第141話 クッコロさん
『気配遮断』スキルを全開にして林を進む事30秒で、崖に面した開けた場所を発見した。
そこには、数台の馬車や馬が繋いであり、更に見張りの薄汚れた男が2名酒を飲みながら、下品な話題で盛り上がっていた。
「ダハハハ、あの女ったら面白かったなぁ。俺は興奮したぜーー!ゲヒヒ」
「お前の後だと、壊しちまうから、俺らが迷惑なんだよ! 次の女は俺が先だからな?ゲヘヘ。
って言うか、今の内に少し味見してぇな。幸いボスもまだ帰って来ねぇしよ?」
「俺は、あの女騎士様を壊してぇな。 あれは大層な物を持ってやがるしよ? ボロボロにしながら、『クッ、殺せ!』とか言わしてみてぇ~よ!ガッハッハ!!」
「ば、ばーーか!あれはボスが楽しみにしてっから、先にやったら、殺されるぞ!? 良いよなぁ、俺も言わせてみてぇ~けどよーー。
それより、俺はちょっとあのちっこい子が楽しみでよぉー、10歳だったか?ゲヘヘ。いかん、涎が先走ってやがる。」
あいつら……本当に女性を何だと思ってやがる。
女神様、こう言う輩って何とかならないもんですかね?
と思わずボヤいてしまう。
気配を探ってみると、洞窟の中に割と大きめの反応で3人、そしてかなり弱めの気配が18人あった。
中でもかなり衰弱している者が居るので、一刻の猶予も無いみたいである。
直ぐにスタンを2発放ち、バッシーンと感電させて身包みを剥ぎ、縛って転がしておいた。
コロとピョン吉が先行して、中の3人の盗賊を撃破している間に、捕まっている人達が入れられている一角へと急いだ。
男と女を別けて2つの檻の中に押し込めており、男性5名、女性9名が幽閉されていた。
「Aランク冒険者のケンジです。助けに来ました。」
突然俺が入って来て声を掛けたせいか、「「「「ヒィ」」」」と言う悲鳴が軽く聞こえたが、一瞬後に
「ああ、助けてください! あと3名の女性がクリス達が連れて行かれて……」
「この子を助けてやってください。まだ10歳にもなってないのに、こんな酷い仕打ちを……」
と数名が悲鳴の様な声で嘆願してきた。
「大丈夫です、既にここに残って居る盗賊共も倒してますので。ご安心を!」
と言って、まずは女性陣の檻を剣でサクッと切って壊し、全員にクリーンを2回とヒールを掛けた後、心を癒やすイメージで『マインド・ヒール』を掛けてやった。
8名全員の身体がボワンボワンと数回光り、身も心も癒やされた様子だった。
そして件の10歳に満たない少女は完全に心も身体も壊されていて、瀕死の状態であった。
「酷い事をしやがる。大丈夫、俺が身も心も綺麗に新品にしてあげるからね。」
と呟き、体内の残留物を残さず消すイメージでクリーンを3回掛け、更にハイ・ヒールを掛け、最後にマインド・ヒールを掛けてやった。
身体が連続で激しく光った後、少女が綺麗な顔でスヤスヤと寝息をたてていた。
続いて男性陣の檻を切って壊して、クリーンとヒールを掛けてやった。
衣服がボロボロであったり、無茶苦茶に破かれていたので、人数分の服を出してやり、着替えさせた。
<主ー、こっちは3名片付けて、女4名発見したけど、何か大の字に縛られてるから、助けてやってー!>
とピョン吉からの報告があった。
全員にはここで待つ様に伝え、身体に優しい泉の水とサンドイッチ等を出して置き、ピョン吉達の所へと急いだ。
大広場には、呻いている大男3名が血を流しながら倒れていたので、スタンを放ち、ライト・ヒールで傷口だけを塞いでおいた。
次に女性4名が居るという個室へ行くと、もうね、耐えられない匂いが部屋に充満してた。あの匂いである。
既に犠牲になっていて、正気を失っている全裸の女性がベッドに両手両足を大の字に開かれた状態で縛られていて、見るに堪えない。
俺は直ぐさま部屋の空気を浄化し、ロープを切って、クリーンを体内の残留物まで綺麗にするイメージで掛けてやり、更にハイ・ヒールとマインド・ヒールを掛けた。
綺麗なシーツを掛けてやって、次の部屋へ……そして同様の状態だった2名も同じくクリーンとハイ・ヒールとマインド・ヒールのセットを掛けて廻った。
4部屋目はどうやらジャガの部屋らしく、大きな部屋で、X状に組まれた太い木に貼り付けにされている女騎士が居たが、彼女は窶れてはいたが、まだ正気を保っており、
「だ、誰だ!? 辱めを受けるぐらいなら、一思いに殺せ!」
と呟いていた。
わぁ、本気でこのセリフを言う人が居るんだねぇ。凄いなぁ。と変な所に感心しつつも、
「Aランク冒険者のケンジです。安心して下さい。助けに来ました。」
と言って、手足の拘束を解き、フラフラと前のめりに倒れそうな所を受け止めた。
「クッ、何日もあの状態だったが為に手足が動かないのだ。だからといって、無礼は許さぬぞ!」
と何か判らんが威嚇してきた。多少カチンと来たのだが、まあ気が動転しているのかと、大目に見た。
「大丈夫です。すぐに治療しますから。」
と言って、クリーンとヒールを掛けてやった。
ボワンボワンと2回光り、女性の顔色が徐々に戻って来た。
どうやら、この女性騎士は衣服はボロボロになっていたものの、まだ無事だった様子。
「すまぬ。助かった。他にも沢山捕まっている人が居る。申し訳ないが、助けて貰えぬだろうか?」
と女騎士が頭を下げて来たので、
「ああ、ご心配無く、既に全員助け終わってます。あなたが最後でした。暫くここで休憩していて下さい。」
と言って、泉の水とサンドイッチを置いて、部屋から出た。
俺が部屋を出る際に、後ろから、「置いて行くな!」とか、「私を誰だと思っている!?」とか変な幻聴が聞こえて来たけどそのままスルーしておいた。
洞窟内を探索すると、食料庫と宝物庫があり、そこには沢山の食料や商品、それにお金や素材や宝石等が山積みになっていた。
酒蔵では樽に入ったワインやお酒が10樽以上あった。
全てを回収し、最後に武器庫に行くと、そこにも数々の武器の山があった。
どれくらいここをアジトにしていたかは知らないが、相当な量である。
全ての部屋や倉庫を廻り全てを回収して廻った。
アケミさんの気配を洞窟の外で感じ取り、アケミさんと合流して、まずは盗賊5名を2つめの檻に吊した。
乗合馬車を1台出して、男性陣と動ける女性8名乗せ、意識の無い10歳の少女とベッドに縛られていた3名の女性は衣服を数人がかりで着せた後、は俺達の馬車へと乗せた。
表の広場にあった10台の馬車を収納し、繋がれた22頭の馬に飼い葉と泉の水を飲ませてやり、その後に馬をロープで連結して馬車に繋いだ。
しかし、やっかいだったのが、件の女騎士で、聞くと、アーデリル・フォン・ゴライオスという名だそうで……。
まあ、既に騒ぎ始めたので、すぐに詳細解析Ver.2.01大先生で情報を知っていたのだがね。
つまりこれから行くゴライオス領のお転婆次女というか、空気を読まず引っかき回す厄介者らしい。
これが鬱陶しい程の勘違い正義感で、収まった物を引っかき回し、揉め事をより大きな大事にしてしまい、周囲を振り回しているという。
そんな奴がだよ? 何か上から目線で、
「ここは、私が指示を出すべきだろう。」
とか言い出しちゃって、周囲も困惑気味。乗合馬車の方に回そうとしたんだが、何故か俺達の馬車に乗るのが当然の様な態度を取ってくる。
しかも色んな女性を無理矢理プッシュして来る事で有名な詳細解析Ver.2.01大先生が、辛辣で『助けない方が世の為です』って書く程だから、余程だよね。
「あー、じゃあ申し訳ないけど、あなたとはここまでで。
こちらは善意で助けただけですし、特に依頼を請けた訳ではないので。
それだけお偉い方なら、ご自身の身ぐらいご自身で何とでもなるでしょうから、自力で戻って下さいね。」
と俺が怒りに満ちた顔で冷たく言い放つと、
「な、何を言う!? 私はアーデリル・フォン・ゴライオスだぞ? ゴライアス伯爵家の次女だぞ?」
と権力を示して来た。
「はぁ。だからどうしたんですか? ここは別にゴライオス領でもマスティア王国の領土でも無いですよね?
私に何の関係があるんですか?」
と置いて行こうと背を向けた。
「おいおい、幾ら伯爵様の次女様だろうと、助けて貰っておいて、その態度はないんじゃねぇ~か?」
と男性陣のおじさんからの批難する声が上がっている。
「わぁ~、あれはないですねぇ。普通子供でも助けて貰ったらありがとうってお礼言えるのにねぇ。」
と女性陣からも言われてる。
「クッ……わ、判った、ここは従おう。」
とまだ偉そうに言う。
「いえ、従って頂かなくて結構です。」
と俺は見捨てる気で、目で合図して、馬車に馬車に飛び乗って出発させた。
「あー! 待て! 待ってくれ! 悪かった。頼む、乗せてくれ。」
と叫びだし、しょうがないので、盗賊の檻の馬車の御者席に乗せた。
更に男性の2人が御者を買って出たので、一応不要なのだが、お願いしてアジト後にしたのだった。
「はぁ~……何か、面倒な奴を助けてしまったなぁ。」
には
と俺が御者席で呟くと、アケミさんが慰めてくれたのだった。
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