Scene9 -2-
三人の共命者の搭乗が確認されると、イカロスはカタパルトから射出されて東ゲートから勢いよく飛び出して戦場へ向かった。
ブリーフィングルームへ行くと博士と剛田が待っていたのだが、腕を組みながら難しそうな顔で唸っている。
「共命者三名揃いました」
エマの報告を受けて片手を上げてあいさつする剛田。それでも硬い表情を崩さないふたりにルークは疑問を投げかける。
「まずはアーロン司令から状況説明を聞いてくれ」
共命者の乗艦を知らせるとスクリーンにアーロン司令が映し出された。
「機械虫はE国の砂漠地帯周辺に出現した。わかっている情報によるとその総数は現在四百体を超えている。おおまかではあるがB級だけでも三十数体でA級も十体程度目視されたらしい」
「ずいぶんと大規模な部隊で現れたじゃねぇか」
ルークの言う通りこれまでにない規模の大群であり高戦力だった。世界各地に現れて目的不明のまま活動していた機械虫がエネルギーの回収といった目的で行動したのが一ヶ月前。今回の行動も目的があると考えられる。
「この敵戦力は集結している最大規模の一群で、他にもここに合流しようとしている機械虫たちが多数確認された。それらも合わせると大小合わせて千に達するだろうと予想されている」
その情報はガイファルドという巨人を操る三人にも大きな衝撃を与えた。
「やっぱり莫大なエネルギーを得たことで機械虫を大量生産したのかもしれない」
S国の研究施設をはじめ、その後も別の施設からエネルギーを接収した機械虫。ため込んだエネルギーはこの大侵攻のための物であったのだろうと考えれる。
「対機械虫世界軍事同盟も順次集結し応戦の準備をしている。各地で小さな戦いは起こっているが、戦闘よりも合流を優先している傾向が見受けられる。そして陣形が上級機械虫を取り巻くように小型機械虫が付き添っているように見えなくもない」
全ての機械虫を投入してきたとさえ思える大群を相手には、通常兵器以上の戦闘力は必須である。各国とも極秘裏に兵器開発に力を注いでいるだろうことは言うまでもない。ガーディアンズとしてもそれを今回投入してくることを密かに願っていた。
「ノエルはシューティング・スタイルのB装備、セイバーはヘビーアームズ・スタイル。レオンもガン・スタイルで出撃して同盟軍に協力してもらう」
これは明らかに多数を相手にするための兵装選択だ。
「小型でもこれだけ集まるとやっかいだな」
「上級を守ってどこかへ連れていくということ?」
「上級機械虫を目的地に到達させるために、これだけの軍勢を送り込んできたとするならば、我々はA級とB級の殲滅に専念すべきかもしれん」
これらの考察が正しければ上位機械虫を優先していく必要がある。
「上級でなければできないこと。となると巨大な物の破壊とかかな?」
ふと頭に浮かんだことを口にしたアクトに博士は指をさした。
「だとすると」
E国で巨大な物と言えばピラミッドしかない。おそらく奴らの目標はピラミッドなのだろうと予想して、博士はPCのキーボードを叩いてスクリーンに地図を出す。そこにはピラミッドの分布図と現在進行してきている機械虫の現在地が示されていた。
「進行方向や集結予測地点から考えるとこの辺りになる。ふむ、思った場所とは違うピラミッドだな」
E国に点在するピラミッドの中でも最大の物を予想していた博士は首を傾げた。現在の侵攻経路からの予測では小規模と言わざるを得ないピラミッドだったが、そこが目的地である確率は88・7%を示している。
「ではレオンを筆頭にA級を優先的に狙う。セイバーがその支援。ノエルは邪魔になる小型機械虫を排除だ」
あと20分もすれば集結した機械虫軍と包囲を縮めてきた同盟軍が遭遇して本格的な戦闘が始まる。
ガーディアンズはその二十分後に到着を予定しており、シミュレーションの結果では、上級機械虫のピラミッド到達を阻止できる率はかなり高かかった。あとは1000匹近い小型機械虫をどう始末するかだ。
大規模な機械虫軍の侵攻先へ先回りするガーディアンズは、先行していたGOTの機動重機輸送機を追い越して現地へと到着した。
ガイファルドたちはそれぞれのオプション・スタイルを装備して発進準備を完了する。
予測通りピラミッドから20キロメートル地点でほぼ終結が完了した機械虫軍に対して、包囲網を狭めつつ攻撃を開始した同盟軍だったのだが、索敵していた美紀が慌てた声で予想外の状況を報告した。
なんと機械虫たちは応戦もせずにそのまま走り抜けているという。どんなに攻撃されてもろくに反撃せず、ただひたすら目的地を目指す機械虫軍に対し、乱戦の地に降り立つ予定だったガイファルドたちはピラミッドの5キロメートル前でその大群を迎え撃つことになった。
「やはり目的地はピラミッド。それも他には目もくれずにか」
多少衝突やその足に踏みつぶされるなどの被害はあるが、同盟軍は地上部隊と空戦部隊と連携して一方的に攻撃をしていた。それでも八割以上はそのまま抜けて行ってしまう。
「なんだよこの状況は、もしかして狙いは俺たちか?」
「違う、と思う。私たちがまだ戦場に到達する前からその傾向はあった」
そう言ってノエルはシューティング・スタイルの主力武器であるスナイパーライフルを構える。同盟軍の包囲網を抜けてきた機械虫たちが射程距離に入ったからだ。
「さて、まずはA級どもの気を引かないとな。セイバー、ノエルはガンガン撃ってくれ。こっちに向かってきた奴を片っ端から片付ける。カウントいくぜ! スリー、ツー、ワン」
セイバーの心の準備が済まないうちにレオンはカウントを開始し、ノエルは静かにトリガーを引いてスナイパーライフルが火を噴いた。
改良をされたライフルは辺りに衝撃波を発しつつ弾丸を撃ち出した。弾丸は空気の壁を貫いて重力にも抵抗しながら一秒後には機械虫に命中し、体の三分の一を吹き飛ばす。それが彼らの開戦の合図となる。
セイバーは慌てながらも照準を定め、ノエルに続いて射撃を開始した。
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