第44話 詳細解析は非常に使える子でした

街から戻って5日が過ぎた。

ステータスパネルを見て居て思い出したのだが、『万物創造』というスキル、これが今一つ判らない。

創造というからには、おそらく生産系に特化したスキルではないかと思うのだが、使い方とか説明が無いから宝の持ち腐れとなっている。

創造出来るのであれば、是非使いたいところである。


という事で、朝から万物創造と唱えてみたり、色々手を変え品を変え、トライしているが、ピンとこない。

これは、元々ステータスパネルを始めて見た時からあったスキルだから、スキルの意味を理解していないと発動しないという事なのかもしれない。

もしくは、知らぬ内に既に使って居るのか?



取りあえず、気分を変えて、今日はマジックバッグの作成を試したいと思っている。

まあ最大の理由は、孤児院なんだけど、あれだけの人数の食事を作るのが、どれだけの大仕事かを実際に体感したからなんだよね。

可愛い子らがスクスクと大きく成るように、俺も微力ながら協力したいと思った訳だ。


で、その一番大変だったのが、食事を作って居る傍から冷めていってしまう事だった。

特にハンバーグを焼いた時は、大変だった。

せっかくなら、温かい物出来たてを食べさせてやりたいし、纏まった食材をストックしておける様にしてやりたい。

それに、神殿の庇護下の孤児院であれば、特に誰彼にと吹聴する事は無いだろうと期待している訳だ。



そんな訳で、この巾着袋と同じ様な効果のマジックバッグなり、マジック倉庫なりを作ってやりたいと考えたのである。

ガバスさん講座で聞いた限りだと、どうやら今のところそう言う付与が行える錬金士はいないらしい。

現存する物は、全てダンジョンや遺跡等から出て来るだけで、過去にそう言う技術があったとしても、ロストしていると。

ダメ元で、トライする価値はある。

まあ、あまりにも簡単に出来てしまうと、物流や経済のバランスが壊れそうだけど。



錬金で付与する場合、特殊な錬金用のインクが必要となる。

一般的なその錬金用のインクは販売されているが、ソコソコに高価なのと、その割には純度が良く無いというか、不純物が結構混じっている。

錬金を勉強し始めてから、ポーションの作成過程でも判った事だが、日本の工業化学と同じで、余計な不純物を排除する事が重要なのを知った。

付与の場合も同様で、インクの不純物を排除する事で、より効果の高い付与結果が得られる。

で、インクの主成分は、神聖水、それに聖銀と呼ばれる鉱石を精製した物の粉末、それに付与する錬金士の血である。

なので、販売されている錬金用のインクは神聖水と聖銀粉末の混合液の状態となり、使う錬金士が自分の血を混ぜて完成させるのである。


まあ、ここまで言えば判ると思うが、神聖水の質、それに聖銀の純度、付与する錬金士の魔力量が重要なポイントである。

どうやら、この世界の一般的な錬金士よりも高レベルな俺は、持つ魔力も多い。

更に、泉の水は、そこらの神聖水とは比べ物にならない程の物。

あとは、聖銀を錬成で如何に不純物を取り除くか? という事だ。


錬金室をクリーンルーム仕様にしている我が家では、一般市販されているインクとは比べ物にならない程、高効率な効果が得られるインクが作れるのだ。



まずは、錬金用のインクを補充し、一旦休憩室で寛ぎつつ、魔方陣の作成に頭を捻る。

空間拡張だが、『拡張』するとなると、結局は有限空間となる。

ちなみに、俺のマジックテント内は、空間拡張ね。

つまり、あくまで拡張は拡張なのである。

今回の用途なら、まあそれは空間拡張で良いのだが、その場合、どの程度の拡張に『耐えられる』かはその付与される素材次第となる。


そうそう、空間拡張型と言えば、初めの頃に泉で拾った皮の水袋を覚えているだろうか? あれが、空間拡張型のマジック・水袋だったのだ。

水を汲んで、あまりにも減らないから不思議だなと思っていたが、実は見た目と容量が違っていたのである。

最初は知らずに、頻繁に水を汲んでいたけどね。


水袋の皮の種類が判らないかな? と取り出して、鑑定してみると、


『詳細解析』

***********************************************************************

名前:悠久の水袋

ランク:神話級

制作者:錬金神ドワルフ

所有者:ケンジ

婚歴:無し

全長:43.5cm

全幅:29.3cm

重量:0.3kg


【基本性能】

・如何なる液体も125000000リットル入れる事が可能

・腐敗防止

・防菌

・劣化無し

・重量無視

・非破壊


【素材】

袋本体:外皮:アクア・サーペントの皮

    内部:アクア・サーペントの胃袋(別名無限の胃袋)

飲み口:アクア・ドラゴンの骨

栓:ユグドラシルの木


【経歴】

ケンジを日本から引き取る際、女神エスターシャが錬金神ドワルフを脅……説得し、作成させた一品。

それとなく、発見される様に、神聖の泉に置いた。

ちゃんと発見してくれたので、女神エスターシャがドヤ顔で喜んでいた。


【製法】


 [>>続きはこちら>>]



***********************************************************************


思わず、【経歴】を読んで飲んでいた紅茶をブフゥーっと噴き出してしまった。

脅して作らせるとは……。

しかし、一体何で? 又は俺の何が? 女神様をそうまで動かすのか、何故ここまで色々と面倒を見てくれるのかが理解出来ない。


そして、どうやら【製法】も見せて貰えるっぽい。

気を取り直し、[>>続きはこちら>>]をクリックしてみると、


***********************************************************************


【製法】


①新鮮なアクア・サーペントの外皮(この場合、頭部に近い程良い)と胃袋を用意します。

②必要なサイズにカットし、神聖水(最適なのは神聖の泉の水)でそれぞれを綺麗に洗い、10日間神聖水に晒し、完全に邪気を抜きます。

 水は1日1回は交換する事が大事。

③胃袋の出口をシルクスパイダーの糸で縛り、胃袋の入り口にはアクア・ドラゴンの骨(この場合、背骨が最適)を削って作った飲み口付け、同じくシルクスパイダーの糸で絞って接続する。

 この場合、骨を削る際に、滑らない様な反りをつけると失敗が無い。

④胃袋の外側に、下記の魔方陣を刻む。

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


⑤外皮を伸ばしつつ型を付け、外皮の内側には下記の魔方陣を刻む。

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


⑥外皮の中に袋を入れ、飲み口と裏向きにしてシルクスパイダーの糸で縛り付け、皮を被せる。


⑦外袋の合わせ面をアクア・サーペントの外皮で作った紐で縫い合わせる。


⑧完成した水袋に初期魔力を大量に流して魔方陣を焼き付ける。

 但し、最低でもMP1500分を込める必要がある。


⑨パンパカパーーーン♪ ほら出来ました。


***********************************************************************


なるほど、魔方陣まで教えてくれるのか。

[>>続きはこちら>>]を始めて確認してみたが、これは、便利だな。

勿論、⑨はスルーだ。


そう考えると、ナスターシャさんの[>>続きはこちら>>]は見なくて正解だろう。

変に意識してしまうと、もう顔を見ながら話せなくなるだろうし。


しかし、凄いなぁ、この詳細解析ってスキルは、使い方次第では、下手な本よりも素晴らしい教材だ。


「さて、じゃあ、この巾着袋を鑑定してみますか。」


『詳細解析』

***********************************************************************

名前:無限のマジック・ポーチ

ランク:神話級

制作者:錬金神ドワルフ

所有者:ケンジ

婚歴:無し

全長:20.1cm

全幅:15.2cm

重量:0.01kg


【基本性能】

・容量無限(異次元接続型)

・時間停止

・重量無視

・非破壊


【素材】

袋本体:ダーク・ドラゴン

コーティング材:ダーク・スライムの体液


【経歴】

ケンジを日本から引き取る際、女神エスターシャが錬金神ドワルフを脅……説得し、完成させるまで監き……監督して作成させた一品。

完成すると、女神エスターシャがウキウキしながら作らせた品々を詰めました。


【製法】


 [>>続きはこちら>>]



***********************************************************************



うっは! こわっ!! 『監き……』って監禁か!! 何しちゃってるの?


いや、確かに素晴らしい物であるが、錬金神ドワルフ様、ありがとうございます。そして、何か色々とすみません。


そして、続きを確認すると、


***********************************************************************


【製法】


①新鮮なダーク・ドラゴンの外皮を用意します。

 ダーク・ドラゴンが無い場合、ダーク・ハンター・ウルフ(無ければダーク・ウルフでも可)やダーク・フェンリルの外皮でも代用は可能。

②必要なサイズにカットし、神聖水(最適なのは神聖の泉の水)綺麗に洗い、10日間神聖水に晒し、完全に邪気を抜きます。

 水は1日1回は交換する事が大事。

③次にダーク・スライムの体液を容器に入れ、その中に更に浸し、一旦加熱します。

 体液が一旦沸騰したら、粗熱を冷まします。尚、体液から皮がはみ出さない様に注意しましょう。

 体液は多めにして、蒸発しても大丈夫な量を確保して下さい。

④粗熱が取れたら、蓋をして密封し、4~5日程、暗所で放置します。

 光を当てると効力が薄れますので注意しましょう。

シルクスパイダーの糸で絞って接続する。

⑤皮の内側に、下記の魔方陣を刻む。

  異次元接続魔方陣

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


  非破壊魔方陣

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


  重量無視魔方陣

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


  時間停止魔方陣

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


  内容リスト伝達魔方陣

      ~~~~~

      ~魔方陣~

      ~~~~~


 尚、異次元接続魔方陣を中心に残りの魔方陣は線で結ぶ事。


⑥シルクスパイダーの糸で袋状に縫い、紐を通す。


⑦完成した袋に初期魔力を大量に流して魔方陣を焼き付ける。

 但し、最低でもMP5000分を込める必要がある。


⑧パンパカパーーーン♪ ほら出来ました。


【一口メモ】

異次元収納に使う素材は、ダーク系の魔物の皮が相性が良い。

但し、ランクの低い魔物素材だと、安定しなかったり、必要とする皮の面積が多く必要となる。

皮の鞣しにダーク・スライムの体液を使う事により、内容物のリスト化のレスポンスが格段に良くなる。

また、倉庫の様な場合、ダーク・トレント素材の木材を使うと良い。


***********************************************************************


なるほど、そう言う事か!

何気に一口以上あるけど、【一口メモ】も凄く役に立つな。


しかし、魔方陣焼き付けに必要な魔力がMP5000ってヤバいな。

今だからギリギリ1日1個は作れるが、相当だよなぁ。

これは作成方法がロストというより、端から人族には魔力不足でダメなんじゃないの?


まあ、でもよし、まずは素材を何とかしよう……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る