第549話 モモちゃんの実力は?

昼食までに戻って来なかったケンタだが、どうやら良い返事を貰ったらしいケンタは、歩いているのか浮いているのか、夕食直前に満面の笑みを携えてフワフワとした足取りで戻って来た。


まあ結果を聞かなくても、様子を見ればイエスの返事を貰った事は判るのだが、親としては一応明確な報告を貰わねばならない。


「で、ケンタ、どうだったんだ? 大体見れば判るけど。」と俺がふわついたケンタに声を掛けると、「ああ、お父さん、やりました!イエスを無事に貰ってきました。あと、カクタス皇帝陛下とお妃様にも取り急ぎ、お願いして了承して頂きました。」と胸を張って報告して来た。


「そうか、良かったな。この先の儀礼的な事・・・国としての正式な申し入れと婚約の諸々は俺達親としての役目だから、そこは任せておけ。」と俺が言うと「よろしくお願い致します。」と言ってビシッと頭を下げたのだった。


何か今朝より、息子が育って帰って来た件について・・・思わず驚きを禁じ得ない。



翌日からのケンタは凄かった。


元々勤勉で努力家だったのだが、前世の自分の同年齢の頃と比較にもならない程にシッカリとしていると言うか、本当に一人前の大人の男性と変わらない感じだ。


一家の大黒柱としての自覚というか責任感か? 父親として、嬉しい様な寂しい様な。


まあ、そんなに焦って無理をする必要はないのだけどな。


まだ俺も現役で残っているのだし、徐々にでも良いのだがな。



そんな訳で、当人同士の了解も取れたので、俺達、親の出番となって、ケンタにはモモちゃんへの婚約指輪を用意させ、早々に正式な婚約のご挨拶に行ってきました。


綺麗に着飾ったモモちゃんがパーッと葉の咲いた様な笑顔で俺達を出迎えてくれて、応接室へと案内された。

コナンさんが結納の品となる贈り物を帝国の首相へと引き渡して行き、別室でそのまま日程等の細かな打ち合わせに突入してくれる。


俺とアケミさんは皇帝君達に挨拶しつつ、


「これからも宜しく!」と堅い握手をする。


意外にも、皇帝君以上に奥方様が喜んでいて、その理由がアケミさんとよりお近づきになれると言う事の様である。

先日の終の棲家の内見の事と言い、アケミさんブランドのファンと言うより、アケミさんのファンに近い心境なのだろうか?

まあ、親戚となる訳なので、好感を持って貰えるのは幸いである。


対外的な発表はスカイリー君達の結婚披露パーティーの場となるのでそれまではB大陸内では現状通りとなるが、これで漸く両国共にホッと一息である。


尤も我が国内に於いては問題無いので一足先に公表する予定だったりするのだがな。


さて、ケンタの伴侶の選定問題が片付いたら、後は結婚後何処に住むのか? という件を検討すべきだろうな。


もし、別途家を持って住むとなれば、建てたり、土地を確保したりすべきだろうし、ある程度早めに決めて貰わないと多少時間掛かるだろうし。



婚約の申し入れも無事に終わって、皇帝君達にお昼をご馳走になってから、俺とアケミさんは王宮へと戻って来たのだった。


尚、ケンタはモモちゃんと過ごす様(デート)で、居残り。 コナンさんは諸々の打ち合わせ(仕事)で居残りである。



「ケンタ達は、結婚後、何処に住むんだろうな?」と素朴な疑問をアケミさんに投げ掛けてみた。


「どうでしょうね?モモちゃん次第だと思いますけど、生まれ持ってのお姫様ですからね。家事とか出来るのかも判らないですね。」とアケミさん。


そうか、家事か!それは確かに重要な問題である。


幾ら2人っきりが良いとか言っても家事能力も料理も出来ないと、結局メイドやスタッフが必要になる訳で、事実上不可能になってしまうのだ。


俺もアケミさんも庶民の出だから、別に当然の様に家事もするし、料理もするが、相手はお姫様だったなぁ~。


それとなく皇帝君に帝国の姫君の生活能力を聞いて見た方が良さそうだな・・・。



特に料理って日々の生活に於いて、重要なポイントだし、『飯マズ』は生きる気力にまで影響しそうだからな。


そう考えると、俺は本当にラッキーな男である。 アケミさんの料理はどれも俺の胃袋にドンピシャだからな。


「アケミさん、何時もありがとうね!俺って本当にアケミさんと結婚出来て幸せだよ。」と思わずお礼を言葉にすると、


「急に改まって・・・でも私もしあわせですよ、ケンジさん。」と照れながら返してくれたのだった。


王宮に戻って、子供らと遊んで貰って楽しんだ後、


それとなく皇帝君に連絡を入れて、モモちゃんの生活力?女子力?を探ってみた。


「おう、兄弟、さっき振り。どうした?」と問題が一つ片付いたと軽い調子の皇帝君。


「うん、いや、大した事では無いのだけどさ。ちょっと気になったんで、皇帝君に聞いて置いた方が良いかと思ってさ。」と切り出す俺。


「ん?どうした?遠慮無く聞いてくれよ。」と皇帝君。


「えっと、ぶっちゃけたところでさ、モモちゃんの生活力って言うか、自活力?ってどの程度なの? ほら帝国のお姫様じゃん? うちの様な庶民に毛の生えた似非王室とは訳が違うでしょ。

だとすると、例えば、お着替えとか、誰か付き人とか侍女とかがやってもおかしくは無いし、家の子は大抵全部自分で出来る様に育ててるから、そこらは日本の一般家庭と同じレベルだと思うんだよ。」と俺が言うと、

「あーー、それな! すまんな兄弟。流石に元々の家の習慣通りだと、兄弟のご指摘通りだったんだわ。一応これでも元日本人じゃん?だから、長男産まれた時、嫁と3週間程冷戦してな、何とか俺の教育方針飲ませたんだわ。」と誇らし気な皇帝君。

自慢が長かったので割愛して纏めると、長男次男が3歳を過ぎてからは自分でお着替え、身の回りの事、簡単な片付け等、極力自分でやらせ、どう言う状況になっても生き残れる様にとして来たらしい。

で、肝心のモモちゃんだが、やはり初めての女児が生まれた事で舞い上がった奥方様が自分がそうであった様に、『蝶よ花よ』と育てそうになるのを戦って、従来通り上の子達と同じ路線に戻したらしい。

よって、モモ姫君は、料理は微妙だけど、自分の事ぐらいは出来る筈と言っていた。

それに、面白い事に我が家の子供達との交流を通じて、お泊まり会等があって、自分の面倒は自分で・・・と言う事の大事さを兄弟全員が痛感したらしい。


更には俺が招いたイベントでは、国王である俺が自らチャッチャと料理し、振る舞うシーンや、俺がアケミさんの手料理を褒め幸せそうに食べるシーンに感化され、それまで消極的だった料理の勉強もする様になったと。


付け加えると、ケンタを意識する様になって、『そう言う家庭で育ったケンタ』を物にする為にどうすべきかを考えたモモちゃん、兄アッシュリーの胃袋の掴まれ具合を見て、「これだ!」とミナールに師事して日々料理特訓中と言っていた。


「その点、ミナールちゃんはすげ~よな! 本当に何処にだしても恥ずかしくないレベルで。」とミナールの事をベタ褒めしていた。


うーーん、これなら2人暮らしもそこそこ大丈夫なんだろうか?



最悪料理ぐらいは、補助でもなんとでもなるけど、やっぱり、男にとって愛妻料理は格別なんだよね。



恋は盲目とは言え、最初は小さくともちょっとした不満の積み重ねは確実に色々な所に負の影響を及ぼす。


俺はケンタにそう言う細かい重要事項を教えて居なかったので、今更ではあるが、心配になっていたのだ。


どうやら、結婚後のケンタの激痩せは回避出来そうなので、少しホッとするのであった。


一応、言い訳させて貰うと、何も結婚したから、家事全般を女性がすべきとは思っては居ないし、料理の件も然りで、同じチームの一員としてお互いに補いあって暮らして行く事が重要と子供達には教えて育てたつもりである。


なので、美味しいかどうかは問わなければ、多少の料理ぐらいは我が家の男性陣は出来るのである。


俺の知る限りだと、エリックは意外にマメな手の込んだ料理を作ったりする。


ケンタも小さい頃から俺と一緒んび厨房に出入りしていたし、魔物を狩りに行ったりする機会も多かったので、エリック程では無いが、キャンプ飯の様なジャンルは得意である。

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