第195話 ひょっこり三日月島

翌朝目覚め、朝食を取りながら打ち合わせをする。


「兎に角、島へ行く手段は飛行魔法しか無いから、俺一人で取りあえず島まで渡って、それからゲートで繋げてみんなで上陸って感じで良いよね?」

俺が説明すると、コルトガさんもアケミさんも渋々ではあるが、納得してくれた。


まあ、事実上それ以外には手が無いんだよね。

それに島を探すなら、上空からは一番手っ取り早いしね。



「じゃあ、行って来るから、一応安全にだけは気を配って待っててね。コルトガさん魔物からの防衛とか宜しくお願いしますね。」


朝食が終わって一休みした後、俺は朝の爽やかな空へと飛び上がった。

マッコイさんの話では10kmちょいって所だし、それほど発見し辛いサイズでも無さそうであった。


上空100mぐらいを飛んで居ると島が見えて来た! 島が!! しかも1つでは無く、5つ程の島が……。



「おいおい、1つじゃないのかよ!!」


魔力と気配を察知してみると、どの島にも反応があるのである。

どの島にも未知の魔力反応があり、ウーコッコーの魔力の特徴が判らないので、どれがどれだかは判らない。


どの島もだが、直径5km~10kmぐらいで、そんなにサッと調べられるサイズでは無い。

取りあえず、1つの島に降り立ち、全員をゲートで連れて来る事にしたのだった。


「という訳で、島は5つ在りました。」


「じゃあ、全部を調べるしか手が無いという事ですかね?」

とアケミさんが聞いて来た。


「うん、そうなるね。運が良ければ、最初の島で発見出来る可能性もあるね。」


「主君、手分けした方が早いのでは?」


「ああ、そうか。それもありだな。 じゃあ、コナンさんとコロ、コルトガさんと黒助、俺とアケミさんと子供達とピョン吉の三手に別れるかな。」


「お、オッケーだな! だな!! 美味しい卵見つけるんだな!」

と何時になく積極的なコナンさん。だが待て! 見つけるのは卵では無く、ウーコッコーである。


「コナンさん、見つけるのはウーコッコーだからね? 卵の生みの親ね! あと、卵を見つけても勝手に食べたりしないでよ?

機嫌を損ねると、拠点に来てくれなくなるかも知れないからね?」


「う…… だ、大丈夫だな!」

と目を逸らすコナンさん。一抹の不安が過ぎるが……。



2つの島にそれぞれのペアを送り込み、俺とアケミさんと子供らとピョン吉で、この島を探検する事にした。

まあ、動物だと誰かが島に連れ込むか、渡り鳥の様に空を飛ぶか、泳いで来るか、又は陸続きの間に移動して取り残される以外では動物は居ない筈だが、魔物に関しては魔素溜りがあれば自然発生したりするので、その限りでは無い。


鶏はほぼ空を飛べない訳だが、ウーコッコーはもしかして飛べるのだろうか? 更に言えばイセエビを食べてたって事は、もしかして泳げるのかも知れないな。ペンギンみたいに?

いやぁ~、幾ら何でもそれは無いか。ハハハ。


2時間掛かりでこの島を調べたが、魔物自体は居るが、ウーコッコーでは無かったし、羽の1本すら落ちて居なかった。

他の2組も従魔経由で連絡が入ったが、スカであった。残るは島2つである。コルトガさんチームとコナンさんチーム合同で1つの島に送り込み、残りを俺達がまた調査する。




「という訳で、5つ共にスカって事だったんだけど、何処かに形跡とか無かったよね? 見落としとかは無いよね?」


「うむ、羽も巣の形跡も無かったですな。」

とコルトガさんが言うと、コナンさんも頷いている。


「絶滅したのか、他へ移り住んだとか?」


「うーん、アケミさんの言う様に俺もそれは考えたんだけど、そもそも魔素溜りがあれば自然発生するんでしょ?

それに今見た5つの島に脅威となる様な魔物って居なかったし、絶滅は無いんじゃないかな?

あんなにデカいイセエビを捕まえて食える程の魔物だしなぁ。」


「主君、もしや他に島があるという事は?」

とコルトガさん。

ふむ、調べてる場所がそもそも違うのか? ありえるなぁ。


そもそもだが、マッコイさん達はどうやって島へ渡ったのだろうか?

そう考えると、出発点が崖ではなかった可能性が考えられる。

地理的な物を考えると、スタート地点がもっと西の海岸線から船で渡った可能性もあるか。

健二達は一旦崖までゲートで戻り、周辺を探索すると、西側と東側に続く獣道を発見し、西側は先が長い感じではあるが東側は比較的にすぐに辿り着きそうであった。

という事で、今回の正解は多分西側かな。

西側の獣道を進んだ先は徐々に下って砂浜になっていた。

丁度湾の様な形状で、雰囲気は洋画に出て来る秘密の小島の湾そのものである。


「なるほど、これなら人目に付かないし、最高だよねぇ。

夕暮れまで後1時間はありそうだから、先に一っ飛びしてチェックして来るね。」


砂浜の奥にテントを出した後、俺は水平線に近くなった太陽が染め始める空を北へ飛んで行ったのだった。


先程の島より距離はあったが、19km程飛んだ場所に、波間のひょっこりと浮かぶ、本来なら直径15km程はあろうかという島があった。

本来なら……とは、この島の形が三日月型であるからだ。

三日月型なので、2/3程は欠けてしまっている。

どうやら海流が特殊な様で、三日月の欠けてる部分に対しての波が激しい。

もしかすると、その波の影響で元々丸い形だった島が削り取られて行ったのかもしれないな。


島の海岸線には、砂浜と石畳の様な波の浸食を受けた岩場が存在しており、何やらその岩場辺りで飛んでる奴が居る。

そして、大きなイセエビを咥えた何かが海から飛び上がって来たよ?


「あ、あれがウーコッコー!?」

思わず上空で感動に打ち震える俺。


苦節数ヶ月? やっとこれまでの苦労が報われる瞬間である。

よし、ここは、一先ずピョン吉大先生に通訳をして貰わねばなるまい!


俺は直ぐさまゲートで砂浜に待つみんなの元へと戻り、満面の笑みと共に発見を伝えたのだった。

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