第196話 男同士の物理的話し合い
俺達は、その晩浜辺でBBQをして前祝いをして盛り上がった。
「主君、まさかそんな所に隠れておるとは思いもしませなんだなぁ! ガハハハハハ。 道理で見つからぬ訳じゃった。」
とご機嫌のコルトガさん。
「ま、幻の卵料理なんだな! なんだな!!」
と今から食う気満々のコナンさん。
「ひよ子しゃんいりゅのーー?」
とサチちゃん。
ハッハッハ、気分が良いな!
「ピョン吉、明日は交渉宜しくな!」
<ん。主ーー、肉無くなったーーー!>
「ははっ! 肉はこちらをご用意致しました。」
と恭しくピョン吉大先生達に献上する俺。
そんな俺を見て、大爆笑するアケミさん。
前夜祭はリックとサチちゃんがウトウトする頃まで続いたのであった。
◇◇◇◇
「な、何でイキナリ!?」
今、俺達を守っているシールドの周りにはウーコッコーが20匹(魔物なので羽で無く匹)取り囲んで居て、聞く耳を持たずにゲシゲシと鋭い足の爪や獰猛な嘴でつつき回されている。
しかもシールドに遮られている為に、何やら余計にヒートアップしていて、「コッケーーッ!」とか鳴きながらより一層の気合いを入れていたりする。
「ピョン吉語りかけてる?」
<うん、トサカに来たから知らねぇって。>
どうやら、ウーコッコーさんは短気らしい。
「主君、どうやら、このトサカ頭共に主君の偉大さをそして凶悪さを知らしめるべきでしょうな。」
と腕組みしながら、悪い笑みを浮かべるコルトガさん。
「おいおい、これから仲間になろうって奴らに凶悪さを知らしめてどうするんだよ! しかも俺、凶悪じゃないからね? 何処からその凶悪さを持って来た!?」
と俺が詰め寄ると、
「またまたぁ~」って感じでウケておられる。 いや、冗談じゃないし、マジだから。
何でこんな状況になっているのかというと、遡る事1時間前、意気揚々と三日月島(命名by健二)へとゲートでやって来て、ウキウキしながらゲートから出た瞬間に「コケーッコッコッコ!コケコケェーー!!!」と一匹が俺達に気付いて、大声で鳴くと、ワラワラと海岸脇の林からウーコッコー達が飛んで来た。
いや、マジで文字通り羽で流暢に飛んで来たんだよね。 鶏って飛ばないよね? なのに飛んだんだよ? しかもかなりの距離を。
しかもね、そのまま飛んで来て弾丸の様に俺に嘴から突っ込んで来たんだよね。……いやサイズ的にはミサイルか?
心臓コースだったから危ないし、思わずその嘴を片手で鷲掴みにしたんだけど、どうやらそれがお怒りを買ったらしくてね。
<主~、こんな事言ってるよー! 『おう!われぇ~、何処の回し者じゃい、何人のシマ勝手に入ってきとんのじゃい!』って。>
「あぁ~、ちょっとちゃんと向こうに説明してみて。」
<あー、聞く耳持ってないね。『四の五の抜かすな!問答無用じゃ!』って言ってるよー?>
と。
それからは、嘴や足の爪だけでなく、羽手裏剣を飛ばしたりと、まあ好き放題やってくれるから、危ないのでシールドを張って現在に至る訳なんだけどね。
<主~、今度は『何亀みたいに閉じ籠もってるかい! ヒッキーか!? あ? 男なら男らしく表に出て勝負せぇ!』って。>
まあ、よくよく考えると、相手は魔物だし、人間見れば襲うのが当然なのか?
とか悠長に考えていたんだけど、ハッと気付くと、我が家の天使が涙ぐんでいて、
「とりしゃん、こ、怖いっ!」
とアケミさんの足に抱きついて居た。
これでカチンとスイッチが入ってしまって、鶏如きに舐められて堪るか!! 急激に人様を舐めるんじゃねぇ!って事で
「じゃあ、ピョン吉奴にこう言ってくれる? 『何抜かす!大勢で取り囲んで集団でしか戦えない弱虫が。 勝負してやるからサシで勝負しろや!
もし俺が負けたら食って良い代わりに、俺が勝ったら、言う事を聞けや! 家の天使を泣かせた報いを受けろや!』って言ってみてくれる?」
<わかったーー>
ゴニョゴニョ――――
<主~、オッケーだってさ。>
という事で、鶏達が全員5m程シールドから離れたので、俺だけ外に出た。
向こうからも1匹一番ゴツい奴が出て来た。
「コケー、コケー! ッコッコ、ケコー!」
<主、『用意は良いか? 死ぬ覚悟は出来たんかい?』って。>
「ああ、最初から全開で来い! 俺も全力で行くからな? まあ、殺しはしないから安心しろや! って言ってくれ。 開始の合図はピョン吉が出してくれ。」
ゴニョゴニョ
<じゃあ、開始するよ? 3,2,1開始!>
俺は空かさず、身体強化、身体加速を全開にしてシールドによる魔装を施し、一気に奴に突っ込んだ。
奴も本気らしく、俺の繰り出したパンチを瞬時に躱して、繰り出したパンチに横合いから足爪による攻撃を仕掛けて来た。
魔装の表面を足爪が擦り火花が飛び散る。
フッ……やるじゃないか。鶏の分際で。
思わず笑みが漏れてしまう。
向こうを見ると、奴もフッって笑って居る様であった。
面白いな。まさか俺の俊敏値+身体加速に着いて来られるとはなぁ。
フフフ、見せて貰おうか、鶏の本気とやらを。
ガキン、ガガッとお互いのキックやパンチを足爪や嘴の攻撃で迎撃し合いつつ、横に移動する。
俺は、更に一段ギアを上げて行くと奴もそれに追従して行く。
正に息を呑むハイペースな攻防である。
「あわわ、は、早過ぎて目で追えないです。」と言うアケミさんの声をBGMにして更に加速して行く。
「某も既に付いて行けなく成り申した。」とコルトガさん。
「目では追えないけど、魔力感知で何とか追えるんだな。」と普通に喋っているコナンさん。
「「ケンジ兄ちゃん頑張れーー!」」とちびっ子2人。
<おんどれ、ヤルやんけ! だってさ。>
と通訳しているピョン吉。
「フフフ、お前もヤルじゃないか。 まさかここまでのスピードに付いてこられると、正直驚いたぜ。このままじゃラチがあかないな。よし、次で勝負を掛けるか。お前なら死なない程度に調節するから、上手く対処しろよ?」
と俺が言うと、ピョン吉から伝わったらしく、奴もニヤリと笑いながら頷き、その一瞬後奴の身体が激しく光り出して炎を纏い始めた。
そう、俺は詳細解析を最初に使ったので、奴の種族の別名を知っていたので、驚かないが、後ろのシールド内からは、
「げ! 伝説の火の鳥!? いやフェニックスと言った方が良いのか!?」
「は、初めて見たんだな! これか!」
とか聞こえて来ている。
世間では、ウーコッコー≠フェニックスで別物と思われているが、実は同じ種族である。
単純にウーコッコーが己のスキルで炎を纏った姿だけを見た者がフェニックスと名付け、後世に伝えただけで、実は同一の種族という訳だ。
まあ、単純に言うと、スーパー・ウーコッコーになった感じ?
という事で、どうやら奴も本気の本気になるらしい。
俺も魔力を奴のギリギリに合わせて発動した……グラビティ・バインド!
見るからに圧縮された重力空間が奴の足下に形成されて、ガツンと奴に20Gの重力が掛かった。途端に足は止まり炎を纏って立っていた奴のトサカもぺたりと垂れ、身体の炎が地面へと吸い込まれて行く。
「ク、クケェー」
と小さく鳴きながら、その一瞬後に地面へと縫い付けられたのであった。
<主ぃ~、参ったってーー 俺はどうなっても良いから一族の者は何とか見逃してくれ!ってさー。>
とピョン吉が通訳して来た。
周りのギャラリー(鶏)達もクエクエ、コケコケと鳴きながら、今まで俺と対戦していた奴の後ろに着き、地面に伏している。
「おい、ピョン吉、何となく雰囲気で判るけど、あいつらは何て言っているんだ?」
<えっとね、ドンをヤルなら、代わりにあっしらをヤッてくだせぇ~ ってさ。
だから、ドンと女子供は見逃してくれって。>
そこで、俺は魔法をキャンセルして、素の状態に戻した。
「安心しろよ。命を取ったりしないから。その代わり、お前、俺の従魔になれ!」
と俺が言って奴を指刺すと、ゴニョゴニョとピョン吉が伝え
<判った、兄貴に従いやす! ってさーー>
そして、コケノスケ(と名付けた)が俺の従魔となった。
<兄貴ぃ、これから、宜しくっす。>
とコケノスケの声が頭に響いて来た。
「おー、コケノスケ、これから宜しくな。」
そこで、コケノスケに全員を呼ばせ、泉の水やや肉串や果物を食べさせつつ、今回の趣旨を説明した。
<何だ兄貴ぃ~、水臭ぇ~なぁ。それならそうと言ってくだせぇ~よ! 出入りか、拐かしかって思って、無駄に戦っちゃったじゃないっっすかぁ~。>
とコケノスケが嘆く。
「バカ野郎、お前が全然聞く耳を持ってなかったからだろう? まあ、良いやそれなりに面白い戦いだったしな。ハハハ。」
と俺が笑うと、コケノスケも「コケケケケ」と笑っていたのだった。
コケノスケとの交渉は順調に進み、一族全員でやって来る事となった。勿論無精卵に関して貰える事にもなっている。
その代わりと言ってはなんだけど、こちら側も幾つか条件を飲む事となった。
元々このシマ(島)だが、やはり俺の睨んだ通り、丸っこい形だったらしい。それが長年の地震や浸食で、現在の形まで面積が減ったそうな。
シマの食料が徐々に不足し、海産物に手を出したらしいのだが、イセエビは卵の殻の強化にも役立ち、味も栄養も豊富なので、お気に入りなんだそうで。
だから、常設型ゲートを作るのであれば、それを使って、自由に島にも来て漁をしたいらしい。
勿論、俺もその方向でいたのだから、了承した。
そう、前に発見した5つの島とこの三日月島を漁の基地にして、漁師達を通わせる方向にしようと考えているのである。
そうすれば、他の国とかのバッティングも無いし、各島には宿舎とかを設置しておけば、もしもの際でも宿舎に避難出来るという算段である。
海さえ面した土地があれば、島であれ、大陸であれ、関係無いしね。この6つの島があれば、今いる漁師達が全員漁業に就いたとしても十分賄えるであろう。
足り無ければ、また島を見つければ良いだけの話である。
ただね、若干問題というか想定外だった事もある。
コケノスケ達の数だ。
俺達を襲って来た20匹(正確には22匹だったが)は雄で、雌や子供らを入れてもそれ程の群ではないと考えていたのだが、蓋を開けると、凄い数であった。
現在孵化を待つ卵を含めると、軽く5000羽を超えていたのである。
<フッフッフ、ちょっと頑張り過ぎちゃってなぁ>
と照れた様に言ってたが、そりゃこれだけ狭い場所でこれだけの数が居れば、餌も足り無くなるよなぁ~と呆れてしまったのだった。
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