第50話 子供らの笑顔 (改)

時刻は午後5時前、夏とは言え、そろそろ急がないと日が暮れてしまう。


「うむ。まずは整地からだな。」


健二は、土魔法を使い整地して行く。

雑草等がぼうぼうに生えているが、そこら辺は土魔法で、プイッと土から根っこを吐き出す様に、抜いている。

ピョン吉達に頼んで、雑草等を集めさせて置いた。


そして、巾着袋の中にある、直線の外壁を必要な個数埋めて、土魔法で固めて設置する。

敷地をグルッと一周し、門と裏門を設置した。


さて、いよいよ、屋敷本体である。


どうしようか? この場所に合うサイズとなると、屋敷(大)までイケるのだが、流石に管理しきれない。

なので、拠点と同じ屋敷(中)をチョイスした。

これなら、違和感も無いし、勝手知ったる屋敷内部で迷子になる事も無い。


「ふぅ~、こんなものか?」


すると、ピョン吉が、

<主、噴水は要らないのか?>

と指摘して来た。


「ああ、そうか。じゃあ、全く同じ感じにするかな。」


門から玄関の前にロータリーを石畳にして、ロータリーの真ん中に噴水を設置した。

これで、概ねOKかな?


<新しい家だーー!>

<拠点と同じだーー!>

とAシリーズも喜ぶ。


「しかし、神殿の近くがここしか無かったが、えらく広い敷地だな。

本当にこんなに広くて良いのだろうか?」

と若干貰っておいて言うのも何だが、若干失敗したかなぁと心配になるのだった。


最後の仕上げに、屋敷の門と塀には、結界発生魔道具を設置した。

これで賊が忍び込む事は無い。


「取りあえず、別荘は完成だな。さあ、おそくなったけど、神殿と孤児院に向かおう。」




神殿でお祈りをして、別荘を建てた事を報告した。

<何か色々と周りの人に助けられて、何とか楽しく生活しております。ありがとうございます。>


そして、孤児院の方へと向かうと、


「あ!! 肉の兄ちゃんだーーー!!」

とちびっ子が俺を発見して叫ぶ。


「あーー!ケンジ兄ちゃん!!」

とドヤドヤと駆け寄って来て囲まれた。


「おう、みんな元気か?」

と聞くと、


「えっとね、みんな元気だよー!」

と教えてくれる。


子供らの笑顔に癒やされていると、子供らに知らされた、シスター達が表に出て来た。


「あら、ケンジさん。お久しぶりですね。」


「ホント、子供らがズーーっと待ってたんですよ?」


「フフフ、あらあら、ナスターシャも待ち焦がれていたじゃない。」


あー、やっぱり本持って来るのおそくなったからなぁ。

「すみませんね、色々やってたら、結構時間を食ってしまいまして。

ナスターシャさん、これがお約束の本です。

補足も入れてますので、前のより良いですよ。

今日は色々持って来たので、司教様いらっしゃいますでしょうか?」


ナスターシャさんに本を手渡した後、司教様の部屋へと通された。


「ご無沙汰しております。今日は良い物を持って来ました。」

と言って、3ヵ月の成果である、マジックバッグを取り出した。


「こ、これは?」


「これは、俺が作ったマジックバッグです。

これを作るのに3ヵ月掛かっちゃいました。ハハハ。

中には、既に色々な食材を入れてます。勿論肉も。

子供らが期待していると思いますんで、肉は多めに入れて置きました。

他には、ポーションや魔力ポーションも入ってますので、必要に応じて使って下さいね。

容量無制限で、時間も停止してますから、腐る事はありません。

これを使えば、食事事情も今より安定するんじゃないかとね。」

と言って渡したら、司教様が無言になって固まってしまった。


暫く気まずい空気が流れたが、司教様が口を開き、

「えーー!! 作ったんですか!!」

と叫んでいた。どうやらお気に召さなかった訳ではなかった様で、ちょっとホッとした。


「ええ、割と苦労しましたが、何とかね。

でもこれは神殿に仕える司教様やシスター達だからこそ、お渡しする物です。

これを他の人が知ると、問題になりそうなので、出来るだけ、大っぴらにはしないでくれると助かります。

まあ、命を掛けるぐらいなら、喋って良いですけど。」

というと、


「ありがとうございます。ああ、これがあれば、本当に助かります。」

と喜んでくれた。


「あと、肉はまた来た時に、これに補充しますんで、普通に使って頂いて大丈夫ですよ。

やっぱり、育ち盛りには、良質なタンパク質やカルシウムは必須ですからね。」

というと、どうやらタンパク質とカルシウムは理解されてない風だった。


ふむ、こちらには、そう言う言葉は無いのかも知れないな。


そして、夕飯をご馳走になりつつ、3ヵ月の間の話を子供らにせがまれた。


「うーん、やってたのは、写本したり、狩りに山に籠もったり、魔道具を作ったりしてただけなんだよな。

まあ、欲しい素材の魔物が居なくてねぇ、結構探し回ったよ。」

というと、


「すっげーー! 兄ちゃん、魔道具も作れるんか!」

「山には魔物さんたくしゃんいりゅの?(沢山居るの)」

とか子供故に無秩序な質問が飛び出す。


フフフ、堪らないなこの時間。プライスレスだ!

そんな子供らの声に1つずつ答えつつ、贅沢な一時を過ごした。


また前回よりも増えたAシリーズをモフモフして、子供らが喜んでいた。


俺は、ナスターシャさんの魔法の進行具合を確認しつつ、次のステップへと駒を進める。


「魔力操作がある程度出来る段階に入った様なので、次は身体強化に入りましょう。

とにかく、日々これまで通り、魔力感知と魔力操作の訓練を行いつつ、身体強化も入れれば、格段に魔力操作が向上する筈です。」


説明を終えると、ナスターシャさんは、本当に嬉しそうに本を抱いて、

「頑張ります! だけど、もう少し頻繁に来て頂けると嬉しいんですが――いや、私もですが、子供らも待ってますので。」

とちょっと頬を赤く染めながら言っていた。

私服姿になったナスターシャさんは、薄手の夏服という事で、目のやり場に困る。

本に圧迫された様子を見て、思わず、ゴクリと生唾を飲みそうになってしまう。



そこで、頭の中を誤魔化す様に、話題を変えてみる。


「ああ、言い忘れてましたが、まあ色々な流れもあって、ここの近所に別荘というか、第二の拠点を建てたんですよ。

まだ、今日建てたばかりなんで、住んでもいないんですけどね。」

というと、


「え!? 今日建てた??」

と意味が判らない風だったが、近所に住み処が出来たらしいという事は理解してくれたらしい。


「ええ、領主様にすぐそこの空き地を頂いたのでね。」

というと、


「ああ、あの広い空き地ですか! 子供らが時々遊びに行ってました。」

と。


「え? そうだったんですか。拙いな。塀を作っちゃって、防犯用に結界まで張っちゃいましたよ。

あっちゃーー、聞いてたら、もっと遠くの土地にしたんですがね……っわぁ、どうしよう。」

と俺が焦ると、


「フフフ、大丈夫ですよ。まだまだ遊び場は沢山あるし、あそこにケンジさんの家が建ったなら、子供らも喜ぶでしょうから。そんなに気にする事はないですよ。」

と言ってくれたのだった。


そうか、遊び場になってたのか。ウッカリしてたよ。

俺が子供の頃の昭和の時代は、近所に空き地なんて沢山あったからなぁ。

確かに、色々と遊んでた気がする。

あの頃は周囲も大らかで、今思えば、人の家の庭に入り込んだりして遊んでた様な気もするな。ハハハ。


これは、子供らの遊ぶ公園とかのスペース作った方が良いのかな?と頭の中で思案するのだった。

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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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