第214話 何やら夢みる怪しい2人
さて、気になっているであろう、旧本部の地下に幽閉されていた裏ギルドの構成員だが、更生の余地のある者(全体の約1/3……即ち42名)は、健二の闇魔法とコルトガさんとサスケさん共同主催のリ・ブートキャンプなる怪しげなプログラムを経て、素晴らしい忍びへの道を歩き始めていた。
健二が聞いても頑なに口を閉ざすコルトガさんとサスケさんだったが、開始から2週間経った頃には、見違える様に邪な気配が消え、一端の忍者へと生まれ変わっていた。
一体、どうやったらここまでの成果を上げられるのか、怖いけど、本当に怖いけども、知りたい物ではある。
まあ、その結果、シャドーズは隊員25名から一気に67名へと膨れ上がった。
しかし、何故かサスケさんとコルトガさんは少し苦い顔をしながら、
「まだまだじゃのぉ。」
「ええ、まだ足りぬでござるな。 もっと秘密防衛軍を鍛え、転属させる必要がござるな。」
「そうなると、今でさえ足りておらぬ秘密防衛軍側も増やさねばならぬな。倍……いや3倍くらいにはしておかねばの。」
「同感でござるな。 ガハハハハ。」
「ガハハハハハ、夢は広がるのぉ~。」
等とブツブツと話し混んで居るかと思うとバカ笑いしているし。
うむ……一体何にそんなに人員が必要なのだろうか? 不思議である。
王都の一件が完全に片付き、俺の手を離れたので、俺は現在いつのも3人で通信魔道具の量産に取り組んでいる。
実は一般の携帯電話タイプを売りに出そうと企んでいるのである。
大体の作成のラインを監修し、後はエルフとドワーフ達に任せれば、恐ろしい勢いで生産してくれるのである。
どうやら、本体のケースを作るドワーフと中に魔方陣やマギ鉱石を仕込むエルフとで競い合っているらしく、確かに人数は多いのだが、日産1800~2000台ものペースで作り続けているのである。
「ねぇ、そんなに張り合わなくて良いから。日産台数は1500台くらいに抑えようよ。 ね?」
と双方に打診したのだが、
「ガハハ、ケンジ様、心配ご無用じゃぞ? 我らドワーフがエルフに負ける訳にはいかんからのぉ。ダハハハハ」
とドワーフの親方は高笑いし、配下のドワーフ達もニカッと笑って、「そうでさぁ! なぁ~に、俺達ドワーフはこれくらい無茶でも何でもありやせんぜ!」と豪語していた。
エルフはエルフで、
「フフフ、奴らの様なガサツな仕事でなく、こちらは繊細な仕事。 繊細さと緻密さでドワーフをギャフンと言わせます故、ご心配無用でございますよ? ウフフ」
と超美形故の怖い笑みを浮かべていた。
じゃあ、エルフとドワーフって本当に仲が悪いの? って心配になるじゃん。
ところが、仕事が終わる頃になると、今日は勝っただの昨日は本気出さなかっただけだのとお互いに言い合いながら、仲良く酒を飲んだり温泉に行ったりと、お互いに鼓舞しあって日々を楽しく過ごしているのである。
どうやら、長寿種だけに、日々の暮らしへの励みって言うのかな? スパイス的な感じなのかもしれない。
まあ、そんな訳で日々恐ろしい勢いで通信魔道具の在庫が増えて行っているのである。
既に1万台を超えているので、そろそろ販売開始しても良さそうだが、凄く問題があるのだ。
「なぁ、これって1台幾らで売れば良いと思う?」
俺が周りのスタッフ達に聞くと……
「えーー!? 今更それを私に聞くのですか?」
とアケミさんが驚いていたり、
「うーん、そこら辺の事は判らないんだな。だな。 ただ余り安くしちゃうとダメなんだな。」
と具体的な数字を言わないコナンさんだったり、
「……… 某は門外漢故。」
と視線を逸らすコルトガさんや、
意見を求めようとして振り返ると、気配を消して視界から消えるサスケさんだったりして、誰も具体的な数字の回答が無い。
名前を『マギフォン』と名付けた通信魔道具、サイズ的には一昔前の折りたたみ式でない携帯電話ぐらいで、ボディはミスリル製で同じくミスリル製の0~9までのボタン、それに通話ボタンと通話切断ボタン、それに電話帳登録ボタン等が着いて居る。
材料費だが、ミスリルだけで相場だと小金貨1枚前後、更に米粒大のマギ鉱石だが、これが既に子供達の笑顔と同じにプライスレスなのである。
生産コストという意味では、生産に関わったドワーフ達やエルフ達の人件費も加味しないといけないが、金貨2枚? いや金貨3枚? ウーーン悩ましい。
「困ったなぁ。 ここはガバスさんに相談してみるかな?」
という事で、久々に多分今年最後の訪問となるドワースへ出掛けるのであった。
マダラとB0の曳く通常型の馬車に乗り、ゲートで時間短縮してドワースの城門へと辿り着くと、
「おお!ケンジ君、久々だねぇ~」
と衛兵のおじさんが気さくな笑顔で出迎えてくれる。
「ご無沙汰してます! お元気そうで何よりです。」
とギルドカードを見せながら門を潜った。
長くなりそうなので、一旦別荘に寄ってマダラ達を庭に解放してから、アケミさんと2人でガバスさんの所へと徒歩で向かう事にした。
リックとサチちゃんはユマちゃんと一緒に遊ぶらしい。
コルトガさんとサスケさんは拠点で何やらヤル事があるらしく、忙しいからそもそも来て居ない。
コナンさんは、既に門を潜った段階で、お小遣いを貰って馬車を飛び出して行ったし。
「こうやって2人で街を歩くのも久しぶりですね。フフフ、何かちょっと嬉しいかも。」
と嬉し気なアケミさん。
「お!久々じゃねぇか、モフモフ使いのにぃーちゃん!」
と顔見知りの屋台のおっちゃんが声を掛けてくる。
いつの間にか、俺の後ろに着いて来ていた筈のピョン吉とコロと黒助が大人しく屋台の前で焼き上がるのを待っていらっしゃる。
「あー、人数分で良いのか?」
と聞かれ、頷くと、
「おう、そう言うと思って、姿が通りの向こうに見えた瞬間から準備万端よ! ヘッヘッヘ」
とお金と引き換えに肉串を5本手渡して来たのだった。
ピョン吉達が美味そうに食べ始め、アッと言う間に完食し、自分達だけサッサと他の屋台へと移動して、勝手に待っていらっしゃる。
俺達も急いで食べて後を追い、次々と屋台を梯子して廻ったのだった。
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