第296話 神懸かりな超ファインプレー
俺達は、泉の傍の花園にやって来た。
「何か、もっと別の所とかも考えたんだけどさ、やっぱりここより景色が良くて、2人で静かに過ごせる場所を思い付かなくて。
ここで何日か、2人でユックリしながら、他に行く所を決めようかと思ったんだけど、良いかな?」
「はい! あなたが居れば、何処へでも!!」
何時もの桃の木の下にテントを設置して、2人でソファーに座ってお茶をする。
「ふぅ、やっと色々の喧噪から逃げて来られた感じだな。」
「ええ、二人っきりです!」
隣に座ったアケミさんが俺の肩に撓垂れ掛かって来て、ピットリと張り付いた。
ドクンドクンと俺の心臓の音が自分の身体の中で音を立てている。
思わず、降って湧いたこの密着状況に、ゴクリと生唾を飲み、
「アケミ……」
潤んだ眼差しで俺の胸元から見上げるアケミさんが、堪らなく可愛い……。
何か、今まで色々な事を頭で考えていたのが嘘の様に脳裏から消えて行く……
アケミさんから甘い香りがして、その柔らかいピンクの唇に吸い寄せられてしまう。
「ぁん…… 大好き!」
甘い吐息混じりの言葉に、嬉しさや幸せで頭の中が満たされ、どうしようも無い程に愛おしく感じた。
「俺もだよ! もうずっと離さないからな?」
「嬉しい!」
シュルリとアケミさんが俺のシャツを脱がせ、俺もアケミさんのワンピースのボタンを外して行く――――
その間、もどかしげに何度も何度も唇を合わせ、2人の隙間を埋めていく。
やがて、リビングには生まれたままの姿の2人がソファーで抱き合っていた。
アケミさんの甘い吐息と香りに釣られ、色んな所を啄んでしまう健二。
アケミさんも健二の身体に自分の手足を巻き付けて応戦して来る。
やがて、健二の身体に異変が起こったのであった――――
◇◇◇◇
翌朝……と言っても、既に時刻は午前10時半を過ぎた頃、健二はテントのベッドの上で目覚めた。
ゆっくりと頭が冴えていき、昨夜の事を思いだし始め、我に返る。
隣では、全裸のアケミさんが乱れたシーツと健二の身体にに埋もれる様に寝て居る。
その寝顔は、これまで見たどのアケミさんよりも、幸福に満ちていた。
自分でもビックリの逆転満塁ホームランである。 いや、4点追加処ではなかったな。
これまでのお互いの距離や隙間を埋めるかの様に、お互いを求め合い、飲食を忘れ没頭していた……。
ちょっと昨夜の出来事を思い出して、赤面しつつ、思わず笑みが零れた。
しかし、不思議だ。
これまでピクリともしなかったのになぁ。
これが愛の力なのか! これが愛のある結婚の力なのか!!
隣でピットリと身を寄せるアケミさんと同じく、健二も幸せ一杯であった。
さて、何故健二は急激に一皮剥けたのか!? これには複数の人と神の思惑と偶然がタイミング良く重なった事が原因であった。
時間は健二との婚約直後まで遡る。
健二は知らなかった事であるが、アケミはアケミで健二のトラウマが引き起こしたED問題を何とか癒やしてあげたいと心の奥底から願った。
聞けば聞く程に酷い話で、健二が女性に対して、不信感やそう言う性に対する嫌悪感の様な物を持ってしまっている事を理解して居た。
とは言え、アケミ自身、全くそう言う方面の知識も無ければ、テクニックも無い。
そして、色々と自分の出来る範囲で密かに調査を開始したのであった。
幸いな事に結婚式をするまでには十分な時間があった為、健二が山手線計画にドップリ浸かっている頃、アケミは、その調査にドップリと浸かっていたのであった。
何か少しでも役に立ちそうな話を聞き付けると、それとなくその話題に入り込み、情報を得る。
密かにドワースの図書館に行ったり、ドワースで顔を真っ赤にしながら、そっち系統の薬を探したり……それはもう、涙ぐましい努力であった。
そして、その糸口は、実に身近な場所にあった。
エルフとドワーフと獣人族である。
兎角エルフとドワーフは長寿種の為、個人差はあるが、余りそう言う行為に対して貪欲では無いらしい。
とは言え、子孫繁栄は種族として必須である。
その為、エルフには、代々伝わる、『秘薬』があったのだ。
エルフの女性陣から何気にその話に辿り着くまでに、結構な時間を要したのであった。
更に、獣人からも非常に良い情報を得たのであった。
エルフの場合、その気にさせる事や、そう言う意欲が徐々に湧いて来る効能がある粉末状の薬である。
まあ、簡単に言うと、滋養強壮剤である。
1ヵ月ぐらい服用する事で効果が出て来るらしい。
まあ、現在の日本でやると、一歩間違えば法に抵触しそうな香りのする怖い物であるが、アケミには迷いが無かった。
一瞬は健二に言うべきか? とも考えたのだが、言う事で逆に変に意識されると逆効果であると思ったのだった。
更に、獣人の秘薬も使った。
これは、女性が意中の男性を誘惑する際に使う物らしく、自分自身のフェロモンをより多く出す物らしい。
フェロモンで誘惑とは、流石は本能が強い獣人らしい物である。
ドワーフの秘薬はお酒に混ぜる物で、効能がちょっとヤバそうなので、使う事は断念した。
しかし、アケミ自身も知らない所で、実はもう1つ大きく作用した物があったのである。
神殿での結婚の儀の際に、ホログラムで登場した、女神エスターシャ様である。
女神エスターシャ様は、せっかく健二の為に用意した秘薬をコナンに使用してしまった事で、当初の思惑が狂ってしまい、計画の変更が必要となってしまった。
当初は軽く女神エスターシャ様本人だけの映像と音声だけで姿を現す予定だった。
一般には全く知られて居なかった事だが、神気を帯びた光の柱には、精神的な癒やしの効果があるのだ。
ただ、幾ら女神エスターシャ様と言えど、天界から下界までは距離や次元的な物によるロスが多く、神気の影響力が極端に落ちるのである。
その為、落ちる神気の影響力を補充する為に、趣味と実益……いや、サプライズと神の奇跡を見せつける為、多くの神々を強引に集め、大挙してホログラムで降臨したのだ。
そしてその神気をモロ特等席で浴びた健二の心の奥底に蔓延っていた、トラウマと云う痼りを消し去っていたのである。
それに加え、前記のアケミさんの涙ぐましい努力が合わさり、文字通り、『神懸かりな超ファインプレー』が現実の物となったのであった。
そして、一度成功し、本能の部分で自信を持った健二の快進撃は止まらなかった。
その結果、昼からぶっ通しに近い状態で夜中まで延長戦に次ぐ延長戦を行ったのであった。
「何て清々しい朝なんだろう!」
思わずポツリと呟くと、隣のアケミさんが、「ケンジしゃぁーーん、素敵でゅ」と寝言を言っていたのであった。
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