第174話 美味しいラーメンの為に
翌朝朝食を取ると、西門から出て、暫く進んだ辺りで街道からコースを離れ北西に進路を取った。
目指すは『竜の墓場』である。 温泉である!
そうか、温泉卵も食べたいよなぁ。 出来ればウーコッコーの卵で!!
先日、アケミさんと卵料理の話をして以来、無性に卵料理が食べたくてしょうが無いんだよね。
卵料理と言えば、まあ直接卵メインじゃないけど、醤油ラーメンに入った煮玉子も堪らないよねぇ。
あと、おでんの卵も堪らないな。 まあ、おでんは冬の楽しみに取ってないとだな。
あとは、すき焼きもだな。 グフフフフ!!
ウーコッコーは、肉も素晴らしい濃厚な味するらしいので、おそらく骨からも良い出汁が出るであろう。
だが肉を食ってしまうという事は、卵が手に入らなくなるので、そんな勿体無い事は出来ないのだが、鶏ガラスープとかでラーメンとか作ってみたいよなぁ。
尤も、その前に立ちはだかる麵作りの問題もあるけど。
うどんぐらいは打った事があるが、流石にラーメンの麵は経験が無いので、難しいかな。
記憶では、確かカンスイ(かん水)とか言う物が要るって話だったと思うのだが……。
健二の頭の中で、食の妄想は尽きる事無く色々な物へ発展して行く。
こうして妄想していると、ハッと思い出す食べ物があったりするのだが、それをこちらの世界で再現する事が、一つの課題とし活力となったりしている訳である。
そうこう妄想を楽しんでいる内に、魔物の反応が多くなって来た様だ。
さあ、ラーメンの具材集めの時間だな! あれ? 違ったっけ?
「なあ、ピョン吉、コロ、黒助、あとマダラもB0も聞いてくれ。
これから探すのは、タンク・カウ、アンゴラ・シープ、ゴールデン・シープ、ウーコッコーの4種別だ。何か反応とかあれば教えてね。」
<主、僕どれも見た事ないよー。>
<見た事ないねー>
と知らない様子の従魔達だったが、マダラだけは
<僕はタンク・カウしってるー>
と。
「え!? マダラ、マジで!? 何処で見たの?」
<ごめんー、忘れたーー。 でも匂いは覚えてるよー>
なんだよ、昔の話か。まあ匂いを嗅げば教えてくれるだろう。
今回初参加の黒助だが、初参加という事で、実にヤル気を漲らせている。
「あ、そうそう、今回は捕獲が目的で、討伐じゃないからね? 怪我させたり、殺したりしないでね!」
<<<<<了解ーー>>>>>
魔物の気配感知範囲を広げる為に、俺は御者席に、従魔達は馬車の屋根に移動している。
魔力感知と気配感知の環を広げ広範囲に索敵して行く訳だが、最近ではかなりその精度も上がって来たお陰で、大体一度対戦した相手の種族は判別が出来る様になった。
草原の道無き道を走っていると、ホーンラビットや、スライム、ブッシュ・ボア等様々な反応を拾っている。
「しかし、反応が多いけど、ウーコッコーだと、草の影に隠れてしまって判りにくいよね。サイズ的に。
生態が良く判らないから、何処を探せば良いのか、判らないなぁ。」
見たところ、草むらから身体がはみ出しているのは、ボア系等で、同程度のサイズであろうアンゴラ・シープやゴールデン・シープも、巨大なタンク・カウも、姿は見えて居ない。
もし居るとすればウーコッコーであるが、鶏より一回り二回りサイズが大きい事以外は不明なのである。
鶏同様に空はほぼ飛べないとされているが、ソコソコのジャンプ力はありそうである。
空を飛べないという鶏だって、お袋の実家で飼っていた鶏は、屋根に飛び上がって、元気に鳴いていたしなぁ。
ん? という事は、ウーコッコーは案外木のある所に巣くっていたりするだろうか?
と思って左側の向こうにある森……『魔宮の森』を見つめる。
目撃例が少ないので過小評価されてるけど、もしかして魔宮の森で生存する程に強かったりして? まああり得るよな。
そもそも魔宮の森には冒険者も近付きたがらないし。
森の方にはかなりの群の反応はあるが、大半はウルフ系であったり、コボルト、オーク、オーガ等である。
視力と聴力も強化して、鳴き声も拾おうと頑張っているのだが、やはり速度を落として貰っているとは言え、走行中だと音を拾うのはなかなか難しい。
結局、一旦馬車を停め探索し、また進んで探索しを繰り返し、少しずつ進む事にしたのだった。
俺は、空中から、森と草原の狭間辺りを探索しつつ徐々に進めて行く。
俺もコルトガさんもコナンさんもある程度間隔を空けて探索していて、出て来た魔物は仕留めて収納を繰り返している。
昼時になったので、一旦馬車に戻り、全員で昼食を取り、一休みが終わると、また探索を再開する。
夕方まで探索を続けたのだが、関係無い魔物は大量に仕留めたものの、お目当ての物は全く影も形も発見出来ずに初日が終わった。
やはり、ラーメンへの道は奥深く険しいのだった。 あれれ?
翌朝も朝食を終えると、探索を開始した。
午前中一杯もスカ続きで、とうとうそのまま竜の墓場へと到着したのだった。
「なるほど、これが竜の墓場か。 フッフッフッフ。」
と不敵に笑う俺。
「うわぁ~、何ですか、この匂い。 なんか卵が腐った匂いそのものですねぇ。」
とアケミさんがその端正な顔を歪めている。
「けんじ兄ちゃん、臭~~い!!」
とサチちゃんも叫ぶ。
「コラ! ちょっと待てよ! サチちゃん、その言い方だと、何か人が聞いたら、俺が臭いみたいだからね?
俺、ちゃんと毎日風呂も入っているし、歯だって磨いてるし、毎日クリーンだって掛けてるからね?」
と『臭い』という単語に敏感なケンジが必死に反論する。
そうは言いつつも、一応念の為に脇の下の匂いをチェックするという動作までがワンセットである。
「えー、ケンジ兄ひゃんがくぅしゃい訳じゃはいお(ケンジ兄ちゃんが臭い訳じゃ無いよ)」
サチちゃんは鼻を摘まみながらフォローしてくれた。
目の前には、大きな渓谷が横たわっていて、聞いた様に異様な匂いを放っている。
硫黄だけに。プププッ。
頭の中で考えた渾身のオヤジギャグにバカウケする残念なケンジ。
ただ、これを人前で披露しなかった事だけが救いであった。
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■■補足■■
本文中で、硫黄の臭いとして、卵の腐った様な匂いと取れる書き方をしておりますが、
硫黄自体は無臭で、
温泉地等でする卵の腐った匂いを放っている物は『硫化水素』だそうでして。
『硫黄』自体ではなという事なので、補足説明させて頂きました。
※また、情報を教えて下さった読者様、ありがとうございましたm(__)m
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