第465話 スノーマン島
ガンマよりの連絡を受けたのは、生産ラインを完全停止してから5ヵ月程経った頃であった。
内容は現地の状況の悪化を伝える物で、『スノーマン島』への状況確認の要請だった。
「地響きの音聞こえてますでしょうか?相当に揺れてます。現在の所、被害は出てませんが何時まで保つかは不明です。状況確認をお願い致します。」とゴーレムならではの高揚感も何も無い口調であった。
ふむ・・・。相当揺れているとの事なので、俺の確認云々前に、即座に批難ドームの固定ゲートで秘密基地への退避を命じた。
もう既に鉱石の方の元は取ってるし、多少どころではなく、ストックもできているので、ここでむざむざ大事なゴーレムを危険に晒す意味もないだろう。
俺の退却命令を聞いて「了解。」と返事が来た後、直ぐに通信が切れて、秘密基地の格納庫下の倉庫へと続々とゴーレムが戻って来たのであった。
全員土埃で汚れて居たので「お疲れさん」と笑顔で出迎えつつ、全機にクリーンを掛けて綺麗にしてやった。
「主君、ただ今全500機無事に戻りました。」とガンマがビシッと敬礼しながら俺に報告した。
「そうか、本当にお疲れさん、ガンマは取り敢えず、王宮のベータの所に戻ってくれるかな。 後残りの全機はスリープモードで命あるまでここで待機だな。本当にお疲れ様。」と言って500機のゴーレムが完全に動きを止めたのを見ながら
『アトランティカ』に寄って、一旦皇帝君に状況と全機の撤退を報告しつつ、これから『スノーマン島』へ視察に行く事を伝えたのであった。
「あ、皇帝君? おひさー。なんか、ガンマからの連絡で『スノーマン島』の揺れが酷いって事だったから、秘密基地の地下倉庫に全機撤収させたから。これからパワードスーツ着てさ、チョロッと現地を見て来るよ。」と俺が状況を軽く説明すると、
「あー!俺も行く!」と直ぐに食い付く皇帝君。
「え? 来るの?チョロッと見てくるだけだよ?」と俺がヤンワリ断る方向に舵を切ると、
「うん、今ゲートの前に着いたから! 行くから!!」と強引にこっちにやって来た。
「いやぁ~丁度最近退屈で! 良いタイミングだったよ。」とウキウキしている皇帝君。
どうやら、ゴーレム製造が終わってしまって、日々の皇帝業に辟易して居たご様子。 ちなみに、配布されたゴーレムは寒村や離村等の僻地の防衛任務に就かせているそうな。
うちも一応、魔物等の出そうな村や集落に配備したけど、ゴーレムだけ送っても魔力充填装置も一緒に送らないと使い物にならないので、金額的に馬鹿にならないんだよね。
例えば、1つの魔力充填装置で10機ぐらいで共有なら良いんだけど、離村とか、そこまでの配備はしないから、色々大変なんだよね。
と言う事で、皇帝君もパワードスーツを着用し、一緒に定点観測用のスカイラークに移動して上空から、現状の島を確認して、2人共驚いた。
「凄いね! 成長期の親戚の子供を半年ぶりに見た様な気分だよ!」と俺が言うと・・・・。
「ハハハ、確かに大きく育ったね。ビックリだよ。 これはもう島と言うより大陸? 向こうの先っぽ見えないね。」と皇帝君が冷静に現状を解説してくれた。
「一応、報告は受けてたけど、ここまで一気に広がってるとは思わなかったね。ちょっと地上に降りてみようよ!」と直ぐに地上へゲートを繋いだ。
島に降り立つと、ガンマの言う通り確かに激しい深度5は軽く超えそうな揺れを感じる。
「日本だと外に出るか、テーブルの下でジッとしとくか、悩むレベルの揺れだな。」と皇帝君。
ちなみに、ここまでゆれると、付近の森に居る魔物が騒ぎまくっていて自信の轟音以外のギャーガーと言う咆哮などが非常に五月蠅い。
「この島、既に、我が国の半分ぐらいの面積在りそうだな。」という俺の呟きに、パワードスーツの中でワクワクしている様子の皇帝君が俺の肩をガシッと掴みつつ、
「なあ、兄弟、折角だし、この島?大陸?で何か面白い事やらないか?」と言い出した。
非常に面倒事の予感がするのだが、一体何をすると言うのか。
「何をするかによる。気安く開拓や開発しても元も取れないし。お互いの国から遠い場所だし、難しくないか?」と俺が否定的に応えると、そんな事では挫けない皇帝君が俺の返事を善意に解釈して、
「判った! 何か兄弟が喜びそうな面白い事考えておくよ!」と言っていた。
地球で普通に考えると、リゾート開発とか、或いは恐竜の出る遊園地とか、映画に最適なロケーションなんだよね。
しかも、ここでは遺伝子操作でクローン作る必要も無い異世界で、恐竜ではないけど、リザードも含み魔物いっぱい。
そんな事を考えていると、思わずクスリと笑ってしまいそうになる。
「でも、何かやるって言ってもさ、あの鳴き声た咆哮で判る様に、魔物いっぱいだし、農業するにも、リゾート開発や遊園地するにしても大変だぜ?」と俺が森の方向を指差したのだった。
そもそもだが、国内でまだまだ土地の開拓や整備の必要な所は探せば幾らでも有る訳で、何も誰も住んでいない離島を目的も無く開発するのはちょっと・・ね。
物事にはやはり、優先順位や、大義名分とかがひつようだったりするじゃん。
幾らロマンが!とか言っても、限度あるし。
ここで何かやりたいって言うなら、それ相応に俺がノリノリになるような餌を撒いてくれないと。
「うちの王様、いつも遊んでばかり居る」って後ろ指差されちゃうし。
逆にいつも凄いなって思うのは、皇帝君の所。 こんなにフラフラしててもクレームも支障も無いって羨ましい。
一旦、鉱山の状況を確認すると、驚いた事にホールに繋がる坑道が若干増えていた。
どうやら、効率アップの為にガンマ達が掘ったらしい。凄いな・・・彼奴ら。
特に穴を開ける様な道具を渡した覚えは無いのだが、どうやって開けたのか、そっちの方が気になってしまった。
やはり報告通りに落盤はないが、揺れが酷いので、直ぐに地上へ退避して、スカイラークを出して、広くなった『スノーマン島』改め『スノーマン大陸』を少し見て廻る事にしたのであった。
このまま解散だと、皇帝君が帰らずに王宮まで着いて来そうだったからじゃないよ?
2時間程、スノーマン大陸』を見て廻った訳だが、魔物の宝庫である事は間違いないが、資源として見た場合、樹木の本数が多く、しかも樹齢が平気で数百年はありそうで、太い木が多い事が判明した。
観光に向きそうな滝のある場所なんか、どこぞの映画のロケに使えそうな景観でである。
更に、海中から隆起した場所なのだろう箇所には、嘗ての海底だった名残が見受けられ、更に面白そうな石組みの建造物?遺跡っぽい物もあった。
「ねえ、皇帝君、あそこって、最近まで海底だった場所だよね? 海底に沈んでいた、古代の遺跡って所かな?」と俺が指差すと、皇帝君も興味津々らしい。
「ちょっと降りて調査しようよ!」とノリノリである。
「ところで皇帝君の所のB大陸って、古代文明とかの遺跡とか伝説とかってないの?」と聞いてみると、遺跡と呼んで良いのか微妙な廃墟っぽい物はあっても、荒廃してしまって、保全されてないので、調査するだけ無駄らしい。
伝説というか、国興しの神話っぽいのものは各国持って居るらしいけど、「大体胡散臭いのが多いよ。そういうのって、建国の神秘性や神聖性を良い様に付け加えてそれっぽくしてのが多いから。」とヤレヤレという感じで外人っぽいゼスチャーで腕を広げていた。
いや、確かに皇帝君は外人だったわ。
遺跡の傍に着陸して、パワードスーツを着用して、遺跡っぽい物建造物に近寄ってみると、ギリシャの神殿の様な石柱の上に石の板や屋根が作られて居る建物で地上から5m程石造りの階段を上がった所に大きな石の門があった。
「ん? 何か魔力と言うか、空間の変わり目を感じるこれは・・・これはなんか良く知って居る様な雰囲気だ・・・、皇帝君! これってダンジョンなんじゃ?」と俺がテンション爆上げ気味に言うと、「ふーん、そうなの?」と余り興味がなさそうな気配。 あれれ?
遺跡が先か、ダンジョンが先かは判らないけど、外側の建築物に文字も絵も彫られて無くて、全く手掛かりは無し。
ダンジョンかぁ~、まあ、これはこれで資源になるし、一応、場所をマークしておこう。と面倒なので、城壁と簡素な拠点と固定ゲートを設置して置いた。
暇になったらダンジョン潜ろうかな・・・とちょっとホクホク顔の俺。
一方皇帝君は、ダンジョンも魔物討伐もワクワクしない様でふーん?って全然ノってなかった。
海底から隆起した部分?で面白そうな物はこのダンジョン以外には何も無く、海底だった影響か、草も木も生えていなくて、逆に白い塩の結晶が沢山積もっていた。
皇帝君には、そっちの方が魅力みたいで、直ぐにスカイラークを着陸挿せる様に言ってきた。
「ほほー、これって米国のソルトレイクだっけ?あんな感じだね。うん、ここ良いんね。 兄弟、さっきの拠点セット、ここにも頼むよ!」と強請ってきた。
「うーん、じゃあ、こうしようか、城壁で囲んで固定ゲートを設置して置くから、拠点は自分の所で建ててよ。」家の拠点用の建物(女神エスターシャ様ご提供物)を提供すると拙そうなので、そう言う風に話の方向を変えてみたら、皇帝君はさっきのダンジョンと違って大乗り気。
どうやら、俺とは興が乗るポイントが違うらしい。
直ぐに、通信機で助手君に連絡を入れて建物か大工を準備するらしい。
「まあ、塩美味しかったら少し分けてね!」とお願いしたら、「ゲートも設置して貰ったから、お安い御用だ!」と自分の胸をドンと叩いて咽せていた。(どうやら、任せろ!と言いたかったらしい。)
まあ、そんな訳で、急に皇帝君専用拠点を建てるって事で、皇帝君がバタバタし始めたので、まだ、見て無い新しい部分は多いが、これ幸いと、ここで解散する事にしたのであった。
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