護衛していたのかもしれない」
その考え方であれば走り抜けていく機械虫たちの行動とのつじつまが合う。目的地に向かっているのは大量に押し寄せる小型の方だと。
執拗にガイファルドに絡んでくる上級たちによってガイファルドの迎撃は止まり、小型の虫たちは津波のように押し悠々と走り抜けていく。足止めを食らっているのはやはりガイファルドたちだ。
「やられた、ぜっ!」
その思いを込めた光る手が二体の機械虫をまとめて貫いた。
「しかたない。セイバーに小型を追わせよう。八島君」
「はい。セイバーへ、あなたは機械虫を追ってください。追加の弾薬を投下します。
「了解」
『嫌な感じだな』
セイバーは1割を切った弾薬を撃ちながら何かやっかりなことが起こるのではないかと不安に感じていた。
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