第274話 デザート如何っすか?って……

クーデリア王宮に到着してしまった。 まあ余り来たくは無い場所だ。


俺達は応接室というか、広めの会議室へと通され、王様、お妃様、王子様、王女様2人、そして大臣に囲まれている。



「この度は、態々お越し頂き、申し訳無い。」

と王様が軽く頭を下げて来る。


「いえいえ。 ご無沙汰しております。 何かお話があるとの事でしたので。 どう言った事でしょうか?」


一晩考えたんだけど、食料じゃ無いだろうという予想であった。

後はもう残る事と言えば、再開発の件ぐらか?


「それがその……」と言葉を濁す王様。


「申し訳ありません、この件は私の方からご説明させて頂いても宜しいでしょうか?」

と王妃様が横から話に入って来た。


ふむ。 歳の頃30代前半ぐらい? 下手すると20代後半でもイケるな。 凄く美人の王妃様である。

やっぱりこの世界って美形が多いよねぇ。


そんな王妃様がキリリとしながら、話始めた。


「お初にお目に掛かります。 私、この子らの母でメリアンヌと申します。 スギタ陛下には大変お世話になっておりまして、常々感謝しておりますのよ。

本来であれば、こちらからお伺いしてお話させて頂くのが筋なのですが、丁度こちらに見えられたとお聞きし、居ても立っても居られず、この場を作って頂いたのです。」

と取りあえず、回りくどいが挨拶から入って来た。


ふむ。まあ、王妃様が話すという事は、やはりデザート系の要望かな? それともエルフ達と開発した石鹸やシャンプーとトリートメントを売れという話かな? ホテルや温泉で出していたから、その可能性もあるか……。


「お初にお目に掛かります。 ケンジ・スギタです。 して、どの様なご用件でしょうか? デザートか何かのご要望でしょうか?」

と話を振ってみた。


「ええ、では本題に入らせて頂きますね。 まあ、ある意味デザートとも言えなくもないのですか? ホホホ。

スギタ陛下はまだ独身とお聞きしております。 ええ、アケミ様という婚約者様がいらっしゃるのは存じておりますが、うちの娘2人がスギタ陛下にゾッコンラブ状態でしてね。

もう、ドリーム・シティから帰って来て以来、ズッと毎日姉妹2人してスギタ陛下の事ばかり話しておりますの。 本妻は勿論御婚約者様であるアケミ様なのは承知しておりますが、出来ましたら、どちらか1人でも……出来たら2人共想いを遂げさせてやりたいと……。

厚かましい願いであるのは重々承知なのですが、側室でも構わないので、貰って頂けませんでしょうか?」

とぶっ込んで来た。


「で、デザートって……縁談ですか! いやしかし、ソレハ……チョット……」

と思わぬ事態に固まる俺。


横でコルトガさんも、さも当然という顔で頷いている。

コナンさんが悪い笑みを漏らしているし……コラ!後で覚えてろよ!!。


「も、申し訳無いですが、私は当面結婚する予定もありませんし、結婚するのは1人で十分なのです。 お気持ちはありがたいのですが……そう言う訳でお断りさせて頂くしかございません。」


何とか上手く言葉を繋ぎ、俺にしてみれば、100点の回答が出来たと思うのだが……


2人の王女様が、一斉に泣き崩れてしまった。


ドンヨリとした空気の中、号泣する2人の王女様の声だけが鳴り響いている。


俺はオロオロするばかりであるが、上手い言葉の一つも浮かばない。


すると、横で沈黙を保っていたコナンさんが口を開いた。


「少々宜しいでしょうか?」と。


「そもそもですが、ケンジ様とアケミ様の熱愛っぷりは国で有名なのですよ。 それを温かく国民は見守っているのです。 誰も直ぐに結婚式を挙げるべきだとか、何も言わずに。

お二人は、それもう、長年連れ添ったご夫婦の様に、ただバルコニーで秋の紅葉に染まる森の木々を静かに微笑みながら眺めながら心で会話し合う様な中なのです。

仮に、仮にそこへ強引にどちらかお一人でもお二人共でも嫁がれたとしましょう。 その嫁がれた王女様は確実に独りぼっちになってしまうでしょう。

ケンジ様とアケミ様は目と目を見つめ合うだけでお互いの気持ちが理解出来る間柄なのです。 ケンジ様の目は常にアケミ様と国民に向いております。

女として、そして人として不幸になる道は両陛下がお止めになるべきかと。」


誰? ねえ、誰?? コナンさんがこんなにも流暢に喋っている。 本当に誰なの?


しかも目と目で通じ合うって、何それ? エスパーじゃないから、判らんよ?

俺が目を丸くしてコナンさんを見て居ると、そんな事では引っ込まない王妃様が反撃を始めた。


「そ、それは承知しておりますが、それでも愛する娘の願いを叶えて遣りたいと思うのが親心でもあるのです。 それに王家や貴族の子は、皆家と家、国家と国家の結びつきを強固にする為、政略結婚は当然なのです。

いえ、今回の話は、政略結婚では無いのですが、全くそう言う意味を排除した物でも無いのです。 最初は無理でも、長年一緒に過ごして頂ければ、我が娘にも少しは情を掛けて頂けるかも知れません。

だから娘の希望を叶えてスタートラインの後ろぐらいには立たせて遣りたいのです。」

と切々と語って来た。


「しかし、残念ながら、我が国も我が主君たるケンジ様もそんな政略結婚如きを重んじて他国より貴国を重んじたりは致しませんよ? 寧ろ、身内にはある意味厳しく接すると思います。

だから、政略結婚という趣旨では逆効果になるでしょう。 更に貴国からの話を万が一にも受け入れてしまうと、他国の王家や貴族も黙ってはいないでしょう。 我も我もと娘を送り込もうとする事でしょう。

ケンジ様は、ご結婚される際、相手の身分を問いません。 種族もです。 心底愛される方なら、人族だろうと、エルフであろうと、ドワーフであろうと、獣人族であろうと、魔族であろうと。

更に平民であろうと、奴隷であろうと、貴族であろうと、身分も問わないでしょう。 ただ1人、心から愛する女性なら です。」

とコナンさんが締めた。


シーンとする室内。 何時しか号泣していた王女様2人も真剣にコナンさんの話に聞き入っていた。 そして悲しげな顔で、「「判りました。」」と声を揃えて居た。


コナンさん、ナイスだよ! 流石だよ! いやぁ~正常化神薬って本当に凄いね!!


「まあ、私が言いたい事、思って居る事は全てこのコナンが言った事そのものです。 申し訳無いですが、諦めて下さい。」

と頭を下げて、復活される前にバタバタと王宮から撤収したのであった。

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