第99話 テントでの告白

長くて短い村での1日が終わった。

一旦帰るかと迷ったのだが、暗くなる寸前まで食べたり買ったり、殺気を投げ掛けられたりしたので、予定が押してしまい、結局村に泊まる事にした。

宿もあるらしいのだが、大した宿は無く、また行商に来て居る商人達等で、結構満杯という事もあって、村を訪れる半数は村の横の空き地でキャンプするらしい。

という事で、俺もそこでテント泊する事にした。


当初は実家に泊まるかと思っていたアケミさんだが、既に実家も無い事が判明した。

じゃあ、知り合いの家にでも泊まるのかな?と思っていたのだが、暗くなり出しても俺達の傍から離れないので、


「えーっと、アケミさんは今夜はどうするの? 誰か知り合いの所にでも泊まる感じ?」

と俺が聞くと、「え?」と何を今更って感じに驚かれ、


「えっと、私がご一緒にテントに泊まっては、ご迷惑でしょうか?」

と黒い瞳に涙を溜めて見上げられてしまい、言葉に詰まってしまった。

何故か俺のテントに泊まる気満々だったようだ。


いやまぁ、テントと言っても、俺のテントだったら、そこらの宿より快適だし、個室も多いから良いと言えば良いんだけどね。

問題はこのテントの中を見せて良いものか? という事に尽きるんだよぉ。


うーーん、どうしよう。

流石にこの時間からは宿も無いらしいし、宿自体も雑魚寝に近い感じで、結構危ない香りがする。

知り合いの家と言っても、あんな感じのおじちゃんとおばちゃんらの家なので、落ち着かないらしい。

特におばちゃん達の口撃が苦手らしい。 ハハハ、それは判るな。


「うーん、そうか……でも若い男と一緒のテントって、世間体的に拙くない?」

と聞いてみると、


「私も冒険者ギルドの一員ですから、そこら辺は冒険者と共に出張する事もありますし、大丈夫ですよ?」

と言われた。


「えっと………。

そうか。じゃあ、冒険者ギルドのスタッフとして、知り得た俺の情報を漏らさないという事を誓ってくれるなら、良いかな。」


「ええ! それは勿論です。 私がケンジさんの不利になる様な事をする訳が無いです。 誓います。命に代えて!!」


「え? いや、まあ命の危険があったりしたら、それは命を優先で良いんだけどね……じゃあ、どうぞ。」

とテントへ招き入れた。


「……………」


アケミさんが完全に固まっている。


叫ばれる前にと、慌ててテント消音をONにしておいた。


「えーーーーーー!!! 何これーーー!!! ど、ど、どう言う事ですかーーー!」

間一髪セーフである。


「これは、マジックテントというらしい。

悪い事はしていないんだけど、俺には秘密が多くてね。

これをバラされると、俺は下手な権力者等と対決するか、逃げる必要が出て来る訳。

だから、不用意にバラされると、多くの人に迷惑を掛ける事になるからね。

これを知って居るのは、アケミさんを含め、10名も居ないんだよね。」

と説明すると、直ぐに理解してくれた。


「なるほど、これは確かに人には見せられませんね。

何か、ご無理を言ってしまった様で申し訳ありませんでした。

でもどうしてもケンジさんと一緒に居たかったので……あっ……」

と言って、口を手で押さえつつ、ポッと頬を染めて俯くアケミさん。


マジか。もしかして俺、モテてるの?? と内心冷や汗を流す健二。

馴れない状況に頭が真っ白である。


こ、これは拙いかもしれない。 俺の精神的な物が。


『詳細解析Ver.2.01』

***********************************************************************

名前:アケミ

年齢:19歳

誕生日:1月17日

父:タダスケ

母:スズコ

種族:人族

性別:雌(未)

好意度:100%

忠誠度:100% ←New

敵意:0%

婚歴:無し

身長:165.5cm

体重:55.8kg

B:83.4cm B+カップ

W:58.6cm

H:84.2cm


称号:ギルドのクール・ビューティー

   ケンジに運命を感じる者 ←New


職業:冒険者ギルドスタッフ

レベル:12


【基本】

HP:115

MP:101

筋力:116

頭脳:141

器用:138

敏捷:78

幸運:99


【武術】


【魔法】

水:Lv0

無:Lv0


【スキル】

漁師 Lv1

素潜 Lv2

素材採取

調理 Lv3

解体

裁縫 Lv2

育児 Lv1

解体


【加護】

女神エスターシャの加護

(海神エンアクアの謝罪)


【状態】

精神:興奮(良い意味で)

肉体:正常

健康:正常


【経歴】

ランドフィッシュ村の出身。

貧しくとも幸せな両親の下に生まれ育った。15歳になった頃、両親が漁に出てクラーケン同士の喧嘩に巻き込まれて、船が転覆して低体温症で亡くなった。

漂流して浜辺に流れ着いた遺体は魚や海洋性の魔物に啄まれて悲惨な状態となっていた。

暫くの間、両親の死が納得いかず、現実逃避するも、生活に困窮し、村人の助けもあってマーラックへと働きに出た。

偶然村出身のライゾウと出会い、その伝手で冒険者ギルドに就職し、1人で気を張って4年間頑張って来た。

性格は控え目だが芯は強く、几帳面で面倒見の良い頑張り屋さんなので、瞬く間に一人前のスタッフとなる。

冒険者ギルドでは、アイドル的に男女問わずファンも多い。

マーラックでは、クールビューティーとして有名である。

これまで言いよって来る冒険者は無数に居たが、頑なにプロに徹して、躱し続けて来た。

しかし、健二と出会い、全身に電流が流れた様に、これまで感じた事ない感情が湧き出て来る。

19年で初めての感覚に、戸惑いつつも、健二に逢いたい気持ちを抑えきれずに、理由をこじつけて海王亭へと訪れた。

そして、改めて話をして更に想いが募って行く。

健二のランドフィッシュ村行きで、更に運命を感じてしまった。

両親の死後初めての墓参りを数ヶ月前から考えて居たが踏ん切りがなかなかつかなかったからである。

そして、一大決心をして健二のランドフィッシュ村行きへ同行したのだった。


【展望】

健二さんに馴染みの深い黒目黒髪の清楚な女の子です。

不運な前世に心を痛めた女神エスターシャ様の配慮で、悲しい前世の思い出を封印し、幸せで温和な夫婦の下へ転生しました。

残念ながら手違いでご両親が海難事故に遭ってしまい、悲しい思いをさせる事となり、その結果、激d……心を痛めた女神エスターシャ様が、海神エンアクア様をせっn……窘められ、500年の刑……修行をする事となりました。

特に異性に対しては身持ちも堅く、人を裏切る様な事はしない子ですよ!

今日という日を19年生きた中で最高の日と考えてます。

普段はこんなに自分から推す子ではないのですよ?

初めて健二さんと出会って、全身に電流が流れた様に一目惚れした様ですが、本人初めての経験で非常に困惑し、葛藤していますが、それでも抑えきれない想いを一世一代の勇気を振り絞ってやって来たんですよ?

年の頃は、健二さんと同じ19歳設定。

スレンダーですが、控え目ながら掌サイズで良い感じだと思います。

食事の好みも健二さんに合っていると思われますよ?

突然の事故で両親を亡くし、4年間一人で気を張って生きて来た健気な美少女、如何でしょうか?


 [>>続きはこちら>>]


***********************************************************************


悪いとは思ったのだけど、思わず詳細解析Ver.2.01大先生の見解を見てしまいました。

どうやら、好意を持ってくれているらしい。


まあ、俺も不思議な感覚を感じては居たので、何だろうかと思っていたのだが、どうやら記憶の無い転生者らしい。

もしかして、彼女も日本からやって来た人なのだろうか?

前世の不運って何なのだろうか? 


海神エンアクア様の健闘を祈りたい所だな。


しかし、今回のこの【展望】を見てみて1つ判った事がある。

それは、この【展望】を書いている人物? 神物?? がどうやら女神エスターシャ様ご本人では無いという事だ。



しかし、これはどう対処すべきなのだろうか?

彼女が転生者だとするのであれば、もしかすると精神的な実年齢差は無いのかもしれないね。

確かに綺麗で可愛い子だとは思うよ?

信頼しても良いとは素直に思える。

それに、今日一日一緒に過ごしてみて、アケミさんと一緒に廻る市場はとても楽しかったのも事実である。


純粋に好きになって貰えるのは、確かに嬉しい事なんだろうけど、今の俺にはまだそんな振り絞れる勇気は――

どうなんだろう? 俺は俺の心がまだ良く判らない。




そこで、俺は真摯に話をすべく、驚いているアケミさんをソファーへと座らせてカフェオレを出してやった。


「アケミさん、俺の過去にあった話を聞いて貰えますか?」と。


一瞬怪訝そうというか心配そうな顔をしたが、頷いてくれた。


そこで、俺はある程度ボヤかした感じで過去に女性によって騙され、利用され、死にそうな目に合った事をヤンワリと話始めた。

話を聞く内に、アケミさんはその女性に対して怒り、そして俺に対して労る様な優しい目を向けてくれた。


「そして、気付くと、どうやってそこに辿り着いたのかは判らないですが、それ以外の記憶は曖昧で、山奥に1人で横たわってたんです。

だから、俺の確かな記憶はここ4年くらいの物しかないのです。

ただ、余りにも絶望が深かった所為か、その女性にされた事だけは鮮明に覚えてて、以来女性恐怖症なんです。

普通に話したりする程度なら良いんですが、女性に好意を向けられるのが怖いと言いますか、打算でまた騙されるんじゃないか? とか裏切られるんじゃないか?とか無意識に思っちゃうんですよ。

良い歳をした男がお恥ずかしい限りなんですが、これでもかなりマシになった方なんですよ?」

と説明した。


すると、アケミさんは、大粒の涙を流しながら、

「ケンジさん……本当に辛かったんですねぇ。

ああ、私はケンジさんを慰める事すら出来ないのでしょうか……」

と言ってくれた。


「あ、ありがとう。 いえ、話を聞いてくれただけでも、そして俺の為に泣いて怒ってくれるだけでも十分以上に慰められてますよ。

ただね、そう言う過去があるので、恋愛とか女性と親密になるとか言うのが、まだ怖いのですよ。

信じて裏切られるのが怖いんです。

こんな状態なので、もし俺に対して好意を持って頂いているのであれば、申し訳無いですが、今はまだそれに応える事が出来ないのです。」

というと、


「わ、判りました。 ケンジさんの苦しい胸の内を教えて下さって、本当にありがとうございます。」

と言って大泣きしていた。

良かった。判って貰えたか。 ふぅ~一時はどうなるかと思った。


そして一頻り泣いたアケミさんは決意した様に

「私はそれ程の体験は無いですが、少しでもケンジさんのお側で、傷を癒やす手助けがしたいです。

世の中には裏切らない女も居る事を知って欲しいです。

ケンジさんに幸せになって欲しいです。ケンジさんの幸せは私の幸せでもあるんです。

判りました。」

と言っていた。


えーー!? 判ってないじゃん!!!


そして、もの凄く良い笑顔でこう言った。

「大丈夫ですよ。これからユックリと時間を掛けて徐々に心を癒やして行けば、大丈夫ですよ。

私は、命を掛けてケンジさんを悲しませる様な事はしませんから。

ユックリ歩んで行きましょうね? フフフ。」

と。


アレレ? コトバデツタエルッテムズカシイ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る