第264話 見逃しては貰えないらしい
それから7日間、連日ダンジョンに潜り、第6階層まで到達する事が出来た。
「あれ? そもそもなんでダンジョンアタックしてたんだっけ?」
そこで、俺はハッと気付いたのである。
そう、ダンジョンからのスタンピードを危惧したのはあったんだけど、そもそもは、ウォーターコースターを作りたかった訳で、そのリアリティを求め、ダンジョンを探索してみようと思ったんだった。
余りにもダンジョンアタックが楽しすぎて、思わず横道に逸れたまま、熱中してしまっていたよ。
まあ、良いか? 折角気分も温まって来た事だし。
と思ったのだが、親方が許してくれなかった。
「ケンジ様ょぉ~。何時になったら完成形見せてくれんだよ!? 俺達ゃズーッと待ってるんだぜ?」
と詰め寄られてしまった。
なので、一旦ここでダンジョンアタックを一時中断し、先にスギタ・ドリーム・ランド都市(仮)を作る事になってしまったのだった。
そして、何処に建てるかを主要メンバー全員で会議した結果、若干離れた出島的な存在にした方が良いという話に決定したのであった。
そうなると、場所は自動的に例の魔法を練習した草原の一択となる。
早速ドワースのマックスさんに親書を送り、会議をした結果、ドワースへも利益の配当を渡す事や、他国からの入場の際は、ドワースを窓口にする事で合意したのであった。
『ドワースへの利益配当』と聞くと、一見ヤリ過ぎなんじゃないの?と思われるだろうが、これには実は仕掛けがあるのである。
勿論、マックスさんも納得の上なので、別に騙した訳ではない。
エーリュシオン王国への入国可能者か否かの事前判定責任の一端をドワースへ押しつけたのである。
つまり、エーリュシオンのスギタ・ドリーム・ランド都市(仮)の入場審査を二重とした訳である。
これで、ある程度はそこらの有象無象を排除出来る事であろう……とまあ、発案者はコナンさんなんだけど、流石に思い付くアイディアがエグい!!
兎に角秋の内に工事を終わらせ稼働させようという事になり、連日、もの凄くブラックに働いた。 いや働かせられたのであった。
結果、ドリーム・シティ(スギタ・ドリーム・ランド都市から改名)は、最新のアトラクションを備えた、この大陸最大のアミューズメント・パークへとなった。
冬も営業が可能な様に、マギ鉱石を使った強力なシールドを張って営業するつもりではある。(まあ来るお客とは、拠点の住民だけだろうけど)
様々な料理を楽しめるレストラン街、色々な特産物を購入出来る商店、巨大な温泉施設に、豪華なリゾートホテル。 更にうちの城と同じ物を更に豪華な宿泊施設として設置したのだが、これが拙かった。
設置した後、うちのスタッフからクレームが入ってしまったのだ。
「ケンジ様、流石に冗談が過ぎますよ。 我が王の住まわれる宮殿と同じサイズの物を宿泊施設にしちゃうとか、これは看過できません。」
とステファン君が激オコである。
「えー? でも、みんな喜ぶかと思ったんだけどなぁ。 困ったなぁ。 もうこれで配置も固めちゃったから、これから移動となると、かなり大変なんだけど? まあ城ぐらい、良いんじゃないか?」
と俺が言ったら、コルトガさんやコナンさんまでがステファン君側に参加し、結局宿泊施設用の城はこのままでも良いが、エーリュシオンの宮殿をグレードアップする事になってしまった。
確かに、今の宮殿は(小)を使っているから、(中)や(大)までは設置出来る余白を見て配置しているし、大丈夫は大丈夫なんだけどねぇ。
ただ(大)は滅茶滅茶デカいんだよ。 確かにサイズ的に今の敷地に入るは入るんだけど、全てが遠くなるから、不便なんだよね。
ステファン君達は、(大)を要求していたのだが、結局俺の必死の説得で、(中)で我慢してくれる事いなったが、追加要望で、急遽ダミー王都としての見栄えの為だけに、ここドリーム・シティにも同じ城(中)を設置する事となってしまったのだった。
そして、拠点の城を交換するのに1日を費やし、やっと全てが終わるまでには、4週間が掛かってしまった。
常設型ゲートの作成やその他の細々とした設置や調整、住民達の移動等を経て、トータル約1ヵ月と1週間で、ドリーム・シティが完成したのであった。
「長い間、お勤めご苦労様です!」
「「「「「「「「ご苦労様です!」」」」」」」」
アケミさんの労りの言葉に、引き続き、声を揃えるスタッフ達。
何か、出所を祝う様な雰囲気に苦笑いする俺だったが、でも取りあえずせっつかれる事を全て仕上げたという開放感が半端無い。
「ああ、ありがとー! やっぱシャバの空気は美味いぜ!」
「ん? シャバ??」
誰も俺の細かいノリには着いて来てくれなかった。
「さあ、いよいよ、ダンジョン再開だな!!」
俺が意気揚々と宣言していると、
「ケンジ様、何かお忘れでは?」
とステファン君からヤンワリと釘を刺される。
ん??? 忘れ物は無いと思うのだがな? アレも作ったし、気になるアソコも修正入れたし? うーん、何も忘れて無い筈だけどなぁ?
俺が首を傾いでステファン君に問い返した。
「ごめん、何か忘れてたっけ? 全部作り終わって問題無いと思うんだけど?」
「フフフ、ケンジさん、またですよ? ほら! 開幕式!」
「え? ヤルの?」
「「「「「「「「ええ!」」」」」」」」
俺は全てを悟り、諦めた。
「じゃあ、チャッチャと終わらせてオープンさせちゃおうか。」
いや、まだ悟りきっては居なかったらしい。
「ああ、それなんですがね、ちょっとややこしい状況になってまして、今日から1週間後のオープンとなります。」
何やらステファン君が苦笑いしている。
「ん? ああ、もしかしてアレか? スタッフの訓練も兼ねて正式オープン前に拠点の住民達で練習するとか?」
「いえ、まぁそれもあるんですが、それよりも、各国の王族等がオープンのお祝いに託けて、ご挨拶に来たいと言ってましてね。 まあ極めつけは魔王さん御一行なんですが。」
詳しく聞くと、クーデリア王家からは、またもや王子様と王女様の3人が。それとドワースからもマックスさんがやって来るらしい。マスティア王国からは、何と国王であるガルン君自らがお妃さん(新婚)とやって来るらしい。
イメルダ王国からも打診があったのだが、流石に間に合わないからと断りを入れたそうな。
しかし、イメルダ王国の王家は諦めが悪かった……。 何とかなりませぬかのぉ? と食い下がられ、俺に相談となっている訳である。
「いや、確かに、一瞬と言えば一瞬なんだけどね。 ゲートは秘匿しないとだから、諦めて貰うしかないね。」
「ですよね。 通常の馬と馬車なら、1ヵ月は余裕で掛かりますからね。」
「で、何? 魔王さん達も来るって?」
「そうなんですよ。 何故か嗅ぎつけられちゃいましたね。」
とステファン君がやや目線を逸らしていた。
まあ、大変なのはステファン君だから、リークしちゃったのが本人なら諦めもつくだろう。
「そうか……。まあ、次回からは口を滑らせない様に、気を付けてくれよな。」
「ハッ! 申し訳ありません。」
どうやら、故意にではなく、世間話の一環で健二が忙しい事を伝え、ヤンワリとお断りしていたつもりが、何やら面白い事をやっているらしいと鎌を掛けられた感じらしい。
「まあ、それはしょうが無いよね。 あの人達、長年生きてるから、話術だけなら俺達なんざ、赤子同然だろう。 ハハハ。」
と慰めながら肩を優しく叩くのであった。
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