第59話 上手い口実 (改)

一通りの挨拶回りが終わり、久々の別荘に戻ると、既に全員が戻って来ていた。

村の6名は宿舎の方に戻っており、結構早い時間から酒を飲んでいたらしく、既に出来上がっていた。


「ケンジさん! 良かったら一杯飲みませんか?」

と言われ、一杯だけ、お呼ばれしつつ、飲んだ。


「う、不味い。」いや口には出さなかったけどね。

わぁ、こんなに不味いのかよ。雑味だらけの気の抜けたビール???

マジで、驚いてしまった。

この世界のビールって、こんな感じなのか。(正式にはエールというらしい)


そこで、俺は、俺が密かに作った酒と、食糧倉庫から巾着袋に出しておいた、日本酒を各一本差し入れしてから、本館へと戻った。


「あーー!ケンジちゃまーー」

と俺を発見したユマちゃんが笑顔で駆けて来る。

フフフ、見てるだけで癒やされるなぁ~。


「久しぶりだねぇ。ちゃんと、良い子にしていたかな?」

と抱き上げて聞くと、

「もちろんでしゅー!」

と片手を上げてアピールしていた。


「よし、じゃあ良い子には、お土産をあげよう。」

とプリンを出して、渡すと、


「こりぇ、なーに?」

と聞いて来た。


「これはプリンといって、とっても甘くて美味しい物だよ。

さ、お父さんとお母さんの分もあるから、落とさない様に、お母さんの所へ持っていってごらん。」

というと、


「わかったーー!」

と言って、プリンが入った籠を、ソーッと、転けないようにしながら運んで行った。


いいなぁ、子供は。本当に癒やされるな。



「ケンジ様、お久しぶりです。お迎えもせずに申し訳ありませんでした。」

とジョンさんとヤリスさんが登場する。


「ああ、そんな事は気にしなくて良いよ。

どう? こっちの暮らしは馴れた?」

と聞くと、


「はい、凄く良くして下さってますので、快適に過ごしております。」

と幸せそうなジョンさんとヤリスさん。


「そうか、それを聞いて安心した。

困った事とかは、今のところない? ちゃんと秋冬物の服は揃えた?」

と聞くと、


「はい、お陰様で先日、指示を頂いたので、揃えさせて頂きました。」


「ハハハ。いや指示無くても揃えて貰わないと。 多分、変に遠慮しているんじゃないかと思って、念のために指示としたんだけどね。」

と俺が言うと、図星だったらしく、頭を掻いていた。


「今日から、数日だけお世話になるけど、宜しくね。」


「はい、数日と言わず、幾らでも。」

と言ってくれたのだった。


「ところで、こっちの冬ってどうなの? 俺は拠点の方しか知らないんだけど、あっちは、凄く雪が積もるんだよ。

最大で1m以上積もってたかな。あ、もし雪下ろしや雪掻きが大変だったら、一人でやらずに、人を雇ってね。

多分冒険者ギルドとかに頼めば大丈夫だから。

俺もさ、毎年一人で雪掻きしてたから、大変さを良くしってるし。

普段鍛えてても、これだけの屋敷の屋根は、マジで地獄だからね。」

というと、


「判りました。」

と言っていた。



久しぶりにヤリスさんの調理した食事を4人と3匹で頂き、大変美味しゅうございました。


お風呂に入って、ノンビリと寛ぎ、早めにベッドで寝た。



 ◇◇◇◇



翌朝、スッキリと目覚め、用意された朝食を取り、庭を眺めて改めて思う。


「無駄に広いなぁ……。 何か面白い物は無いかな?」


と巾着袋の中を色々覗いてみると、面白い物を発見した。


「おお!こんな物まであったのか!!」



という事で、早速庭の空きスペースに出して設置してみた。

元の世界でお馴染みの、ブランコや滑り台、そしてジャングルジムである。

ユマちゃんを呼んで見せてやると、最初は不思議そうにしていたが、使い方を教えると、大喜びで遊んでいた。

一頻り、遊び終わると、ちょっと悲しそうな顔をして、

「これ、お友達にも遊ばせてあげたいな……」

とぽつりとつぶやいている。


聞けば、孤児院の子らとも時々遊んでいるらしい。


「ふむ。じゃあ、ユマちゃんと遊ぶ時は、孤児院の子を連れて来ても良いよ。」

と許可すると、ピョンピョンと跳ねて喜んでいた。


同じ事をジョンさん達にも伝えると、

「え? 本当に良いのでしょうか?」

と恐縮していたので、ついでに多目的ホールの建物を遊具の横に置いてやり、


「まあ、屋敷の中には入れられないので、こっちの遊具とこの多目的ホールなら、大丈夫だよ。」

というと、更に恐縮していた。


まあ、小さい子に遊び相手居ないと寂しいもんね。

それに、ちゃんとコミュニケーション力を子供の頃から養っておかないと、俺の様になっちゃうからなぁ。


村の連中6名は今日も買いだしに行くらしい。

なので、お金を多めに渡しておいた。


「それはそうと、昨日のお酒、滅茶滅茶美味しかったです。

あんな上等なのを、ありがとうございました!!」

とお礼を言われた。


「でも、あんなの飲むと、今までの酒が飲めなくなる。」

とも溢していたが。


「じゃあ、来年辺りには、本格的に、美味しい酒を拠点で造るか。」

と提案してみると、滅茶苦茶盛り上がっていた。


酒作りかぁ、ちょっと色々発酵とかのプロセスを勉強しないとダメだな。


やる事が無かったので、部屋でノンビリして過ごしていると、ガバスさんが種籾を運んで来てくれた。

敷地の中に通すと、


「何これ!? スッゲー!」

驚いている。

そして、更にブランコや滑り台やジャングルジムで遊ぶユマちゃんを見て、目を光らせていた。


「け、ケンジ!! あれ、あの遊具も俺に売らせてくれよ!」

と。


商魂たくましいというか、凄いな。


早速、詳細を教えて、2日連続で商業ギルドで契約したのだった。



別荘に戻り、昼飯を食べて更にノンビリしていると、今度は領主様の使いの方がやって来た。

まあ、簡単に言うと『呼び出し』である。

おめー、帰って来たんだったら、顔出せや! って事だろう。


うーん、出たり入ったりで忙しい。


結局そのまま領主館へ連行され、領主様&ご長男様と会談。




「ご無沙汰しております。お元気そうでなによりです。」

と挨拶をすると、


「うむ。まあ大した用事は無いのだが、せっかくこの街に来て居ると聞いてな。

全然そちらから来てくれそうにないとワシの直感が訴えておったんで、呼んでみた。」

と笑いうマックスさん。


「ハハハ、バレましたか。 いや、どうも出不精なんで、自分でも油断してると、いつの間にか引き篭もってますね。」

と苦笑いする俺。


「まあ、どうせ冬になると、ここら辺は身動き取れないからのぉ。」


「ですよね。なかなかの豪雪ですからね。」


とまあ、それとなく話は進んでいたが、本題を切り出して来た。


「ところで、ケンジ君、まあ余り詮索する事ではないのだが、あの屋敷、どうやって建てたの?」

と。


「ああー、やっぱり気になっちゃう感じですよね?

えーっと、あれはですね――」

さてどうしようか、やっぱり魔法とスキルで誤魔化すしかないよな?


「私の持つ魔法とスキルの合わせ技です。 結構大変なんですよ。

まあちょっと門外不出で人様には詳しくお教え出来ないのですが、多分俺しか使えないだろうし。

あれを使うと、暫く何も魔法使えなくなるんでね。」

と微妙な説明をすると、凄く凄く残念そうな顔をしていた。


「そうそう、話は変わるけど、ケンジ君聞いた? ラスティン子爵領のミステリー話。

君の居ない時の話なんだけど、かなり大騒ぎになってね。 いやぁ~ビックリだよね。」

と話を振って来た。


「ええ、私もガバスさんと冒険者ギルドで聞いて、驚いたんですよ。

村が無くなるって、どんだけ酷い統治してたかって話ですよね?

しかし、ご先祖様は功績を挙げたから、多分子爵となられたのかも知れませんが、こう言っては不敬に当たるかも知れませんが、世襲で能力の無い方が当主となると、領民は不幸ですよね。

その点で言うと、このドワース領は、実に恵まれてますね。」

と俺が率直な感想を漏らすと、


「ハハハ、まあそう言って貰うと嬉しいのだが、それ、ワシ以外の貴族の前で言うと、ヤバいからな?」

と釘を刺された。


「ハハハ、言える訳がないじゃないですか。逃亡生活一直線になっちゃいますよね。」


「ハハハ、そこは逃亡する気満々なんじゃな?」

とマックスさんも笑っていた。


「で、今は旧ラスティン子爵領はマシになったでしょうか?」

と聞いてみると、


「ああ、多分じゃがな。 王家の直轄領となったんじゃから、派遣された代官職の貴族も、そうそう拙い統治はせんじゃろう。

しかしなぁ、ラスティン子爵領と同じ様に苦しい領地を持つ貴族は割と多いのじゃよ。

どうしたら、これらが改善されるとケンジは思う?」

と聞いて来た。


「うーん、まあ王国や貴族って世襲制ですもんね。無礼を覚悟で言いますが、世襲制でも良いですが、世襲する者が相応しい人物かを判断する試験や面接等を行えば、多少はマシになるのでは?

まあ、試験や面接で収賄等の不正が蔓延る可能性もありますがね。」

と提案してみた。


「なるほど、それは面白い案じゃな。ふむ……」

と頷いていた。


「ところでの、ちょっと困った事があってのぉ、どうしようかと個人的に悩んでおるんじゃが、悩みを聞いてくれんか?」

と真剣な顔のマックスさん。


「何でしょうか? 私に何か出来る事ですかね?」


「いや、もし何か良い口実や回避策があればとな。

実は、縁談がこのところ凄いんじゃよ。ワシにも倅にもな。

まあ、倅はそもそも遅いぐらいなんじゃが、ワシはちょっとなぁ~、もう暫くは結婚する気にはならん。勿論枯れる歳ではないし、女性自体は好きじゃがなぁ――」

と言葉を濁した。


「ああ、その気持ちは理解出来ますよ。 なるほど、口実ですか。 うーーん、難しいですね。

下手に体調や病気とかを口実にすると、他の意味で拙そうだし、難問ですね。

そうか、縁談かぁ、いやぁ~、貴族様って本当に大変ですねぇ。 良かった平民Aの身分で。」


「そうなんじゃよ。逆にお主が羨ましいぐらいじゃぞ。

力も頭も金もある。若さもその男前な顔も……。代わって欲しいぐらいじゃ。」

とぶっちゃけてきた。


「じゃあ、この際、ご長男さんに、割を食って貰うとして、

『いや、前回の件があるので、最初の妻の願い通り、この子に素晴らしい嫁が来るまでは、願掛けで後妻を娶らない』

ってのはどうでしょうかね?」


「おお!! それじゃ! それ良い感じじゃ!」

とパーッと顔を明るくするマックスさん。

それとは対象的に、顔を暗くする長男君。 ご愁傷様です。


「父上、それを理由にすると、益々私への攻撃が増す気がするのですが?」

と焦っている。


「まあ、親孝行って大変ですよねぇ~。」

と俺が呟くと、苦い顔をしていた。


「いやぁ、聞いてみる物じゃのぉ! まさかこんな胡散臭い口実を思い付くとはな。」


「それ、全然褒め言葉になってませんからね?」

というと、大笑いしていた。


「それに、言ってはなんですが、変なのや災いみたいなのが来たら、ご長男さんの結婚生活が灰色になったり、結婚自体が流れる事にもなるので、一番適切な言い訳なんじゃないですかね?

親として考えると。」


「うむ。そうじゃな。前回みたいな事があると、結婚自体が流れるやも知れないからの。適切適切!!

しかし、面倒じゃ。 それを宣言しに王都まで行かねばならんのじゃよ。どれだけ時間が掛かると思っているのじゃ!」

と叫んでいた。


「400~450kmぐらいでしたっけ? 馬車だと……3日か4日ぐらいですか?」

と聞くと、


「いや、ワシら貴族の場合は、色々と通り道の貴族への挨拶とかあるんで、7~8日ぐらい掛かるのじゃ。」

と。


「ふむ、思った以上に大変ですね。

ああ、旅の途中の時間潰しに、ガバス商会から面白い娯楽用の物が出ると思いますよ。」

というと、


「おお!それは是非とも入手せねば!」

と言って居た。




やっと、2時間程の会談を切り抜け、グッタリしつつ、領主館を脱出した。

帰りがけに、屋台でお土産用の肉串等、沢山購入したのだが、それ以外で何か無いかとも探したのだが、この街で一番話題で人気の物と言えば、ジェイドさんの所のバーガーやカツサンドとなる。

それでは、あまり意味が無い。俺でも作れるというか、俺が本家本元なんで。


市場の方へ行くと、露店が所狭しと出て居て、夕暮れ前のラストスパートを掛けた呼び込みで騒々しい。

何か面白い物はないかとさがしていると、大豆?を発見した。

聞けば、これを植えるとそのまま芽も出るそうな。

という事で、どれ位なら纏めて購入して良いかを聞くと、麻袋5袋なら他の住民の分も問題ないという事だったので、即決で購入。

他にも小豆を発見したので、これも5袋購入。


「ほうほう、こうやって見て見ると色々あって面白いな。」

と俺がドンドン購入していると、


「にーちゃん、沢山買ってくれるのは嬉しいんだが、どうやって運ぶのかい? 見たところ、一人のようだが。うちは運搬までは無理だぞ?」

と心配している。


ああ、しまったな。運搬の事を忘れてた。どうしようか。

収納は出来るが、大っぴらには出来ないからな。


「店主、悪いんだけど、ちょっと先に家に寄って人を連れて来るから、あと30分程待って貰えるかな?」

と聞くと、

「ああ、それはまだ日暮れまで2時間程あるら大丈夫だぞ。ちゃんと、取りに来てくれよな?」

と念をおされて、慌てて市場から、別荘へと戻った。


村の人達は、戻って来ていたので、馬車を用意して貰い、再度一緒に市場へと繰り出した。


「ついでに、拠点で栽培していない野菜とかも買って行こうよ。種さえあれば、栽培も出来るだろうし。」



30分ぐらいでさっきの露店へと戻り、手分けして、馬車に豆の袋を積み込んで行く。

そして、手分けして、色々な種や珍しい野菜、それに、飼料として売っていたので、お米も余分に購入。

サツマイモも発見したので、それも購入。

馬車の中に積み込んだ袋をせっせと巾着袋に収納し、また市場を見て廻る。

大豆は結局何箇所かで30袋分を購入出来た。


「しかし、ケンジ様、こんなに購入しても、おら達、人数そんなに居ねぇから、全部は育てられねぇぞ?」

との指摘が入った。


ああ、そうか。そう言うのもあるのか。

どうするかなぁ。


「まあ、それは別途考えるとしようか。取りあえず、市場で他に良い物があれば、購入しよう。

どうせ冬は長いしな。」




市場で大人買いを済ませた後、別荘へと戻って来た。

そう言えば、領主様の所で結婚話が出たが、あの村の人達って、みんな結婚出来ているのだろうか?

と心配になって、村の人に聞いてみると、死別の人も居るが、一部を除いて全員結婚しているらしい。

でその問題の一部だが、お年頃の男2名、女5名だそうで。


男女比率が問題だな。


かと言って、無闇に外部から引っ張って来るのも問題だしなぁ。

パッと頭に浮かぶ安全に人口を増やす方法となると、奴隷なんだが、結婚相手を作る為に購入ってのも、倫理的にどうなの?と思ってしまう。

それとも、農作業に従事出来る人がたまたまって口実で買うか?


2日目はこうして、悩みながら過ぎて行くのだった。


--------------------------------------------------------------------------------------------

メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る