第177話 勧誘大作戦
向こう岸で渓谷から離れると、徐々に草原へと代わって行く。
ここら辺の地形は割とアップダウンのある草原で、所何処に湧き水や川があったり、木が生えていたりと、ピクニックに持って来いのロケーションであった。
丘の上で、一旦馬車を停めて辺りを見回すと、かなり距離の離れた所にある水場周辺にもの凄い数の一群を発見した。
「お! もしかして、あれがタンク・カウなのかな?」
白黒の斑模様なのや、全く毛色の違うベージュが水場に群がり、草原で休みながら草を食べたりしている。
数は多すぎて、もはや数える気すら起きない。
視力を強化してジックリ観察すると、どうやら、2種類?の種が混じっている。
白黒斑模様がタンク・カウで、その中に混じっているベージュ色の毛がフサフサしているのが、アンゴラ・シープだと詳細解析Ver.2.01大先生が告げている。
「なるほど~、タンク・カウもアンゴラ・シープも共存しているのかぁ。」
「主君、もしかして一気に2種類発見ですかな?」
「ああ、どうやらそうらしいね。 これはなかなかにラッキーだけど、流石にあれだけの数……全部は連れて行けないよねぇ。」
「ですなぁ~。2日ぐらいで餌の草を全部食い尽くされて終わりそうですな。ハハハハ。」
「どれ位の数が居れば良いのかな?」
「さて、どうでしょうかの? コナン、どう思う?」
「と、取りあえず、雄30、雌100ぐらいで良いんじゃないかな? かな。」
<主ーー、俺達で話つけてこよーか?>
とピョン吉からの提案があった。
<そうですぞ! この黒助、この時を待っておりました!>
なんか、黒助の喋り方がコルトガさんっぽくなってて思わす笑ってしまう。
あのブートキャンプ辺りから、コルトガさんに懐いて居たのでその影響なのか?
<追い込みなら任せてーー!>
とコロもヤル気満々。
「そうか、じゃあピョン吉達にお願いしようかな? コロ、追い込んじゃダメだぞ? 取りあえず、話し合いでな?
安全でノンビリ暮らせる場所を提供出来る代わりに、タンク・カウにはミルクを、アンゴラ・シープには毛を別けて貰う感じで交渉してくれる?」
<食べないの?>
と物騒な事を聞くコロ。
「おいおい、物騒だな。
食べる奴にミルク別けて貰えるとは思えないけど?
確かに美味しいらしいけど、そんな気は無いぞ。 共存を希望する。 厩舎も提供出来るし、冬の間もちゃんと餌を確保するぞ。」
<判った。伝える。>
そして、3匹が飛ぶ様な勢いで、駆け出して行ったのだった。
こちらから3匹の様子を見て居ると、水辺の溜まり場へ一直線向かって行き、ブモーーとかメェーとか鳴きながら群が避ける様に退いて行き、やがて、一際大きなタンク・カウとアンゴラ・シープの個体が対峙している様子である。
しばらく5匹で対話して居る様子であったが、ピョン吉から連絡が入った。
<主ー、話付いたよー! ただね、結構な数がこっちに来たいって言ってるんだけどどうする?>
頭に響いて来る問いに、一瞬考えつつ、
<ありがとうな。で、具体的な数はどれくらいなの?>
と聞いてみると、全体の1/3程だそうで。
<あとねぇー、ゴールデン・シープも来るって言ってるらしいよー?>
マジか!!!
<おお!!!マジか! デカした! OKしてー!>
「聞いてくれ! 交渉成立して、1/3とゴールデン・シープも来るらしいよ!」
「「「おぉーーー!」」」
「金色の羊しゃん? わーーい!」
「凄いなぁ、ピョン吉ちゃん達。」
と全員が歓声を上げたのだった。
早速、俺は一旦ゲートで城に戻り、スタッフに報告を入れ、受け入れ体勢を整える為、放牧エリアを拡大し、牧草の種を蒔いて大地の息吹を掛け、数カ所に泉を設置したりと、1時間半程飛び回った。
その間にステファン君と元祖村長が放牧エリアの管理係の人を更に増やしてくれたので、後半は楽になったけど。
そして、準備が完了すると、みんなの待つ馬車までゲートで戻ったら、既に馬車の近辺はモーモーメーメーと大合唱になっていた。
「おお、主君、やっとお戻り頂けた。 もう今か今かと五月蠅くて参っておったのです。」
流石のコルトガさんも困り顔だったので、ちょっと笑ってしまった。
「ゴメン、準備してたから。じゃあ、今からゲートを潜って移動してくれる?」
<その前に一旦代表者3名が向こう側を確認したいって言ってるよー>
とピョン吉が報告して来た。
「ああ、じゃあ、リーダー3匹を俺の従魔にして直接話しようか。」
と出て来た群のリーダー3匹を従魔にし、タンク・カウをタンクロウ、アンゴラ・シープをアラゴン、ゴールデン・シープを金太郎と名付けた。
<初めましてだモー!>
<主、ヨロピク!>
<俺、金太郎か、なんか変わった名前だね。>
「みんな宜しくな! じゃあ3匹は後に続けて向こうを見てみてくれる?」
と3匹をゲートで拠点の放牧地区へと連れて行った。
「どう? こんな感じにしてみたんだけど。」
<良いんじゃないかな?モー>
タンクロウはパッと見たぐらいで、了承しているけど、割と大雑把なんだろうか?
<水飲み場も多いねぇ、良いじゃん良いじゃん。で、どんな餌くれるの?ワクワク>
アラゴンは、逆に好奇心旺盛で、ノリが軽い。
<ああ、食べ物は重要だよね>
金太郎もアラゴンに同意している。
放牧エリアのスタッフに餌となる干し草やトウタケの出涸らし、牧草を見せて味見させると、トウタケの出涸らしを絶賛している。
更に果物でも何でも食べるという事で、
「これはたまにしか上げられないけど、こんなのもあるよ?」
と例の果物を一通り味見させると、これまた絶叫。
<モー堪らん!>
<ウマウマですよ!>
<わー、良い毛が生えそうだよ?>
と騒いでいた。
「いや、これ、たまにしか出せないからね? 本当に。
あと、厩舎がこっちのこれだよ。広さも数も十分に用意してあるし、増えたら、また建てるからね。
この厩舎があれば、冬も雨の日も寒くないから。」
と説明するとこれまた喜んでた。
<いやぁ~オヤジから、お前行け!って言われた時はどうなるかと思ったモー>
<ああ、それは僕もね。>
<ある意味、これは当たりだったね。良い主だなー!>
と3匹がワイワイと話し込んでいた。
「あのぉ~、そろそろ向こう側で痺れを切らしてると思うから、一族を連れ来てくれるかな?」
と急かすと、再度繋いだゲートを通って直ぐにゾロゾロと大群を引き連れて戻って来た。
ちょっと計算外だったのは、ゲートの接続時間。
これがさ、移動に30分近くかかったもんだから、予想以上に魔力をガッツリと持って行かれちゃってね。
やっと馬車に合流した時は、総魔力量の半分を消費していた。
「ふぅ~、結構大変だった。長時間繋ぎっぱなしは、やはり堪えるね。魔力的に。
みんな、お疲れ様! そしてピョン吉、コロ、黒助、大役ありがとうね。助かったよ。」
とお礼を言うと、ピョン吉から
<ご褒美は?>
と角でウリウリされたのだった。
3匹にご褒美の肉串やドーナツ等を献上し、みんなで存分にモフモフしてやったのだった。
残る目標はウーコッコーだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます