第158話 天岩戸作戦
いよいよご対面である。
ここまでの罠を仕掛ける男だ、きっと凄く出来る男だよな。
名前から考えるとシュワちゃんみたいなマッチョっぽいけど……いや、罠だけに『未来少年』系かも知れないか!? ハハハ。
なんて頭の中で考えながらワクワクしていると、コルトガさんがドアをガンガン叩きながら、
「おーーーい、コナンやーーい。 出て来いやーー! 俺だーー! 無二の親友のコルトガが来たぞーーーー! おーーーい!」
と大声で叫びながらドアをガンガン叩いたり、足で蹴ったりと、遣りたい放題している。
「おいおい、幾ら旧知の仲とは言え、もうちょっと丁寧にノックした方が良いんじゃないのか?」
と俺が注意したのだが、
「いや、ソフトに叩いても出て来んのですよ。 あやつは大の恥ずかしがり屋よりという、何て言うんでしょうかね? あまり人と話したりするのが得意で無いというか。
まあ、過去に色々あったので、人と接するのが不得手と申しますか、余り人前には出たがらなくなってしまいましてな。」
と言いながら、この小屋の方をちょっと寂しそうな目で眺めて居た。
「そうか。まあそれじゃあ、やっとここに着いた事だし、庭の空いたスペースをお借りして、マダラ達を休ませてやる厩舎でも置いて、テントで一休みしようよ。」
俺は、勝手に庭の端の空き地に厩舎を置いて、マダラ達を休ませ、泉の水や餌や果物を出してやった。
その横に、テントとテーブルと椅子、それにBBQセットや簡易キッチンを出して行く。
「さあ、コルトガさんもこっちに来て一休みしようよ。俺達が来てるのは、もう伝わったんだろ?
じゃあ、ちょっと時間を置いて待ってみようよ。1週間でも2週間でも。
フフフ、なーーに、あの山で1ヵ月放浪する事に比べれば、楽な物だよ。」
「フフフ、そうですよね。穴に落ちる心配も無いですしね。」
と笑うアケミさん。
まあ、無理に引っ張り出したって逆効果って事もあるし、何となく自分に照らし合わせて考えてみた結果、気長に待ってみようかという事にした訳だ。
夕食の時間になると、久々に本格的なBBQを行う事にした。
肉はオークとミノタウロス、それに王都で仕入れたソーセージもを焼く。
付け合わせには、マリネサラダとポテトサラダを作ってみた。
一応、パンとご飯も用意した。
俺とアケミさんは勿論、ご飯である。食糧倉庫から出した焼肉のタレに付け込んだのを焼くと、匂いが素晴らしい。
「主君! これは堪らない匂いですな。食欲をそそりまするぞ!」
最初の頃は、俺が調理して、食べさせる事に対し、もの凄く恐縮しまくっていたコルトガさんだったが、俺の料理が完全に胃袋を掴んだらしく、今では感謝はするものの、下手に遠慮する事は無くなった。
「ケンジ兄ちゃん、この肉美味しいーー!」
「おいちいねー!」
と子供ら2人もバクバク食べている。
アケミさんも、肉でご飯を包んで食べたりして、幸せそうな顔をしている。
ピョン吉もコロも一心不乱にガツガツと食べて居る。
ある程度焼肉を楽しんだ後、今度は網の一部を分厚い鉄板に換えて、厚さ3cmぐらいにカットしたステーキを焼き始める。
スライスしたニンニクを牛脂(正確にはミノタウロス脂)で炒め、そのニンニクのエキスの染み込んだ脂の上に塩胡椒を馴染ませたステーキを置いて行く。
ジュワァーー と堪らない音と匂いが辺りに漂う。
頃合いを見て、肉を裏返すと良い焼き色が付いていて堪らない。
一旦蓋をして蒸し焼きにして、最後はブランデーを一振り掛けてアルコールを飛ばして完成である。
適度なサイズにカットした肉を全員に1皿ずつ配り、塩や辛子醤油等で食べる。
「「「「美味い!(美味しい!)(おいちー)」」」」
<主お代わりーー!>
<僕もーー!>
いつの間にか空には星が出ていたが、魔動ランタンの光の中、リクエストに応じてステーキのお代わりを焼いた。
「いやぁ~、これだけ美味しい肉は人生初でござる。」
と満足気なコルトガさん。
子供らとアケミさんは、完全に食べ過ぎ状態らしいが、幸せそうな顔をしている。
食後のそば茶を入れて、暫く休憩した後、後片付けをしてからテントに入ったのだった。
他のみんなは誰も気付いて居なかった様だが、ステーキの辺りで小屋の2階の窓に動きがチラリと見えていた。
どうやら気にはなっているようだった。
フフフ、天岩戸作戦だな。
◇◇◇◇
それから4日間、出来るだけ3食を外で作って外で食べて居た。
ピザ、パスタ、海鮮丼、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ハンバーグ、オムライス、牛丼、お好み焼き等、持てる力の限りを尽くし、料理を作った。
そう、これは既に俺とコナンとのお互いの意地を掛けた勝負である。
そして今夜、俺はついに禁断の秘密兵器を用意した。
「さぁ、今日の夕食は凄いよー!」
「何を作るんですか?」
とアケミさんがワクワクしながら聞いて来た。
「フフフ、それは秘密だよ。 ああ、でもアケミさんは知って居るかも知れないな。
まあ、マーラックにあるかは知らないけどね。」
俺がそう答えると、何だろうかと頭を捻っていた。
そう、堪らない匂いを放つ秘密兵器……それはウナギである。
既に串打ちをしたウナギを取り出し、網の上で丁寧に焼いて行く。
俺は、ある程度焼きが入ったウナギを、トールデンの鰻屋のオヤジさんに何度も頭を下げて別けて貰ったウナギのタレに付け更に焼く。
するとどうでしょう!? 辺り一面にウナギのタレと脂の絡まった美味しそうな匂いが漂い始める。
俺はそれとなく風魔法を使って、その匂いを小屋の方へと送り込んで行く。
「こ、これはもしや、ウナギの蒲焼きでは!?」
流石はアケミさん、大正解である。
「やっぱりアケミさんは知ってたか。フフフ、これさ、トールデンの鰻屋の秘伝のタレなんだよね。」
俺が自慢気に言うと、アケミさんが涎を垂らしそうな顔で覗き込んでいた。
他の3名も既にウナギとタレの焼ける匂いでウナギをロックオン状態である。
うな重用の重箱にご飯を入れて、焼けたウナギを置き、その上から軽くタレを掛け、蓋を閉めた。
所謂蒸らしの時間である。
鰻屋のオヤジさん曰く、このちょっとの間がご飯とウナギのマッチング時間らしく、重要だと教えてくれたのだ。
お吸い物を付けて、全員に配って、頂きます。
蓋を開けると蒸気が登り、堪らない匂いがまた強化される。
「美味しい! これがうな重なんですね!」
と初めて食べるうな重にアケミさんが感動している。
そして、アッと言う間に全員が完食し、誰ともなくお代わりが欲しいと言い出したのだった。
勿論作戦の為にも、お代わりを作る事に否は無い。第二弾を早速焼き始めたのであった。
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