第54話 村からの脱出 (改)

さて、時刻は午後4時である。

これから森に行くとなると、本来自殺行為に近いのだが、あまり時間も無いので、俺と2匹は全力で駆け抜ける。

そして一直線に森へと入って行く。


時々、気配を探りつつ、大きな気配等を虱潰しに討伐して行く。

比較的美味しそうなフォッグ・ボアとか、ビック・ホーンという牛の魔物とか、シルク・スパイダーとか……。


「くそーー、こんな時に限って当たりが来ないな。」

とボヤきながら。



5時を過ぎ、徐々に西の空に太陽が沈み始める。

まあ季節が夏なので、7時前までは明るい。但し、森の外ではである。

ただでさえ木々に遮られている森の中は、既に暗くなっている。


一応、森の中心を目指し、ドンドン進んで行くと、ダーク・ウルフのテリトリーに入ったらしく、辺りの魔物の気配が消えた。


その代わり、前方500m程先に、25匹の群の反応を発見した。

しかし、1つ1つの反応は、ダーク・ハンター・ウルフ程でも無い。


俺達は、風下へと回り込んで忍び寄り、一気に攻撃を開始した。


初手で、光魔法の閃光弾を撃ち込んで目眩ましを食らわせると、「キャン、キャン」と目を押さえる様にのたうち廻るダーク・ウルフの群に、一気に群に雪崩混み、ダーク・ウルフが体勢を立て直す間を与えず、次々に無双して行った。

剣術や武道を体育の授業以外では習った事の無い俺だが、レベルとステータスとスキルの恩恵で、それなりに様になった攻撃が出来るのは、ありがたい。

買取の事を考えて、極力首に攻撃を集中し、大根を包丁で切るかの如くに、首を刎ねて行く。



「ふぅ~、依頼はこれで完了だな。」


結果、25匹はアッと言う間に殲滅完了し、光魔法のライトボールを浮かせて、遺体を回収して廻っていると、一匹だけ、か細い反応を発見した。


最初は撃ち漏らしかと考えたのだが、魔力反応はダーク・ウルフの物とは若干異なる。

どうやら、少し離れた木の根元の祠に、その異質で微弱な魔力反応の個体を発見した。


体調30cm程の白い子犬である。

ブルブルと震えていて、全くダーク・ウルフとは顔付きが違う。

コロッとした可愛い子犬である。

さっきまでの戦闘に怯えているのか、プルプルと震えている。

流石にトドメを刺す事は出来ず、まあ討伐対象のダーク・ウルフとは違うみたいだからと、小脇に抱えて村へと戻って行ったのであった。




完全に日が落ちる午後6時50分までには村に辿り着き、拾った子犬にコロと命名してやった。

まだ微かに震えている食べ物を食べさせようとしたが、まだ小さい為に肉は食べない。

どうしようかと思案した結果、困った時の桃頼みとばかりに、桃のジュースを与えてみた。

スプーンに掬って、少しずつ飲ませてやると、徐々に震えが収まり、「クーーン、キャン!」と可愛らしい声で鳴き、小さい尻尾を振っていた。


「ぐぅ~ 可愛い。」

と俺がデレデレになっていると、ジョンさんが、


「ケンジ様は本当に女性よりも子供や魔物の子に弱いんですね……。」

と少しあきれ顔で呟いていた。


「いや、そうは言うけど、やっぱりこんな可愛い儚げなのを見ちゃうと、堪らないでしょ?」


「フフフ、確かに可愛いですね。」


だろ? だよなぁ。 こんな可愛い子をあの場に置いて来るなんて俺には出来ないよ。




そして、オークの焼き肉パーティーを開き、十分なスタミナ源を村人に摂取して貰った。


さて問題は帰り道の足である。


「なあ、ジジ、ちょっと聞きたいのだが、44名って影の中に入れられる?」

と聞くと、速攻で<無理にゃ!>と吐き捨てられた。


だよな~。


まあ、兎に角一旦ドワースに戻って、全員乗れる台数の馬車を用意するか。

まあ、馬車で2日の距離だから、歩いても精々4日かな。


「あ、そうだ! 物は相談だが、ジョンさん、ジョンさんを俺が速攻で送って行くから、ドワースで馬車5台くらい確保出来ないかな? これと同じ仕様で。」

と打診してみると、


「なるほど、しかし、そうすると、出発が4日程、遅れてしまいますね。 大丈夫でしょうか?」

と心配するジョンさん。


「うん、それなんだけど、ここだけの話、俺が頑張って送れば、ジョンさんが、40分ぐらい我慢するだけで到着するよ。」

というと、驚いていた。


「マジですか?」と。


「あ、しっ、失礼しました。ご主人様に対して、あるまじき言葉を――申し訳ありません。」

と我に返ったジョンさんに謝られたんだけど、


「ああ、それぐらいの感じで接してくれた方が、俺は嬉しいんだけどなぁ。

俺は貴族でも何でもないんだから、あんまり気にしないで話してくれて構わないから。」

というとホッとした表情になった。




ジジと4匹のAシリーズを呼び、ジジの影にジョンさんとAシリーズ4匹を入れて貰った。

ジョンさんは、影に入るのを若干ビビっていたが、心を決めたらしく、影に沈んで行った。


ピョン吉に村の守りをお願いし、ジジを抱えて、ドワースへと、夜の空へ飛び上がったのだった。



色々と気が焦ったので、頑張って飛ばし、30分ちょっとでドワースの城門の傍にソッと着地し、ジジの影から出すと、

ジョンさんが目を丸くしていた。


「本当にドワースに着いてる――」



そして、俺はみんなと一緒にドワースの街に入り、閉まり掛けた馬車屋に滑り込んで、ジョンさんに交渉を任せた。


交渉の結果、何とか5台の馬車と10頭の馬を買う事に成功し、御者を4名一時的に貸してくれる事となった。

支払いを済ませ、合流するまでに必要な食事等を買うお金も渡して、街から出て村へと戻ったのだった。



正味、2時間程で村に帰り着くと、全員村での最後の睡眠に入っており、従魔だけが村を警戒してくれていた。


「戻ったよ。お疲れ様。

悪いけど、明日も早いし魔力も使ったから、先に休ませて貰うね。」

と声を掛けると、


<判った、主。 こっちは任せとけ!>

とピョン吉が答えたのであった。




翌朝、日の出と共に村が動き出す。

朝食を取らせ、出発の最終準備を行う。


取りあえず、何かの役に立つかも知れないし、ちょっとした悪戯心もあって、村中の家30軒を、地面から切り離して収納した。


その光景を見た村の人達は、

「ほえぇーーー!」

と声を上げて驚いていた。


幼い子と老人を馬車に乗せ、他の人には歩いて貰う事とした。


「さあ、出発だ!」


「「「「「「「「「「おーー!」」」」」」」」」」

と村の人達が良い笑顔で片手を上げて声を揃える。


そして、後には家が無くなり、柵やボロボロの村の城壁だけが残って居る。


全員が村から出た後、俺は大規模な魔法で残った建造物を、全て土の中に戻した。

そして、村が消えた。 あたかも、そこには最初から何も無かったように……。


そして先を行く村人達の列に加わり、ドワースを目指して歩いて行くのだった。


フフフ、これ絶対秋に来るラスティン子爵の代官一行は、ビックリするよね。

だって、村の廃墟すらないだもん。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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