第191話 魔王四天王参上

一夜明け、何故か朝から魔王さん御一家が突撃して来て、今屋敷の食堂に居る訳なんだが……。


「朝食はまだかいのぉ?」じゃねーんだよ!!


「お爺ちゃんさっき食べたでしょ?」って追い返す訳にもいかず、何かワクワク顔で、エラく期待されているっぽい。

どうしようか? と朝から悩んだ結果、イメルダ料理の和定食を作って出してみた。


「なんと、ケンジ、本当にお前が作ってたのか!」

と驚く魔王さん。


「いや、既に昨日そう言った筈だけど?」

と俺がシラッとした雰囲気で答えると、


「だって、見栄張っただけだとおもったんだもん!」

と口を尖らせていた。


おいおい、いい歳したピンクの鳥の巣頭で、『だもん』じぇねぇーだろ!! ちょっと面白いけど。プププ……。



すると、奥方様が、

「ほらね? あなた。 私の言った通りでしょ? 良いわねぇ~、美味しいお食事を作れる殿方って、素敵だわぁ~。 アケミさんが羨ましいわぁ~。」

と言いながら、チラチラと魔王さんの方をこれ見よがしに見ながら毒を吐いている。


「お、俺だって、り、料理ぐらい作れるもん!」


「あら、貴方の料理って、真っ黒焦げになった目玉焼きだった物かしら? あれは食べられないわよね?」

と奥方様が魔王さんの反論を迎撃していた。


何でも、魔族って強いのは当たり前で、料理男子がモテるらしいのだ。

へぇ~、そりゃあビックリだな。

自分の前世を振り返り、その違いに苦笑いをしてしまう俺だった。




朝食を終えると、やっと本来すべき魔物異常対応の話になった。


「ケンジ達はどうするつもりなのだ? 我らは、取りあえず、四天王と兵を少し送り込む事にしたんだけど。」

と魔王さん。


四天王!? ほぅ~、何か新しいキーワードだが?


「へー、四天王って初めて聞くけど、ひょっとして魔王国の秘密兵器的な存在なの?」


「ヘイヘイ、良く聞いてくれたぜ、ブラザー! 正式には魔王四天王って言ってな、滅法強いんだぜ!」

とノリノリに説明してくれる魔王さん。


「ほほぉー、四天王とな! 主君、某一度死合してみとうござます!」

とコルトガさんが食い付いて来た。


「だが、待て! コルトガさん、ちょっと今のは『しあい』の字が違った様な気がするぞ!」


「気の所為でござる。」と視線を逸らすコルトガさん。


「まあ、しかし四天王が居るなら、殲滅戦も楽になるね? うちからも、俺とコルトガさんと従魔で参加するか。 あ、コナンさんどうする? 魔族の精鋭部隊中の精鋭の戦いが見られるよ?」

と俺が声を掛けると、


「さ、参加するんだな!」

と手を挙げていた。


ほー、珍しいな。コナンさんが戦いに自ら参加表明するとは。


「あ、あのぉ~、私は?」

とアケミさんが半分手を挙げて聞いて来たが、


「あ、ゴメン、アケミさんは子供らの面倒を見ていて欲しいんだよね。 流石に放ったらかしには出来ないし。」

というとシュンと下を向いてしまったのだった。


すると、横から梳かさず奥方様の横槍が入って来たのだった。


「あら、子供達の事が心配だからなの? ウフフ、じゃあ私が魔王城で面倒見ていてあげるわよ?」

と。


すると、急にパッと顔を上げて嬉し気な顔で俺を見つめて来るアケミさん。


えーー? いや、それだけじゃ無くて、元々アケミさん戦闘系じゃないんですけど?


「えーっと―― あ、アケミさんも戦いたいの?」

と聞くと、


「えっと、戦いたいよりというもですねぇ……ゴニョゴニョ」


後半が聞こえない。


「あー、もう焦れったい!!!! 一緒に居たいって事でしょ? ウフフ、若いって良いわねぇ~。」

とご満悦の奥方様。

アケミさんは、耳まで真っ赤にして照れているし。


「うーん、判った。 判りました。 じゃあ、アケミさんもお願いね。そのかわり、戦いに行くからには、絶対に全員生還する事が必須条件だからね? 誰一人死なせないから。」

というと、コルトガさんもコナンさんもアケミさんも力強く頷くのだった。



それからは慌ただしく、魔王四天王と顔合わせを行い、軽く手順の打ち合わせを始めた。

結局現地へは俺のゲートで直接あの最後に居た場所へ行く事となった。

魔族にもゲートの使い手は居ないらしく、非常に羨ましがられた。

まあ、出来れば秘密にしておくべき情報だったのだが、状況が状況であったのと、ある意味今後の常設型ゲートの方が秘匿性が高いので、隠れ蓑にもなるかと開示したのだった。

ちなみに、魔族のなかには、転移魔法が使える者も居るらしいので、イメージ次第ではゲートも使える様になる可能性は高い。


で、魔王四天王だが、これがまた凄く濃い人達でね……。


1人目は、魔斬のラングさん。魔王国きってのジジイ剣士で、古くから魔王国に伝承されている炎を纏う魔剣の大剣を軽々と扱う化け物。

二つ名が『防御不能の切断魔』という恐ろしい物である。 しかし、纏う空気がコルトガさんと激似というか、何処か先祖でDNAが重なっている気がする。


2人目は、魔槍のロシュタットさん。見た目が30代後半ぐらいだが、実際は俺とアケミさんとコルトガさんの歳を足しても全然足りないぐらいの御年らしい。

で、この人の二つ名が、『千本槍の突撃魔』とか『串刺しマシン』とか『ミンチ職人』とか言うらしい。まあ二つ名を聞いて判る様に、余りにも槍を繰り出すスピードが早くて1000本の槍を同時に使っている様な状態になるらしい。

勿論それを受けた相手は、ミンチになるし、どんな盾でも貫通させて穴だらけにするという。


3人目は『マッドドッグ』や『肉体兵器』という二つ名を持つ魔装のマッコイさん。 肉体兵器というだけあって、身体強化や身体加速に加え、魔力装甲という魔力の全身鎧を身に着け、格闘戦を得意とするドッグファイターである。

相手が10m圏内に居れば、確実にグシャリと素手で壊されるらしい。 怖っ!!


4人目は紅一点、多彩な範囲魔法攻撃を得意とする美魔女カサンドラさん。 滅茶苦茶美人で見事なプロポーションをお持ちなのだが、もう少し隠して欲しいところだ。

そして、彼女の二つ名が実にヤバい。『千魔の肉食獣』や『マン・イーター』やら『魔法が使える女豹』とか、ほぼ魔法に関係無い二つ名が付いている。

そう、倒した敵の数より、ベッドで廃人にされた男性の数の方が多いという逸話さえある、凄いヤリ手なのだそうで。


最初に紹介された際に、「あら、魔王ちゃん、この子くれるの?」と俺の顎を手で撫でられて、思わず「ヒィッ!」と悲鳴を上げてしまったのだった。

俺は、ガクブルしながらコナンさんの大きな背中に隠れたのだが、そうしたら、今度はコナンさんを見て、ペロリと舌舐めずりしながら、

「あら、貴方今までに無いタイプねぇ。美味しそうじゃない!」とコナンさんのお腹を撫で撫でしていたのだった。


怖っ! 怖すぎるよ!! 魔王さん、これ本当に戦力的な意味での四天王なんだよね? 最強戦力なんだよね? と問い詰めたくなった程であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る