第45話 材料集め (改)

「なあ、みんな、明日、ちょっとダーク系の魔物を探しに崖の方へ行って来るよ。」

とピョン吉達を集めて告げた。


<ん? 主、ダーク系限定なのか?>

<だーく系って何? 美味しいの?>

<ばっか、ダークっていやぁ、ビターだろ!>

<バカにゃん、それは主が出してくれたチョコの話にゃん!>


「ああ、ダーク系限定だな。 あと、ダーク・スライムも必須で欲しいんだが、何処かに居る場所ないかな?」


<ふむ、また何か作るのじゃな? ダーク・スライムか。

確か、川向こうの洞穴に居た様な記憶あるぞ?>

と流石は年長者のピョン吉大先生。


「ふむ、じゃあ、まずは洞穴に行くか。

ダーク・スライム無いと何も始まらないし。」


という事で、全員で出掛ける事となった。



 ◇◇◇◇



<主、ここ!>


翌日、朝から速攻で家庭菜園の作業を終わらせ、弁当を持って全員で拠点を出発し、森を突っ切り、川を渡った崖の麓にある洞窟へと案内された。


「おお、こんな洞穴があったんだな。全く知らなかった。」


<うむ。ここは結構深いし曲がりくねってる。内部は暗いから。主、案内する。着いて来い。>

とピョン吉が先行する。



ピョン吉に続いて内部に入ると、10秒足らずで外の明かりが届かなくなる。


俺は、光魔法の照明(ライト)を浮かべ、モフモフ達と内部を進んで行く。

100m程曲がりくねった洞窟を進むと、ピョチョンピチョンと水滴が落ちる音にチョロチョロと水の流れる音が加わった。

どうやら、洞窟内にもしみ出した水が流れている様だ。

洞窟の壁には、彼方此方に苔が生えていて、湿気が多い。


何の気なく、その苔を鑑定してみると、


『詳細解析』

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名前:魔吸苔

ランク:神話級


【説明】

魔力豊富な水分のある暗所に生える苔

根の部分は魔力を吸い取る性質がある。

反対に葉の部分は僅かな光に反応して、魔力を蓄える性質を持つ。

魔力ポーションを作成する時に葉を混ぜる事で、より高い効果の魔力ポーションとなる。

また生えている場所には、魔力伝導率の良い、ミスリルや聖銀の鉱石が含まれている事が多い。


【注意事項】

岩から分離してしまうと、3日で完全に枯れる。

枯れてしまうと効果が格段に落ちるので、注意が必要。



【特級魔力ポーション製法】


 [>>続きはこちら>>]


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となかなかに素晴らしい物だった。

しかも、何やら特級魔力ポーションを作れるらしい。

まさか、製法までここで確認出来る様になるとは驚きである。


詳細解析にしても、どんなスキルでもだが、使えば使う程、熟練度が上がり、効率が良くなったり、効果が高くなったり、進化したりする。

詳細解析も是非ドンドン使って、有効利用して行きたいものだ。


俺は、早速、魔吸苔をそっと剥がして行き、収納して行く。


ついでに、生えていた場所の岩もツルハシで砕き、採取しておく。

ミスリルや純度の高い聖銀は貴重だからね。



魔吸苔は、一気に全部剥いでしまうと、二度と生えなくなるかもしれないので、半分程残しておいた。


そして、更に200m程進んだ小部屋は、スライム天国であった。


「ウッハーー、スライムだらけ。」


しかも、色とりどりである。


足で邪魔なスライムを蹴りながら、道を作り、辺りを見回し黒色のスライムを探した。


「お!あそこと、あそこと、あそこに居るな。」

合計3匹を発見して、1匹ずつ、スライムを倒し、その体液を採取したのだった。


スライムだが、特に仲間がヤラれたからと、敵意を向けて来る事は無く、我関せずにプヨプヨとしている。


「しかし、なんで、こんな所に固まって居るだろうな。何も餌とか無さそうだが?」


と俺が不思議に思っていると、


<主、この洞窟の先には、他の魔物も住んで居るので、当然食い残しや、ゴミや排泄物も出る。それを食べて処理しているのではないか?>

とピョン吉大先生が言っておられた。


なるほど、そうなのか。


取りあえず3体分の体液は回収出来たので、もうスライムは良いだろう。

早く、良い皮を持つダーク系の探索に入ろう。



 ◇◇◇◇



崖を登り、探索して行くが、必要なダーク系は出て来ない。


出て来るのは、普通にファイティング・ボアとかフォレスト・スパイダー、シルバー・ハンター・ウルフ、キラー・スパイダー、シャドー・サーペント、ロック・リザード、デス・ハンドレッド・フット、ポイズン・キラー・スコーピオン……。

だーー! 全然ダーク系、来ないじゃん。


「ああ、こんな事なら、ブラッディ・デス・ベアと一緒にダーク・ハンター・ウルフ売らなきゃ良かった……」

と3年以上前の事を蒸し返し項垂れる。


しかし、こいつらも強くなったな。

ピョン吉とジジは殆ど戦わず、Aシリーズが嬉々としてやっつけてしまっている。

集団で戦って居るとは言え、単体同士なら、かなりのステータス差があるんだけどな。


巨大で、素早いジャイアント・ホーン・ディア、デス・ブラッド・タイガー何かも、上手く取り囲んで、ヒット&アウェーでズタズタだな。


「あ、Aシリーズ達、頑張ってくれているのは良いんだが、素材を穴だらけにされるとダーク系は困るから、そこのところ気を付けてくれよ?

というか、ダーク系は俺がスパッと行くからな。」

と気付いて注意しておいた。


結局、この日は空振りで、森の中の空きスペースを見つけてテントを出した。

Aシリーズが仕留めたジャイアント・ホーン・ディアを解体し、久々に鹿肉のステーキを堪能する。

この世界に来るまで、鹿肉って食べた事は無かったが、実に美味い。

赤ワインとラズベリーを煮詰めたソースや、オレンジ系を使ったソースと良く合う。

従魔達も、大喜びで食べて居た。



夜は、従魔達が周囲を警戒してくれていたお陰で、全く起きる事無く、爆睡させて貰った。

朝見ると、テントの横に、8匹の魔物の遺体が変わり果てた姿で置いてあった。

取りあえずそれを回収し、朝食を食べ終わると、早々に出発した。


「もうここまで来ると、泉まで行くしかないよね。

確か、割と泉の森の近辺でダーク・ハンター・ウルフを狩った記憶あるし。」


その後もSランクやSSランクが出て来る。

流石にSSランクは素材が勿体無いので、俺がスパッと倒す様にした。

まあ、俺もそれなりに戦闘訓練はしたいからね。

それに、そろそろレベルも昔見たいには上がりが良く無いし、何か停滞って良いイメージが無いから、少しずつでも成果が欲しいよね。


そして、泉の森の境界線に大分近付いて来た辺りで……


「ダーク・ハンター・ウルフきたーーーー!!

これ、俺がヤルから!!」

と慌てて従魔を押さえ、剣を抜いて、サクサクと首を刎ねて行く。

まあ、10匹も居るから、何匹か従魔達に回しても良いのだが、次にまた何時必要となるか判らないし、素材の状態が良いに超した事は無いからね。

最初に3匹の首を刎ねた辺りから、慌てて戦線を立て直そうとするダーク・ハンター・ウルフのリーダーが「ワゥオーーー!」と指示を飛ばす。


俺を取り囲む様に動き出すが、そうはさせない。

俺も瞬時に回り込もうとする右隣の奴の真正面に突っ込み、下から斬り上げる様に首を跳ね飛ばす。

返り血を浴びる前に更に右隣の奴の首を返す刃で上から斬り墜とした。


残りは5匹だ。

そのまま更に時計回りに斬り掛かろうとすると、後ろからリーダーが急激に背中に接近して来た。

背中にシールドを展開しつつ、そのまま次の奴に斬り掛かる。

背中ではシールドに「ゴキン」という音がして、リーダーが跳ね返され、額から血を流していた。


そのまま俺は手下達を斬り落とし、最後にダーク・ハンター・ウルフ・リーダーの眉間に剣を突き刺し、完全勝利したのだった。


「ふぅ。良い戦いだったぞ。

お前達の皮は、俺がちゃんと大事に使うからな!」

と尊い犠牲に感謝し、手を合わせるのであった。


泉の森の聖域に入ると、途端に清々しい空気に変わり、生まれ育った場所に『帰って来た』という気持ちになる。

まあ住んで居たのは3ヵ月ちょっとなんだけどね。



そして、俺達は、久々に新鮮なここの果物をたらふく食べて、美味しい泉の水を飲み、一休みするのだった。

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