第548話 次の段階へ必要な物

和やかな夕食の後のお別れの時までの短い食後の休息時間に別れの時を惜しむ昔の某新幹線のCMにあった遠距離恋愛の恋人達の様な何とも言えない甘ったるい空気を放つ我が子ケンタとモモちゃんの見ちゃ居られない様な物を見せられゲッソリする俺と皇帝君。


この一瞬だけは、「同志よ!」とガッチリ肩を組める感じのオッサン2人である。


これまで、敢えて口に出して突っ込まなかった訳だが、そんな我が子の状態を見てどちらからともなく

「なあ、皇帝君、例の話、当の本人である2人の状況を見るに進めても良いのかも知れないな・・・。」と俺が呟くと、少し複雑そうな表情で頷いていた。


となると、俺の尤も弱い分野である。

大陸は違えど、立場ある国家間の常識と言うか儀礼的なマナーを弁えねばならず、そうしないと逆にそれが他でも無いモモちゃんを軽んじた様になってはいけないのだ。


ようは知らんけど、こう言う国家間の縁談話の場合って、男側から持って行くべきだよな?


基本お嫁さんを頂く感じになるんだし。 そう言えばアッシュリー君もお願いしに来てたよな。



そうか、モモちゃんや帝国へ申し入れをすべきは俺か・・・なんか、そう考えると若干気が重くなってしまうが、可愛い子供の為である。


チラ見せ処では無く、一肌でも二肌でも脱ぎ脱ぎしようじゃないか!


と言う事で皇帝君一家が去って行った後、アケミさんを交えてケンタとマジ話をする事にしたのであった。


子供らを風呂に入れた後、3人で静かに話せる部屋に移動して、コーヒーを飲みながら話を始める。


「えっと、今日のケンタ達を見ていて思ったんだが、そろそろお前もモモちゃんとの方向を決めるべきと見えたんでね。 このまま、中途半端にほうちするのは、モモちゃんにとって良くないし、彼女を軽んじているって事にもなると俺は思う。」とケンタの目を見ながら伝えると、

「そうね、私が見ても、ケンタもモモちゃんも、お互い好き同志って見えるわね。こう言う時こそ、男の子のあなたがシッカリしないと駄目よ?」と俺の言葉に続けるアケミさん。

あれれ、おかしいなぁ~?何となく、昔の俺に対するダメ出しの様に思えて、若干胸が痛いぞ・・・。


俺が知らない内にダメージを受けていると、ケンタがユックリと話始めた。

「お父さん、お母さん、お願いがあります。 今すぐに結婚とかはまだお互いに若すぎる気がするけど、でもモモちゃんとこの先、一緒になりたいと思って居ます。」と噛み締める様に俺とアケミさんを見つめながらシッカリと自分の気持ちを伝えてくるケンタ。


「そうか。つまり、将来の結婚を見据えて・・・つまりモモちゃんと婚約したいと言う事で良いかな? そうであれば、早めに皇帝君の所へ申し入れを行いたいと思うし。」と念を押す俺の問いに大きく頷き、「お願いします。」と言っていた。


「そうか。判った。アケミさんもそれで良いね?」とアケミさんにも尋ねると、ニッコリ微笑んで頷いていた。


これで決まったな・・・さあ、これからである。


早々にコナンさんも交えて作戦会議と言うか、儀礼的な手順とかを踏まえて・・・そうか、この場合、帝国側のマナーに併せた方がモモちゃんに失礼にならないか?と、明日皇帝君に尋ねてみようと心に決めるのであった。



翌日、コナンさんに皇帝君の所のモモちゃんとケンタの婚約話を進める事にしたと報告し、手順や儀礼的な物に関する事の情報収集や諸々の準備等をお願いしておいた。


ケンタが産まれた頃から知っているコナンさんだけに大喜びして、何度もお祝いを言われたのだが、まだこっちサイドで心を固めたばかりであって、完全に先方が了承してくれた訳ではないので、大喜びしすぎは気が早すぎる。


と、思っていたが、1時間もしない内に、王宮のスタッフ全員に知れ渡っており、行く方々で、皆から口々にお祝いの言葉を言われて、その度に頷きつつも「まだ先方に打診する前段階なので先走って大騒ぎしないように!」と釘を刺して廻る事に。


これは、逆に先方以前に国内(王宮内)がヤバイと感じ、慌てて皇帝君に連絡を入れるのであった。


皇帝君にモモちゃんとの婚約をお願いしたと言う事を伝えると、

「そうか、兄弟!ありがとう!! 本当に助かるよ! これでやっとモモからの圧力が無くなるよ。」とホッとした声を出していた。


ん?って事は結構皇帝君攻められてたのか? モモちゃん凄いな。 ケンタ大丈夫か?と少し奥方様のあの『圧』を思い出して、もしや早まってないか?と言う疑念が一瞬頭を過ぎるが、しかし本人の望んだ相手だし。とその考えを封印したのであった。


皇帝君に婚約や結納等に関する帝国の風習等を聞いた所、婚約には婚約指輪等の授受と婚約発表パーティーを帝国国内向けにやるぐらいだそうで。


そうなると、帝国側と我が国側との2回、婚約発表パーティーが必要だろうと。

「わぁ~お互い2回はキツイな!」と俺が言うと、「まあ、だが、俺がしてやれるのはこれと結婚式の2回だけだからな・・・」と若干声を詰まらせていた。

確かにな。それはそうだな。と思って「何かすまないな、大事に育てた愛娘を取る様で。」と詫びると、


「まあ、それはうちのアッシュリーも貰った訳だからお互い様だな・・・。」と呟いていたのだった。


婚約発表の時期に関してだが、皇帝君曰く、丁度良いのでスカイリー君とカテリーナ嬢の結婚披露パーティーで発表しちゃえと言う。


下手すると主役を蔑ろにしかねない気がするんだが、帝国の皇室の未婚最後の1人となってしまうと、スカイリー君結婚後に以前にも増して縁談攻勢が来るのは確実でタダでさえ現状も厳しい状態なのだとか。


好都合だと言う。


まあ、それは俺としても良く判る事なので、同意して、こちらでの婚約発表パーティーに関してはまた別途話し合うと言う事になったのだった。


一応、アケミさんとケンタには、「内定貰ったぞ!」と伝えたら意味が通じなかったので、皇帝君はOKを出したよ。と言い直して理解で、ケンタが飛び上がって大喜びして居たのだって。


「と言うか、ケンタ、お前モモちゃんに気持ちって正式に伝えたんだよな? まさか、まだ先方に気持ち聞いてなかったりしないか? 皇帝君はOK出しても、モモちゃんがOKしなかったらアウトだからな!」と俺が言うと急に焦りだした。


「こういう事はちゃんと相手に会って面と向かって目を見て言わないと駄目だからな!」と俺が忠告すると、アケミさんが、ウンウンと何度も横で頷いて居た。


「そうよ、こう言うのはちゃんとして置かないと女の子はそう言うの大事にするから、結婚後も先々尾を引く物よ!」とアケミさんがボソッと呟いていた・・・。


あれ?俺もしかして、怒られてる??? 何か、雲行きが怪しいでござる・・・大丈夫だったよな?と背中に冷や汗を滲ませつつ、記憶のページを遡る俺だった。


何か、思わぬ所で被弾した感じでグッタリしている俺を余所にケンタはイソイソとお出かけ準備をして、帝国へと飛び立って行ったのだった。



確かに俺は恋愛に疎いし、気の効いた台詞や行動が出来る奴じゃないが、まさか、熟年離婚とか無いよな? 大丈夫だよな? こ、これはアケミさんに尋ねても良い事なんだろうか?


知らぬ内に虎の尾を踏む処か引っ張り出す事にもなりかねない。


余計な事をしない方が吉か?と自問自答する俺だった

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