第42話 色々懐かれた (改)

まあ、そんな訳で、何か知らんが、3歳~6歳ぐらいの子には、「お肉のにーちゃん」と呼ばれ、それより上からは、「ケンジにーちゃん」と呼ばれる様になり、懐かれてしまった。


「何か凄く心が洗われる気がする。」


<あ、主! 揉みくちゃにされてるんだが?>

<みゃーー! 尻尾引っ張っちゃダメにゃーー!>

と従魔達も大喜び?


遊び疲れたのか、小さい子は、ピョン吉を枕にしてウトウトとしている。



司教様に、

「勝手に庭にコンロ作っちゃいましたけど、元に戻しますから。」


「ああ、そのままで構わないので、その代わり、またそのうち来て頂けますか?

子供達も喜ぶので。」


「あ、じゃあ、網だけは一旦洗って、建物の中に仕舞っておいて下さい。

あれ直ぐに錆びますからね。」


「本当に色々ありがとうございました。

子供達、あんなに沢山のお肉食べたの、多分初めてでしょうからね。

とても喜んでました。」


「いえいえ、こちらこそ、楽しませて頂きました。

こんなに大勢で食べたのは初めてですよ。

またお肉も差し入れしますよ。

なんせ、家の周りは魔物だらけなんで。

ああ、でも家の周りは、ワー・ウルフとかフォレスト・ウルフとか、シャドー・スパイダーとかジャイアント・オーガとかミノタウロスが多いからなぁ。」

というと、


「どんな魔境に住んでるんですか!」


「まあ、でもそこら辺の奴らなら、うちの従魔が運動がてらにサクサクやっつけちゃいますからね。

城壁もあるし、結構安全なんですよ? 盗賊なんかも、絶対に来ないし。」


「それはそうでしょ。ワー・ウルフとかフォレスト・ウルフとか物騒な魔物だらけの所に行く者は居ないでしょね。」

と呆れていた。


「まあ、その代わり、一国一城の主ではないですが、ノンビリとスローライフを堪能出来るんですよ。」



そろそろ、良い時間なので、サクッと帰ろうかとしていると、7歳前後の子供らが、その雰囲気を察知して、

「なあ、兄ちゃん、今日は暗くなったし、泊まっていけよ。」

「そうよ、ウサちゃん達も眠そうだし。泊まって行った方が良いよ?」

「ケンジーー、泊まれよー!」

と両腕の袖を引っ張って来る。


ああ、何か本当に嬉しい。

昔、残業して家に帰ると、寝室には鍵を掛けられて、床で寝たり、長男が中学生ぐらいになると、

「何だよ、ウゼェーから帰って来るんじゃねーよ!」

とか言われた記憶しかない。


しかし、肉目当てなのかも知れないが、素直に嬉しい。

「いやいや、急に泊まるとなると、ご迷惑掛かるから。

じゃあ、そうだ、一晩だけ、庭をお借りしても良いですかね?

従魔も居るから、テントで泊まります。」

というと、


「えーーー!? せっかくだから、家の中で良いじゃん?

俺のベッド使えよ、俺、こいつと一緒に寝るからさ。」

とまた俺を泣かせる様な事を言ってくれた。

思わず、嬉しくて涙が溢れそうになってくる。


「ありがとうな。気持ちだけでも嬉しいよ。」


「まあまあ、本当にご迷惑で無ければ、どうですか、泊まって行かれれば?

寝床ぐらい何とかなりますから。」

と司教様にも言われ、結局お言葉に甘える事にした。


せっかくベッドを譲ると言ってくれた少年のベッドだが、子供用のベッドは小さすぎて、無理だったので、キャンプ用の簡易ベッドを食堂に置かせて貰い、寝袋で寝る事にした。

それを見た子供達は、

「すっげーー! 何でも出て来るんだな!」

と驚いていた。


だよな~、俺もビックリだよ。


大抵必要に思う物は、この巾着袋に揃えてくれているんだよね。

ありがとう、女神様。

そして、出来れば、この子らにも女神様の祝福があらん事を祈ります。


等と寝る気十分でシンミリと祈って寝ようとしたんだが――




「あのぉ~、ケンジさん、まだ起きてますよね? ケンジさーーーーん!!!」

と廊下から寝る子を起こす気満々のシスターの声。


「あ、はい。寝るところでしたが、何か?」

と簡易ベッドから起き上がり、寝袋から這い出し、ジジの尻尾を踏みそうになりつつ、ドアを開けた。


すると、そこには、俺の写本を持って行った魔法大好きシスターが、部屋着に着替えて立っていた。

一瞬、ドッキリとはしたんだが、胸元には俺の本を抱きしめ、目をキラキラさせている。


「な、なんでしょうか? シスター、何か本で判らない所ありましたか?」

と聞いてみると、


「あ、自己紹介がまだでしたね、ナスターシャと申します。

そんな事より、これ、凄いですよ!!! すっごく判り易いんです。

特に、今まで意味が判らなかった部分が、完全補完されてて、上手く魔力操作できるところまで来たんです。

読み始めて2時間程度なのに。」

と興奮気味に捲し立てる。



それから、約1時間、タップリと、この本がどれだけ凄いかを力説されてしまったよ。

まあ、シスターだけに、女全開でのウッフン攻撃では無かったので、全く不快ではなかったのだが、そこまで賛辞されると、やっぱ照れるね。


まあ、途中でこっちも、眠気覚めてので、ホットコーヒーを出して、マグカップに入れて、シスターにはカフェオレにしてやった。

「それで、これなんかも、良く判り易くてですね……あら、これ美味しいわ。

で、ここも~~」

と長々と相手をしていた。


まあ、その間、食堂は俺の光魔法で明々と照らし、健全な雰囲気を醸し出していたのだが、そろそろ推定午後11時。

この世界は大抵の場合、夜は早く眠る。

まあ理由は魔道具の照明を長々と使うと、魔石代が沢山掛かるからって事なんだが、その代わり、朝の開始が早い。

早い店だと午前6~7時には開店してるし。

一般家庭でも大体午前5時には起きて、一日が始まる。



なので、午後11時はかなり夜更かしに相当する。

このシスター……ナスターシャだっけ、良く見ると、頭に被って髪の毛を隠すあの布を外したら、綺麗なシルバーのストレートな髪の毛を肩の所で切り揃え、ちょっと長いボブカットって言うんだっけ?

顔立ちも綺麗な美形で、身長は170cmより少し小さいぐらい。

スラリとしたプロポーションで、下手なアイドルとかよりも素晴らしく素晴らしく美人さんだ。

しかし、シスターの制服から私服に替わると、かなり幼く感じた。


一体幾つぐらいなのだろうか? てっきりシスター姿の時は、20歳ぐらいかと思ったが、私服だと16、7歳でもおかしくない。

いや、これだけ、好きな事に熱中するぐらいだから、きっと、16歳かも知れないな。

等と、不埒な下心は無く、微笑ましく見て居たら、急に、頭の中ににステータスパネルの様な物が浮かんだ。


「え?」

と思わず声を上げてしまい、


「ん? 私なんか、変な解釈しちゃいましたか?」

とナスターシャさんが、聞いて来た。


「あ、いや、すみません。問題ないですよ。」

と言いながら、そのパネルに意識を集中すると、


『詳細解析』

***********************************************************************

名前:ナスターシャ

年齢:16歳

誕生日:8月3日

父:ラルク

母:ゲルガ

種族:人族

性別:雌(未)

婚歴:無し

身長:168.5cm

体重:51.2kg

B:82cm Cカップ

W:51.3cm

H:84cm


称号:魔法に憧れるシスター


職業:シスター

レベル:5


【基本】

HP:58

MP:64

筋力:25

頭脳:99

器用:82

敏捷:12

幸運:91


【武術】

短剣術:Lv5

杖術:Lv1


【魔法】

風:Lv0

聖:Lv0

無:Lv1  New


【スキル】

速読

調理 Lv1

農耕作業

魔力感知

魔力操作 New


【加護】


【状態】

精神:興奮

肉体:疲労軽微

健康:良好


【経歴】

2歳の頃、夫に逃げられた母親に神殿の前に捨てられ、以来孤児院で育つ。

尚、母親は子供を捨てた事を後悔しつつ、ランドルシャンの街で娼婦をやっている。

10歳の頃、魔法に興味を持ち、字を習い始め、魔法の練習を始める。

12歳の時、孤児院を卒業し、シスター見習いとして神殿で働き始める。

子供らの面倒を見る傍ら、子供らの怪我や病気を癒やしたいと魔法習得に情熱を傾けるが、肝心な所を理解出来ておらず、魔力操作で躓き現在に至っていた。

ケンジの魔法の本を読み、これまで理解出来なかったところを克服し、魔力操作に成功する。


【展望】

生まれつき、魔力の総量は多い体質の為、これからの指導次第では、化ける。

性格的に非常に聖魔法との相性が良い。

また、ケンジに対して、尊敬と憧れを持っていて、仄かな恋心も。これって初恋? 初恋なのかも!! と思っている。

異性に関しては、堅く、人を裏切る事は大嫌い。

子煩悩でシッカリしているし、なかなかの優良物件だと思いますが、如何ですか?


 [>>続きはこちら>>]



***********************************************************************


と驚く内容が書かれていた。

「えぇーー!? マジか!!」

と今度は思わず大きめの声で叫んでしまった。


その声に、ナスターシャさんが思わずビクッとなって、

「ヒッ」

と軽く悲鳴を上げてしまう。


「あ、すみません、驚かせてしまって。

いえ、話を聞いている内に、ちょっと気になって、自分のステータスパネルを確認したら、知らぬ内にステータスに変化あったんで、ちょっと驚いてしまいました。

ナスターシャさんは、ステータスパネルは頻繁に確認したりする方ですか?」

と思いっきり話を誤魔化した。


「あ、そうだったんですか。 あービックリした。

ステータパネルですか、そう言えば、最近は全く確認してませんね。

ちょっと見てみます!」


「あぁぁ!!! きゃーーー!!! すっごい!!」

と今度はナスターシャさんも声を上げる。

フフフ、気付いてなかったのか。


「き、聞いて下さい!! 私に魔力感知と魔力操作のスキルが、スキルが生えてました。

えーーーん、嬉しいよーーーーー。」

と思いっきり泣き始めた。


話は誤魔化したものの、『詳細解析』の内容に愕然とした。

なんじゃ、こりゃ? だよね。

特に、【展望】の文章。 何これ? 『如何ですか?』じゃねーよ!!


確かに『鑑定』スキルの存在を知って、欲しい!とは思ったけど、おそらく『詳細解析』ってその上位スキルだよね?

いや、3サイズとか完全にアウトな情報だと思うし、そもそも性別の『(未)』って何だ って話ですよ。

女神様、きっと俺に女性恐怖症を治して、幸せな結婚生活をやり直させてくれようとしているんだと思いますが、ちょっとやり過ぎです。

とても恐ろしくて、『[>>続きはこちら>>]』なんて見てられない。



俺は、突然生えたスキル……まあ嬉しい事は嬉しいんだけど、その内容の詳細さに、ドッと疲れが出てしまった。



「まあ、良かったですね。

その冊子に関しては原本だから、あげる訳にはいきませんが、一旦持って帰って、ちゃんと製本して来ますよ。

それまでは、まず、今の魔力感知と魔力操作の訓練を続けて下さい。

そのベースとなった本には判り辛い表現で、別の部分に遠回しに書いてあったんですが、魔法を行使する上で、魔力感知と魔力操作は基本中の基本です。

実に重要です。 次のステップに移る前に、まずはミッチリ魔力感知と魔力操作を物にしましょう。

俺も、四六時中この2つは使ってます。

そうすると、どうなると思います?」

とピーピーと泣いているナスターシャさんに問いかけてみた。


「ど、どうなるんですか?」


「フフフ、息をする様に魔力を扱える様になりますし、遠く離れた魔物や人の魔力の存在の方角や距離、慣れて来ると魔物の種類や、知り合いなら名前とかが判る様になるんですよ。」

と解説すると、驚いていた。


「特に、ナスターシャさんは、聖魔法が使いたいのではないですか?」

と聞くと、コクンと頷く。


「聖魔法の回復系は、対象となる人体の状態を的確に把握してないと、効果が薄いです。

まあ、どの属性の魔法もですが、結局は、その魔法を使う人が、どれだけ正しいプロセスのイメージが出来るか?というところで、威力や効果、必要な魔力量が決まります。

正しくイメージ出来れば、効果は同じでも消費魔力は減少します。つまり魔力燃費と呼んでますが、これが凄く良くなるという訳です。」


「あ、私、頑張ります! ケンジさん、どうかこれからも魔法を教えて下さい。

そ、その、私何もお返し出来ないんですが、でも魔法を習得したいんです。」

と胸の前に拳を握って力説された。


「フフフ、俺も魔法が使いたくて使いたくて堪らなかったので、その気持ちは判ります。

まあ、住んで居るのが遠いので、頻繁には無理ですが、こちらの街に来た時に、時間があれば、出来る限り協力しますよ。」

というと、凄く嬉しそうな笑顔……あの【展望】の文章の所為で、ちょっとドキッとしてしまったけど、それ程にも美しい笑顔で、

「宜しくお願い致します。」

と頭を下げて来たのだった。



そして気付けば、時刻は午前0時を過ぎていた。


「おっと、ついつい話し込み過ぎましたね。

明日も早いのでしょ? 寝不足はお肌の大敵とか。

せっかくの綺麗な肌が荒れてしまっては勿体無いから、今夜はこれくらいにしましょう。」

というと、ちょっとポッと頬を赤らめて、

「はい、おやすみなさい」

と行って食堂を出て行ったのだった。


フフフ。魔法大好きか。

若い情熱ってある意味羨ましいな。

あー、でも俺の若い時って、余り情熱を掛けた物って無かったな。


『人による』ってか。 まあきっと良い子なんだろうな。 俺には若すぎるけどね。


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 メンテナンスを行い、一部文章の改善等を行っております。基本的な内容には変更ありません。(2020/05/22)


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