第157話 心を抉る巧妙な職人芸
翌日も、早朝から出発し、まだ疎らな交通量の内に距離を稼いだ。
そして2時間程走ると、
「主君! ここに間違いござらん!」
とコルトガさんが通り過ぎた左後ろを指刺していた。
マダラ達に言ってUターンし、馬車を停める。
「えっと、道ないけど? 道の形跡すら無いけど、ここなの?」
「ええ、ここで間違いござらん。」
「ちなみに、根拠は?」
「某の勘でごさる。」
「………」
思わず唖然とするも、まあ他に頼るべき情報も無いので、突っ込んで行く事にしたのだった。
さてと、流石にここに突っ込むとなると馬車のままでは無理なので、徒歩かマダラ達に乗って移動する事になる。
道なんてないし……。
俺は、辺りを確認した後、B7を呼ぶ事にして、
<悪いんだけど、B7、こっちでちょっと手伝ってくれるかな?>
<アイ・サー! やっと俺達の時代だね?>
とヤル気を漲らせる。
直ぐにゲートでこっちに呼んで、馬車を収納し、3匹に鞍を付けて背に乗った。
俺はマダラ、コルトガさんはB0、アケミさんはB7に乗る。
リックとサチちゃんは俺とアケミさんが二人乗りする感じである。
ピョン吉とコロは自分で移動する感じである。
そして、俺達は颯爽と草が生い茂る藪の中へ突入して行った。
――――――
――――
――
結果から告げよう。
コナンと言う男、実に想像を絶する程の巧妙な罠師であった。
藪に突入してから、早一週間過ぎるが、日々巧妙な罠……いや、最早職人芸というか、趣味を突き抜けた様な仕掛けの連続である。
上手いと最初の3回ぐらいは思っていたよ? しかし、それが10回目くらいになると、ドンドンとグレードアップして行って、二度と同じ手は食わないぜ!とか思ってたその更に斜め上を突いて来るんだよ。
最初は落とし穴。次は落とし穴を避けた所に巧妙に隠された落とし穴があったり、それを避けた所の草が結んであって足を引っかけられ、倒れると落とし穴とか。
落とし穴に目が行って地面を注視していると、上から網が降って来たり、丸太が降って来たりと、遣りたい放題というか、ヤラれ放題。
3日目ぐらいには、その巧妙な心理を突く罠に魅せられている俺が居た。
「面白いな! おい!! コナン、面白過ぎるぞ?
これ、ある意味アミューズメントパークに出来るんじゃないか? いや、これは下手な忍者屋敷の見学よりも面白い。」
「ガハハ、なかなか巧妙でござろう? あみゅずなんちゃらとは知らぬので何とも言えませぬが。」
と落とし穴から這い出て来る泥だらけのコルトガさんが白い歯だけをキランと見せながら笑っていた。
「これだけヤラれると、普通の人間なら気を削がれるよな。」
「ええ、心を折られますよね。私は既に折れてますけど。」
「アケミねーちゃん、がんばれーー!」
アケミさんが、サチちゃんに励まされていた。
「しかし、1週間過ぎても辿り着ける気がしないのは如何な物なのか?
まあ、割と罠や迷いを誘う心理戦的な看板が面白いから良いんだけどね。」
そう、看板というか道案内の矢印とかがあったりするんだけど、これが結構悪質で、「我が家はこっち?→」とか、矢印の方へ行くと、「ばっかじゃねぇ? 教える訳ないじゃん。今時子供でも引っかからないよ?ギャハハ」とか書いてあって、イライラを煽って来る。
罠と看板の両方で、訪問者の心を抉って来るのである。
そもそもだが、これらを仕掛けているコナンは参謀としての頭脳だけでなく、魔術にも精通してしており、賢者とも呼ばれているらしい。
何度か、気配感知と魔力感知の環を広げ広域を探ってみたが、魔物や獣以外の反応が全く無かった。
どうやら、感知対策も施されているようである。
「うーん、これ下手すると、2ヵ月掛かっても出会えない可能性が高いよね。」
「ハハハ、まあ時の運もあろうかと。」
「気配感知も魔力感知も丸っきり反応無いし。しかも見事な程に漏れも無い。」
本当に何度やっても漏れが無い。 ん?
「あ、コルトガさん、前に1度逢えたって言ったよね? 行った場所って小屋だって言ってたよね?」
「はっ。確かに小屋でございました。」
「そうか、小屋か。えっと小屋の周囲ってどうなってたの?」
「確か……木々に囲まれた小さい家庭菜園のある柵に囲まれた小屋であった様な……」
ふむ、小屋で家庭菜園のある領域か。俺だったら四六時中シールドを張ったりするな。気配や魔力が漏れないと言うならその遮断領域を探せば良いんじゃなかろうか?
「ちょっと、思い付いた事があるから、一旦ストップ。ちょっとここで休憩を入れよう。」
俺は全員に言って、暫しの時間を貰った。
一旦20m程上空に飛び上がり、ある程度の『全く』気配も魔力も感じ無い領域を探って行く。
空中を飛んで、感知をして廻った結果、40分ぐらいで、やっと人為的に遮断された空間らしき場所を発見し、上空からその場所を確認した。
「みーつけた!!」
俺はほくそ笑みながら、みんなが待つ場所へ戻り、小屋の方向と距離を伝えた。
「な、なんと、主君、奴の居場所を特定出来たのでござるか! 流石は我が主君。」
「ハハハ、だけどさ、俺らの今居る場所って、滅茶滅茶見当違いな場所だよ。
という事で、ズルしちゃう事にしよう。」
全員を集め、ゲートを繋いで一気に小屋のある空間に出た。
「おお!! ここで間違いござらん。
ああ、何と簡単に辿り着ける事か。
流石は我が主君であらせられる。」
と感動で震えるコルトガさん。
「まあ、そんな事は兎も角、早速コナンさんを紹介してくれる?」
と急かしたら、「おお、そうであった……」と急いで玄関へと向かうのであった。
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すみません、もう1話アップし忘れておりました。m(__)m
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