第547話 夏の終わりに
プライベートリゾート島から戻って日常の毎日になるのだが、今回のプライベートリゾート島を王宮のスタッフへ福利厚生で貸し出し開始したら、もの凄い人気でアッと言う間に8月末まで予約でギッシリとなった。
あまりにもプライベートリゾート島が人気過ぎて、スタッフの為の降伏をもたらす主旨から騒動の種になりつあって、急遽キープしていた他の無人島をプライベートリゾートB島とプライベートリゾートC島の2つ増やす事にした。
結果として、最初のプライベートリゾートA島と3島に増えた事で、予約を希望したほぼ全員が泣く事なく利用出来る事となり王宮の雰囲気が通常に戻ったのであった。
前世で、『夏の恋は続かない』的な通説を聞いた気がするが・・・
その後秋になると、何故か不思議と結婚するカップルが急増したのだが、悪い事ではないので結婚するカップル全員を祝福してお祝いを渡す事になるのだが、それはまだ数ヶ月以上先の話したのである・・・。
さて、8月も終盤に入る頃になると、そろそろモモちゃんを呼ぶ口実作りが面倒になって来てしまい、もっと気軽に若い者だけで何とかならないか?と思ってそこら辺をケンタに打診してみた。
「で、ケンタ。こうして2人だけで話をするのはちょっと前振りだけど、察しているかもしれないが、今回も同じ系統の話題だ。」と切り出した。
俺はケンタにそれとなく2人の接点を着くってやる為に無理矢理に近いイベントを作って居た事を告白し、「で、そろそろネタ切れと言うか、もし会いたい気持ちがあるんなら自分達で約束して会う方が良いし、そこまでの気持ちが無いなら切り替えた方がお互いの為だと思うんだよね。」と伝えた。
神妙な表情で聞いていたケンタはなる程と言う感じで深く頷いて、「確かにお父さんの仰る通りですね。こう言う事で何時までも親に頼りっきりってのもおかしな話ですよね。」と応えて大きく深呼吸した後、意を決した様に
「これからは、自分で誘いの連絡入れてみます。それで断られる様なら、そう言う事なんでしょうし、切り替えます。」と言っていた。
って事はケンタ自身もモモちゃんが好きって事で間違いないだろうな。
「うん、判った。一応、一国の姫君だから、警備無しってのは拙いし、一応、シャドーズに警護して貰う事になるから、約束とか取り付けたらサスケさんに報告入れておいてな。 あ!それと、何か気持ちが固まったりしたら、俺に教えてくれ。」と言って第二回男同士の秘密会議は終了したのであった。
これで、苦しい言い訳の様な名目作りに毎回悩む必要が無くなったな。少し気楽になった。
だって、2回の人生を経ても尚自分の恋愛さえ怪しいこの俺が毎回お膳立てって変だと思うし、そろそろ自分の気持ちに気付いて自発的に動くべきじゃない? 男としては!?
それにそろそろ葡萄の収穫シーズンで、昨年以上に収穫増えるし大変なのである。俺と言うより、ゴーレム達がだけど。
一応新しい酒樽を増産すべく、樽職人にも樽木用の原木を沢山渡してあるが、それとは別にトレント樽もドワーフの親方が必死で増産している。
つまりこれからそれらにガッツリ葡萄の絞り汁を詰め込まなきゃいけないのである。
最初こそ、ちょっと楽しかったんだけど、言う程酒が好きな訳じゃ無く、自分が飲むのではなく(他の人から)飲まれるお酒ばかりで、料理やスイーツに使うのを楽しみにはしていたけど、実際にその用途に使ったは全体の1%にも満たないからなぁ。
俺としては寧ろ葡萄ジュースとシテノ飲むのが好きだった。うん、今年はもっと葡萄ジュース用に絞り汁残そう。
子供達も増えたし、今年はちびっ子ズにも葡萄狩りさせてやろうかな? スノーマン大陸の大農場の果樹園はフルーツ・パラダイスだから、きっとみんな喜ぶだろう・・・。
ああ、そうか、ケンタに葡萄狩りプランのお誘いを提案してみるかな?
そうしてイベント企画の最前線から身を退いた筈なのに、何故か果物狩りを仕切る事になってしまったが、ケンタにモモちゃんを誘わせたら、何故か皇帝君御一家全員が釣れたのだった。
尤も今回は日帰りだけどね。
俺達の終の棲家は、来客用のゲストルームはあるけど、良くて2組が限度で、大人数の何組も収容出来るキャパはないからね。
そしてやって来た果物狩り当日、プライベートリゾート島でお馴染みのメンバーが再集結したのだった。
全員つい先日以来と言う事で和やかな噴気の元挨拶を済ませて早速終の棲家のゲートからスノーマン大陸へと出たのであった。
何故か、終の棲家を見た皇帝君の所の奥方様のテンションは異常に高く、アケミさんにお強請りして、再度家の中の内見をお願いしていた。
どうやら何故か、アケミさんブランドのボーンチャイナのファンである事から発展して、この終の棲家のインテリア等のセンスに感動しているらしい。
加えて、前回の大雪で自分の別荘?が倒壊してしまって、全てが無になった事もあって、次の別荘のインテリアを考えての事らしい。
また皇帝君が鬱憤で近々に塞ぎ込みそうな予感がするのは俺だけだろうか?
まあそんな奥方様は申し訳無いがアケミさんにお任せして、ジリジリとし出しているちびっ子ズを従えてフルーツ・パラダイスである果樹園へと案内するのであった。
果樹園が近づいてくると、換気の為に開けられている通気口から、葡萄の甘い香りが漂って来ていて、それだけで思わず笑みが零れてしまう。
「ジイジ、美味しそう! 食べ頃ーー」と嗅覚の鋭いミルールちゃんが早くも叫んで居る。
釣られる様に一緒に走り出しそうになるキサラちゃんやフェリル君を先走らない様に牽制しつつ、早足で温室の入り口まで移動したのだった。
換気はしているものの、温室内の気温はやや高く、甘い葡萄の匂いが充満していて、入っただけで、直ぐに汗が出そうだ。
撓わに実った葡萄の房が重そうに天井にぶら下がっており、
場所によっては顔にぶつかりそうである。
「わあ、これは立派な葡萄だ。」と皇帝君とアッシュリー君が感嘆の声を漏らしている。
「早くー!食べよ!?」とミルールちゃんが騒いでいる。
流石にミケールの娘だけあって、食いしん坊である。
「いや、食べるには葡萄の房を収穫しないとね。順番おかしいからね。」と釘を刺しつつどうやって子供らに葡萄狩りをさせるかを考える。
企画当初は全く考えてなかったが、脚立や踏み台を使うにしても、相当な高さとなるので危険である。
という事で、大人が1人抱っこして狩らせる事にした。
リックがミルールちゃんを抱っこして、サチちゃんはヘンリー君を、エリックはキサラちゃんを担当し、俺がフェリル君を担当する事になった。
取った房を収納してくれるゴーレムを5機補助に付けて葡萄狩りがスタートした。
これが、地獄の始まりだった・・・。
葡萄の高さと子供らの身長と体重、この微妙な位置関係が抱える大人達の腰を虐めてくれた。
とは言え、大喜びしている子供達の手前、なかなかギブアップ出来る訳もなく、温室内の気温とは関係無い厭な汗・・・冷や汗が湧いて来る。
30分以上葡萄狩りを続けた頃、流石に腰が厳しくなり、一旦休憩を提案した。
「さあ、最初に取った分を冷やしてあるから、丁度美味しくなってる頃だし、一旦休憩しよう。」と。 こんな大きな房の葡萄がそうそう簡単に冷える訳が無い。これから出す葡萄はこんな事も在ろうかと別途先に収穫して十分に冷蔵庫で冷やして締めた物である。
子供らを降ろした大人達は、ホッとした様な表情になって、腰を回したり、揉んで見たりしている。俺は自然を装いつつ素早くエクストラヒールを掛けておいた。
歳の所為で俺だけがキツイのかと思ったが、リックの様に現役の若い奴でもやはりこの姿勢と負荷(子供の体重や動き)はキツじゃったらしい。ふふふ。
温室の外にガーデンテーブルセットとガーデンパラソルを用意して、全員がホッと溜息をつきつつ椅子に座ると、丁度アケミさんと奥方様が合流してきた。
テーブルに飲み物と冷えた葡萄出して種と皮を出す皿を置いてやると子供らが頂きますと同時にガッついていた。
尤も、1粒が大きいので口に入れるのに苦労して居たが、食べた直後に「甘~い!」「美味しい!」と騒いでいた。
驚いた事にちびっ子ズは小さい口のくせに、凄い勢いでパクパクっと食べて3人で一房以上食べて居た。
ちなみに、ヘンリー君は流石にこの葡萄を食べるには幼すぎるので、冷やした葡萄ジュースを出してあげている。
休憩後も葡萄狩りを再開するのだが、流石に腰がヤバイと言う事を誰からとも無く呟きだして、それに便乗する形で俺が救いの手を提示した。
まあ、姿勢的に厳しいなら、どうだろう?ゴーレム達にその役を代行させようか?と。
これにホッとした表情を見せて大賛成をする俺より若い面々。
だが、ヘンリー君は流石に幼すぎるのでサチちゃんに代わってエリックが担当する事になったが・・・。
我が子の事だけに文句も言わず若干引き攣りながらも素直にに交代するエリック。
可哀想なので、こっそりとエクストラヒールを掛けておいたけどね・・・。
まあ、葡萄だけだと飽きるだろうと、更に30分程葡萄狩りをした後は、別の温室にやって来て、桃狩りにターゲットをチェンジした。
尤も、桃の場合、実のなる位置が高いので、流石に大人でも届かない事もあり、急遽簡易的な足場を組んでその足場によじ登っての桃狩りとなる。
スカイリー君やケンタが、カテリーナ嬢っやモモちゃんのエスコートやサポートをそれとなく行っていて思わずニンマリしてしまう。
勿論、俺はアケミさんやちびっ子達のサポートもしたよ!
30分ぐらいすると当然の様に桃も食べたいとお強請りし始めるちびっ子ズ。
まあ、桃も同じく、ちゃんと冷やしてあるので問題無いのだが。
他にもプラムや、パイナップル等も冷やしてあるので、一緒に出してやると、凄い勢いで食べて居た。
どうやら、切ってあるので、サイズ的に食べ易かったらしい。
序でに良い時間だったので昼食を取った。
昼食中に聞いた話だが、どうやらスカイリー君とカテリーナ嬢は秋に結婚式を執り行うらしい。
丁度収穫祭があるので、目出度い事続きで収穫祭と同時にやるらしい。
まあ、幸い、家の収穫祭とは微妙に日程が違うので、参列には問題が無いが、収穫祭との同時開催は流石に大変何じゃ無いかと思うのだが皇帝君大丈夫なんだろうか?
まあ、アッシュリー君達の結婚式を既にやっているから同じ要領って事で少しは楽かも知れないけど・・・。
一応、果物狩りは子供ら大喜びで夕方、前にエネルギーが尽きた様に、グッタリした子供達の様子で、終了となり、王宮に戻って、子供らはそのままお昼寝に移行した。
折角なのでうちの王宮で夕食を取って帰って貰う事にして、それとなくケンタをサポートしたのであった。
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