第71話 提案

いやぁ~、流石は『銀の食卓』というだけあって、パン以外はどれも絶品。

特に肉のスパイス加減が最高であった。


子供らもEランク冒険者の2人も、生まれて初めて食べるご馳走で、箸が止まらないというか、フォークが止まらなかった。

この世界に箸はないみたいだからね。


「何か、俺達までご馳走になってしまって。でも美味しかったです。」

と食後のお茶や果実水を飲みながら、ドリス君からお礼を言われた。


「いや、本当に美味しかったね。 やっぱり香辛料が色々手に入ると、料理の幅が広がって夢が広がるねぇ。

ああ、言ってなかったけど、俺の今回の旅の目的って、メインは食べ物なんだよね。

クーデリア王国にも海はあるみたいだけど、遠いからさ、イメルダ王国の海の街に行って、新鮮な海の幸を食べたいって思ったんだよね。」

と俺が話すと、爆笑された。


「ど、どんだけ贅沢な旅ですか!」

とサラさんは半ば呆れていた。


「まあ、そう言っても、どうせ食べるなら、生きてる内に、美味しい料理を食べたいし、縁のある人にも分けて上げたいじゃないか。

俺ね、クーデリア王国のドワースから少し離れた場所……そうだねぇ、一応クーデリア王国領の外になるんだけど、そこを開拓して、拠点を作ったんだよ。

今は40名ちょっとぐらいそこに移り住んだ村人も居て、農業やったり、色んな美味しい物をみんなで食べたりして生活してるんだよ。

だから、もし、ここでの子供らの生活環境が劣悪なら、いっその事、俺の拠点に移り住んだらどうかな? って思ったんだよね。

周りは魔宮の森の傍というか、そんな場所だから、強い魔物がウジャウジャ居るけど、ここの街の城壁よりも立派なのが2重にあるし、俺の従魔達が居るから、もう数年住んでるけど、魔物の被害は無いんだよね。

住む家も用意して上げられるし、字や計算も、その気があれば、魔法や剣術も教える事が出来るから、その話をしたかったんだ。」

と俺が説明すると、ドリス君もサラさんも、アングリと口を開けたまま、暫く固まっていた。


肝心の子供らは、俺の説明が難しかったらしく、良く判って無い様子だったが、美味しいご飯とかにピクピクっと反応していた。


暫く経って、復活したドリス君が、

「そ、その話が本当なら、凄い事じゃないですか。」

とかなり興奮している。


「子供らも心細いと思うから、良かったら、君らも一緒にどうかな?」

と俺が言うと、少年少女二人は、少しの間ゴニョゴニョと話し合っていた。


そして、結論が出た様で、サラさんが話し始める。


「えっと、本当に嘘じゃ無く、寝る所とか、食べる食事とか、仕事とかもあるんですよね?

例えば、私や女の子達に、そ、その……エッチぃ事をしようとか、何処かに売り飛ばそうとかって思ってませんよね?」

と言うので、


「ハハハ、そんな気はサラサラ無いし、不安なら、ドワースの方でも良いんだよ? そこにも屋敷があるから。

まあ、出来れば、拠点の方で、暮らして欲しいとは思うけど、どっちでも良いよ。

まずは、そうだねぇ、一度拠点を見て貰った方が良いかな。

ああ、そうそう、拠点には、天然掛け流しの巨大な温泉あるんだよ。」

というと、温泉の意味が判らなかった様なので、説明したら、目の色が変わった。


「マジですかーーー!! それ良いですね! ドリス! ゴチャゴチャ言ってないで、即決よ即決!!!

子供達! このケンジ兄ちゃんの大きな家があるんだって。

そこの村に家を用意してくれるって。ご飯もあるし、毎日温泉にも入れるんだってよ!

お勉強も教えてくれるし、みんなで、ケンジ兄ちゃんの所へ引っ越ししよう!」

とサラさんが捲し立てる様に説得し始める。


「えーー? サラ姉ちゃん達も行くの? だったら、おいらも行くよ!」

「えー?私も行くーーー!」


という事で、全員が来る事になりました。


ドリス君は賛成しつつも、

「でも、ケンジさん、何で俺らをそんなにまで、面倒見ようとしてくれるんですか?」

と尤もな質問をして来た。


「うーん、何でって、一見君らの為にも思えるし、そんな上手い話がある訳無いと思われるのも判るけど、まあ簡単に言うと、俺の心の安寧の為でもあるかな。

俺さ、まあ俺なりに色々あってね、女性からこっぴどく酷い裏切りにあった経験があるんだよ。それこそ死ぬ程に酷い裏切りでさ。

で、人や女性が怖くなってね、その拠点で一人で暮らしていたんだけど、女神様とかドワースで知り合った人とかに助けられて、何とか心の傷も癒えて来て、それが縁でドワースの孤児院の子供らとも知り合いになってね。

やっぱり子供ってみんなの宝だよね。

子供らの笑顔でどれだけ俺の心が癒やされて、助けられたか……だから、この子らの事も人事じゃなくて、もしこのまま見て見ぬ振りをして通り過ぎると、おそらく、滅茶苦茶後悔するんだよ。

割と俺って、クヨクヨする奴だからね。

だから、子供らの為であり、俺の心の安寧の為。偽善的で利己的な理由かも知れないけど、ここの生活よりは今日どころか、明日の心配も要らない生活を子供にさせてやりたいと思ったんだ。

こんな理由じゃ駄目かな?」

と俺が言うと、


ドリス君がフッと笑い、

「いや、全然駄目じゃないっす。 最初ちょっと美味すぎる話だと思ったんで、かなり警戒してたんだけど、不思議とこれまで幾つも嘘や悪巧みを避けて来た、俺の勘が全然反応しないんすよね。

だから、この話も全部、本当じゃないかって思ってます。じゃなければ、ケンジさんは、希代の詐欺師ですね。ハハハハ。」

と笑っていた。


「あれ? ケンジさんって、イメルダ王国を目指して旅してる訳で、でもそうすると、私達って、どうやってその拠点まで行けば良いでしょうか? 歩きだと何ヶ月掛かるか判らない距離だし、馬車も出てませんよね。」

とサラさん。


「ああ、俺の馬車に乗れば大丈夫だよ。俺も一旦引き返すし。

そうだね。せっかくだから、観光と買い物ぐらいはしたいから、今日を含めここに3泊ぐらいして、君らも移転する準備もあるだろうから、その間にして貰って……あ、子供らの着替えって下着とか何着ぐらい用意した?

最低でも7日分ぐらいは買って置いた方が良いね。大きめの服とかも合った方が良いか。

よし、明日は買い出しに廻ろう。」




という事で、丸く収まり、みんなで大浴場に浸かってマッタリしたら、大はしゃぎした子供らは、風呂から上がって大部屋に行くとコトンと直ぐに寝落ちしていた。


しかし、あの馬車なら、子供10人+2人+俺達……かなりモフモフが密集してしまうが、多分ギリ大丈夫だろう。

最近あいつら、成長してデカいからなぁ……。


これでまた拠点が賑やかになるかな? 

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