第197話 とんでも無い物(最終兵器)を手に入れてしまったかも知れない

5000羽(まあ本当は魔物なので匹なんだけどね)が一気に拠点に来るとなると、卵以外でも貢献して欲しい所である。

そこで、コケノスケと話し合った結果、どうせ暇だし自分らの食い扶持の手助けになるのであればと、農業や漁業の手伝いとか色々分担して貰える事になった。

農業では、主に畑等の雑草摘みや害虫等の排除のお手伝いである。

これは、昔見た有機農法を紹介したTV番組でカルガモ隊による水田の雑草や害虫の駆除を思い出したからなのだが、これは案外良いかも知れない。

人間に取って畑等の雑草駆除とかは、腰を屈めるキツい作業なんだけど、ウーコッコーに取っては然程通常通り餌を啄む際のルーティーンと変わりが無いからである。


漁業の手伝いでは、イセエビとかアワビとかを水中から獲って来たりする感じだね。

コケノスケの提案で、コケノスケの配下21匹を更に従魔としてくれる様にお願いされた。

そうする事で、より作業や手伝い等の連絡が取りやすくなるからという事だった。

まあ、俺としてもメリットがあるので、D0~D20と名付けて従魔にしたのだった。

名前のセンスには突っ込まないで欲しい。もうこれだけの数、絶対に判別出来ないし、覚えられないからね。

自慢じゃ無いけど、前世から学校や職場で名前を覚えるのが苦手だったし。


そして、その晩は、とんでもない宴会となった。

ハッキリ言って、コケコケと非常に五月蠅い。

人間チームは全員苦笑いしていた。

やはり、これは若干人の住み処とは多少距離を離すべきだろうな。

まあ広い方が良いだろうから、今のところ考えて居るのは、放牧エリアか、その隣に新たにウーコッコーエリアを作るかという所である。


思い出したのだが、そう言えば子供の頃、農家をやっている遠い親戚の家に遊びに行って1週間程滞在した事があったのだが、その1週間毎朝日の出前ぐらいにその家で飼っていた鶏が、態々屋根まで上がって朝一番の雄叫びを上げていた。

俺は毎朝夢の中からその声で叩き起こされてしまい、非常にリズムが狂ったのを思い出してしまったのである。


「なぁ、ところでさ、やっぱりコケノスケ達も、朝の日の出前に一番鶏やっちゃう感じなの?」


<ああ、親分、それはアッシ達鶏の性でさぁ! あれに俺達は命と誇りを掛けてるんでさぁ! 期待してくだせぇ! 良い声お聞かせしやすぜ!」

とニンマリ笑っていた。


それを聞いて、思わず顔が引き攣ってしまった。

わぁ~、これ止めてって言えないパターンじゃん。 何て迷惑な!




そして、翌朝、昨夜の予告通り一番鶏の咆哮が、マジックテントの消音効果を打ち破る勢いで島に鳴り響いたのであった。


朝食を済ませ、取りあえず現地を見て貰う為にコケノスケだけを先行して拠点に連れて戻った。


主要メンバーに集まって貰うと、初めて見るウーコッコーに驚きを隠せない面々。


「ケンジ様! これが幻のウーコッコーですか!! 凄いですよ!」

と興奮するステファン君。


元祖村長も、

「流石はケンジ様じゃ! ワシゃ、信じておりましたぞ!」

とウンウンと満足気に頷いていた。


畑仕事の、それも雑草摘みや害虫駆除を手伝って貰えると聞いて、農民代表数人が大喜びしていた。


肝心のコケノスケ達の家だが、結局5000羽を収容してしまうと、放牧エリアが狭くなるという意見もあり、個別のウーコッコーエリアを新たに作る事となった。


卵に関しては、食べて良い無精卵に関しては産み分けてくれる事になったので、かなり楽である。

城壁を設置して、放牧エリアには木や草も生やし、巨大な鶏小屋?を30棟建てた。

大体計算では1棟で250~300匹を収容して余裕なサイズにしてあるので、この先多少増えたとしても大丈夫な予定である。


ステファン君にお願いし、ウーコッコー担当チームを作って貰う事をお願いし、三日月島へと戻った。


さあ、気合い入れてウーコッコー達を移住させるのであるが、問題があった。

<親分、今卵を温めている連中が居ますんで、全員直ぐに移動は無理っすね。

なんで、半々の2回に別けちゃどうですかい?>

と提案を受け、了承した。

D0~D9までを後発組に残し、第一陣の移動準備を進める。


「悪いんだけど、長時間繋げると魔力を食うから、出来るだけ手早く移動して欲しいんだよね。」


<ガッテンでさぁ! 見てておくんなせぇ! 驚く程に短時間で終わらせやす!>

と張り切るコケノスケ。


まあ、そうは言っても中にはひよ子も居るので、早々無茶にならない程度でお願いしたのだった。

結果、第一陣の2500匹は、約13分ぐらいで移動を完了した。


最後に流石は群のボスだなと感心したのは、置いて行くウーコッコー達に重ね重ねコケノスケが声を掛けて居た事である。

(ピョン吉に翻訳して貰った)

何かあれば、俺に報告してくれれば、直ぐに対処するとも言ってあるし、

<親分もボスも、ご心配には及ばないでさぁ! 俺らにお任せくだせぇ!>

と留守を預かるD0達が自信満々に宣言していた。

第二陣は一応2週間後を予定しているが、あくまで予定なので、無理をしない様には言ってある。



こうして、コケノスケ達の拠点での生活が始まったのであった。


そうそう、コケノスケ達第一陣が出立する際に、食べても良い無精卵を全部貰ったのであるが、その気になるお味は、言葉に出来ないね。

その日の晩ご飯で試食したのだが、正にキング・オブ・卵だよ。

まず、卵と言えばTKGだが、2度の人生で食べたTKGの存在を忘れてしまう程の味だった。

ウーコッコーの卵は普通の鶏の卵の1.5倍~2倍くらいのサイズで、何と卵の殻の色が金色なのである。

なので、卵1個でお茶碗2杯分の卵掛けご飯が作れる訳なのだが、全員が一口食べた後、プルプル震えながら暫く声を出すのを忘れてしまっていた。


「――ヤバいな。これ。 何かもう既に最終兵器の様な味だな。」


「え、ええ。これ程までとは――」


「某が今まで食べて居た卵は何だったのかと疑いたくなる程ですな。」


「おいちいのーー!」


「お、お代わりだな!」


と全員一致で過去最高の大絶賛であった。


「これでマヨネーズやプリンとか作ったら、一体どうなるんだろう?」


俺がボソリと呟くと、全員がその味を想像しただけでプルプル震えていたのだった。


「主君、これ下手すると争いになる程の味ではござらぬか?

逆に、この卵だけで天下が取れるやも……フッフッフッフ」

とコルトガさんが悪い笑みを浮かべていたが、何時もの発作なのでスルーしておいた。


しかし、これで煮玉子作ってラーメンにトッピングしたら、下手するとラーメンの味が飛ぶな。

つまりこれに負けないラーメンを作らないといけないのか。

なんかまたハードルが1段も2段も上がった気がするなぁ――





さて、これからの予定であるが、一応島の方で漁業をする事は決定しているのだが、

更に西の方の海岸線を見て廻る予定である。

イメルダとの国境辺りまで確認出来たら、今度は一気に東側の海岸線に飛び、クーデリアの海岸線を見て廻った後にクーデリアの王都経由で拠点に戻る予定である。


その時点で残る未踏箇所はイメルダの王都ぐらいになる感じだが、まあそれは来年の春でも良いだろう。

楽しみは最後まで取って置きたいからねぇ。フフフ。

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