第170話 至高の卵料理

「ケンジしゃまーーー!!」

とプライスレスな笑顔で出迎えてくれるユマちゃん。


「お、元気だね! あ、この子はね、サチちゃん。 ユマちゃんと同じ歳かな? 仲良くしてあげてねー。

そして、この子は、リック君。サチちゃんのお兄ちゃんだよ。」


「わーーい、お友達ーー!」

「なかよくしよーねぇーー!」

と幼子2人がキャイキャイと飛び跳ねている。


「ケンジ様、お久しぶりです。 流行病の際には、色々とありがとうございました。」

とジョンさんも笑顔で出迎えてくれた。


「お久しぶり。みんな変わりない? ああ、紹介するね。

こちらは、新しいスタッフの面々だよ。 コルトガさんにコナンさん。2人共優秀なんだよ。」


「初めまして、ジョンと申します。 宜しくお願い致しますね。」


「うむ。某は、コルトガと申す。縁あって主君にお助け頂き、主君の騎士となった者。

若輩者故、宜しくお願い申す。」

と握手を交わすジョンさんとコルトガさん。


「ぼ、僕は、こ、コナンなんだな。だな! よろしく?」

とちゃんとご挨拶が出来ていた。 うんうん、偉いぞ!




別荘で休憩を挟んだ後、俺はアケミさんと冒険者ギルドへ、コルトガさんとコナンさんはドワースの街を散策へ出掛けたのだった。

一応コルトガさんとコナンさんには各自自分の着替えなんかを購入しておくようにお願いして、お金を多めに渡しておいた。

なんか、服以外の物に変わりそうな予感もするんだけどねぇ……



久々にドワースの冒険者ギルドに入ると、ロビーにはピーク時間外なので混んではおらず、4パーティぐらいの冒険者しか居なかった。

パッと見、知った顔も居らず、そのままカウンターへと向かう。


カウンターにいつものお姉さんの姿は無く、知らない受付嬢しか居なかった。

過去の嫌な思い出が頭を過ぎったので、そのままスルーして買取カウンターの方へ進み、ロジャーさんの姿を見てホッと一息。


「ああ、良かったぁ~。お久しぶりです。ロジャーさん。 受付カウンターに知った顔が居なかったので、こっちに来ちゃいました。

ついでに、買取お願いして良いですかね?」


俺が声を掛けると、嬉しそうな顔で出迎えてくれた。


「おお!ケンジ君じゃないか! ご無沙汰し過ぎだよ! もっと小まめに来てくれないと!!

そうそう、ケンジ君! ギルドランクが上がっているから、冒険者カードを交換しないといけないんだよ。」


「えっと、じゃあ先に買取素材を倉庫に出しに行って、ちょっと後で尋ねたい事もあるので、カードの方は一緒に纏めてで良いですかね?」


「ああ、それで良いよ。 あ、アケミさんだったよね? そっちもランクアップするから、カードを後で出してね。」



という事で、倉庫の方に場所を移し、溜まりに溜まった素材の一部を放出した。


「ストップ、ストップ。 も、もうこれくらいで勘弁してーー! ハッハッハ。いやぁ~相変わらずだね。」

と早々にギブアップされてしまった。

倉庫のおじさんも青い顔をしていたが、ここは一つ頑張って頂きたい。


ギルドカードを渡した後、サンダーさんも逢いたがっているとの事で、ギルドマスター室へと向かい、久々のご挨拶をする。


「おーー! やっと来たかぁ。 随分ご無沙汰じゃねぇかよ。」


「ご無沙汰してます。お元気そうですね。」


「おう、お陰さんでな。 お前さん所の若いのが結構色々やってくれるんで、こっちは大助かりしてるぞ。ハハハ。

他の支部からは、結構羨ましがられてなぁ。 酒が美味いぞぉ!」


いつもながらの渋い雰囲気のイケオヤジが笑顔で出迎えてくれる。


「で、何だって? 何か聞きたい事があるって話だが?」


「ああ、そうそう、魔物の生息地の情報を持ってないかと思って来たんですよ。

えっと何だっけ?」

とアケミさんの方を見ると、


「タンク・カウ、アンゴラ・シープ、ゴールデン・シープ、ウーコッコーですね。」


「あれ? 種類増えてない? まあ良いか。 その4種類の生息地って何処かありますかね? ちょっと個人的に欲しくて。」


「はぁ~、またえらく、レアなのから、ヤバいのまで揃ってるなぁ。」


サンダーさんは驚きながらも、ステファニーさんに言って、目撃情報等を教えてくれる事になった。


「まあ、纏めるのに1日程時間が欲しいから、回答は明日で良いか?」


「ええ、大丈夫です。 ああ、情報料は今日の買取の分から引いて置いて下さいね。」


「ハハハ、お得意様だから、そこら辺はサービスだよ。」


「ありがとうございます。」


それから、少し世間話をしている間に手続きが完了し、真新しい俺のSランクのギルドカードとアケミさんもCランクのギルドカードを受け取ってギルドを後にした。

幸いな事にロビーを通る際にも何も絡まれずにギルドを出る事が出来たのだった。



「目撃情報ありますかねぇ?」

とアケミさんがギルドを振り返りつつ、呟いていた。


「どうかな? 良くは知らなかったけど、あれってレアなの? それにウーコッコーってどんな魔物なの?」


アケミさんの話では、どうやら、ゴールデン・シープとウーコッコーがレアなんだそうで、他は割と群で目撃される事があるらしい。

ウーコッコーとは、鶏系の魔物なんだそうで、サイズは一回り大きい感じで、濃厚で美味しい卵を毎日産むんだとか。

その卵1個は小金貨1枚で取引される程にレアなんだそうだ。

しかし、かなり凶暴で、群で行動する為、1匹1匹だとBランク程度なのだが、群だと10匹でAランク相当だそうで。


「ほー! そんなに美味い卵なのか! わぁ~食べたいなぁ。」


「ええ、オムレツとか作ったら、さぞかし美味しいでしょうねぇ。 まあ1個で小金貨1枚ですから、卵5個ぐらいでオムレツ作ると、凄い金額ですよね。フフフ。」


「まあ、オムレツも良いけど、そんなに美味しい卵なら、是非とも卵掛けご飯で食べたいなぁ。」


やっぱりさ、至高の卵料理って、俺はTKGだと思うんだよね。

出汁巻き卵も良いし、ベーコンエッグも大好き。

チーズ入りのオムレツも美味しいし、それを使ってトロトロフワフワのオムライスも美味しいけど、やっぱり最高にホッとするのは炊きたてご飯で作る卵掛けご飯だな。


頭の中で想像しているだけで、涎が出て来てしょうがないな。


「ああ、確かに卵掛けご飯――」

とアケミさんも想像しているらしく、ニマーっと口元が緩んでいた。 フフフ……。


「うん、是非ウーコッコーを捕まえたいね!!」


「はいっ!」

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